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この記事のポイント
- 土地売却時の解体費用は、売却目的が明確な場合に限り譲渡費用として控除できる
- 税法上の明確な基準はないが、解体後1年以内に売却契約を結ぶことで、譲渡費用として認められやすい
- 解体費用以外にも建物の未償却残高を譲渡費用に含められる場合がある
「自宅敷地を売却するとき、解体費用は控除対象になるの?」
「建物を取り壊して土地を売るとき、支払う税金を安くしたい」
更地渡しで土地を売却する場合、解体費用が大きな負担になるのはよくあることです。
取り壊し費用を控除することで譲渡所得税の節税効果が期待できますが、どのようなケースでも控除対象になるわけではありません。解体費用を控除対象に含めるには、取り壊しの目的が土地売却であることを明確に示せる必要があります。
そこで今回は、土地売却と解体費用の関係について詳しく解説します。
この記事を読むことで、建物を解体して土地を売却するときのポイントが整理されるでしょう。
地方銀行、住宅会社勤務を経て住宅や不動産を中心としたライターとして活動。現場で多くのお客様の対応で経験させていただいたことをもとに、専門知識に基づいた分かりやすい記事執筆に取り組んでいます。
記事の構成
土地売却を目的とした解体の費用は控除対象になる
不動産を売却して利益(譲渡所得)が生じると譲渡所得税が課されます。
譲渡所得税は、確定申告時に支払う所得税と、売却翌年の6月ごろから支払う住民税で構成されます。
不動産の売却益に対しては、所有期間が5年超の場合は約20%、5年以下の場合は約40%の税率が適用されます。ただし、売却時にかかった費用や特別控除を適用することで、税金を抑えることも可能です。
譲渡所得税の計算式は、以下のとおりです。
譲渡所得 = 譲渡価額 – ( 取得費 + 譲渡費用 )
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率
(所有期間5年以下:税率39.63%、5年超:税率20.315%)
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 譲渡価額 | 買主から受け取る収入金の総額。売却代金のほか固定資産税の清算金なども含む。 |
| 取得費 | 不動産を購入したときの金額。土地の購入費用や造成費用。建物は購入費用などから減価償却費を差し引く点に注意。 |
| 譲渡費用 | 売却時にかかった費用。仲介手数料や印紙税のほか、土地を売るために実施した取り壊し費用や建物の未償却部分も含まれる。 |
| 特別控除額 | 該当する場合のみ控除される。マイホームや相続空き家に対する3,000万円特別控除などがある。 |
土地を売却する際に建物を取り壊した場合、解体費用を譲渡費用に計上することで、譲渡所得を圧縮し支払う税額を抑えることができます。
ただし、解体費用ならどのようなケースでも譲渡費用に計上できるわけではありません。
ここからは、解体費用を譲渡費用に含めるための条件についてみていきます。
解体費用を譲渡費用に含めるための条件
建物の解体費用を譲渡費用として計上できるのは、「解体の目的が土地の売却であること」が明確な場合に限られます。売却が主な目的ではなく、別の理由で解体した場合は、譲渡費用として認められない可能性が高くなります。
例えば次のようなケースだと、取り壊しの直接的な理由が売却ではないと判断され、譲渡費用に含めるのは難しくなります。
- 倒壊の危険があるため取り壊し、その後に土地を売却した場合
- 建て替えのために解体したが、予定変更により土地を売却した場合
- 事業用地として利用するため取り壊し、事業終了後に売却した場合
解体費用を譲渡費用に含める際の注意点
解体費用を譲渡費用として計上する場合、税務調査時に合理的な説明ができることが重要です。特に、解体から売却までの期間が長いと「本当に売却のための解体なのか?」と疑われる可能性があります。
売買契約書に解体撤去条件が明記されていたり、解体時点で不動産会社との媒介契約を結んでいたりするなどの証拠があれば、長期間が経過していても譲渡費用として認められやすくなります。
解体を検討する際は、事前に売却計画を明確に立て、判断に迷った場合は税理士に相談することが大切です。
「解体後1年以内なら譲渡費用に含められる」の真偽について
解体費用を譲渡費用に含める条件として、「解体後1年以内」という基準があると考える人が多いですが、税庁の公式なルールとして明確に「1年以内」と定められているわけではありません。
一方で、ほかの税制の適用条件では「1年以内」という記述があるため、同様に考えられることが多いようです。
例えば、法人税における「土地取得価額への解体費用の算入」については、国税庁の説明において「1年以内に取り壊しに着手する場合」という条件が示されています。
法人が建物の敷地を建物とともに取得した場合(中略)おおむね1年以内にその建物の取壊しに着手するなど、初めからその建物を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかな場合には、その建物の取壊しのときの帳簿価額と取壊費用の合計額(中略)は、その土地の取得価額に算入する
また、譲渡所得税の特例(マイホーム売却時の3,000万円特別控除)の適用条件としても、「家屋を取り壊した日から1年以内にその敷地を売る契約をすること」とされています。
特例の適用を受けるための要件
(1) 家屋を取り壊した日から1年以内にその敷地を売る契約をしていること
一方で、譲渡所得税の取得費に関しては、解体後の期間に関する具体的な記述はありません。そのため、解体から売却まで1年以上経過していたとしても、解体と売却の因果関係を証明できれば、譲渡費用に計上できる可能性があります。
譲渡費用に含める建物の損失額について
建物を解体した場合、譲渡費用に計上できるのは解体費用だけではありません。取り壊した建物の損失額も譲渡費用として計上できます。
譲渡費用の主なものは次のとおりです。(中略)
(4)土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
建物の損失額とは、解体時点における建物の未償却残高のことを指します。
譲渡所得税の計算上、建物部分は年数の経過に応じて減価償却費を計上できますが、建物を解体したときは、減価償却しきれていない未償却分を損失額として計上できるのです。
解体費用に加え、建物の損失額も譲渡費用として計上することで、譲渡所得をさらに圧縮でき、結果として譲渡所得税の軽減が期待できるでしょう。
解体費用の相場と譲渡所得の計算例
ここでは、建物の解体費用の相場や譲渡所得への影響について計算例とともに紹介します。解体を伴う土地売却のコストや、節税額についてイメージを膨らませてみましょう。
解体費用(建物の取り壊し費用)の相場
建物の解体費用は、構造によって大きく異なります。一般的な相場は以下のとおりです。
| 構造 | 坪単価 | 総額(30坪の場合) |
|---|---|---|
| 木造 | 3万〜4万円 | 90万~120万円 |
| 鉄骨造 | 4万〜6万円 | 120万~180万円 |
| 鉄筋コンクリート造 | 6万〜8万円 | 180万~240万円 |
建物の構造が頑丈であるほど、解体費用は高額になる傾向があります。また、立地や周辺環境(狭い道路で重機が入りにくい、近隣との距離が近いなど)によっても、費用が大きく変わるため、実際の解体費用は事前に解体業者から見積もりをとることをおすすめします。
解体費用を譲渡所得の計算に含めた場合のシミュレーション
解体費用を譲渡費用として計上することで、譲渡所得税がいくら変化するのか具体例を紹介します。
売買物件の条件
- 土地購入費用:300万円
- 建物:木造家屋(築40年)
- 売主負担で解体、更地で売却
取引条件
- 売却価格:500万円
- 解体費用:120万円
- 仲介手数料:23万円
- 特別控除:なし
- 所有期間:30年
- 税率:20.315%(所得税:15.315% + 住民税:5%)
譲渡所得は、以下の計算式で求められます。
譲渡所得 = 収入金額 – 取得費 – 譲渡費用
= 500万円 – 300万円 – ( 23万円 + 120万円 )
= 57万円
解体費用を譲渡費用に含めた際の、譲渡所得は57万円です。
続いて譲渡所得税を計算します。
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率(所有期間により異なる)
= 57万円 × 20.315%
= 約11.6万円
同様に、解体費用(120万円)を譲渡費用に含めずに計算すると、以下のようになります。
譲渡所得 = 500万円 – 300万円 – 23万円
= 177万円
譲渡所得税 = 177万円 × 20.315%
= 約36万円
このケースでは、解体費用を計上することで、譲渡所得が120万円減り、結果として譲渡所得税が約36万円から約11.6万円へと減額されました。節税効果は24.4万円となり、譲渡費用として計上することの重要性がよくわかる結果です。
土地売却後の確定申告における解体費用の扱い
土地を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、確定申告が必要になります。特に、解体費用を譲渡費用として計上する場合は、証明書類をしっかりと準備することが重要です。
解体費用について確定申告で必要な書類
確定申告には、以下の書類を用意する必要があります。
- 売買契約書
- 確定申告書第一表・第二表
- 確定申告書第三表(分離課税用)
- 譲渡所得の内訳書
- 不動産の取得費を証明する書類(購入時の契約書や領収書など)
- 不動産の譲渡費用を証明する書類(仲介手数料・解体費用の領収書など)
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
- 登記事項証明書
解体費用を譲渡費用として申告する場合、解体業者の領収書や請求書を必ず保管し、税務署に提出できるようにしておきましょう。
e-Taxを利用すれば、自宅で確定申告が可能です。マイナンバーカードとスマートフォンがあれば、申告書類の一部を省略できるため、手続きが簡単になります。
ただし、e-Taxを利用した場合でも、確定申告書や領収書などの関連書類は最低5年間保管する必要があります。税務調査の際に過去の申告内容を証明するため、適正な申告をしていても証拠書類を残しておきましょう。
土地売却後の確定申告で適用したい特例
建物を解体後1年以内に土地を売却する場合、適用できる2つの特例があります。どちらも最大3,000万円の特別控除を受けられるため、対象となる方は忘れずに活用しましょう。
居住用財産(マイホーム)を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
自宅として利用していた土地を売却する場合、最大3,000万円の特別控除が適用され、税負担を大幅に軽減できます。場合によっては、譲渡所得が控除額内に収まり、譲渡所得税が0になる可能性もあります。
適用条件は以下のとおりです。
- 自分が住まなくなった日から3年以内に売却すること
- 建物を取り壊した日から1年以内に売買契約を締結すること
- 解体から売却までの間、事業用や賃貸用として利用していないこと
取り壊しから売却までの期間が1年を超えると、この特例は適用できません。計画的に売却活動を進め、適用条件を満たせるようにしましょう。
被相続人の居住用財産(空き家)を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
相続した空き家を解体し、土地を売却する場合も最大3,000万円の特別控除を適用できます。
適用条件は以下のとおりです。
- 建物が昭和56年3月31日以前に建てられていること
- 被相続人(故人)が1人で住んでいた不動産であること
- 相続後3年以内に売却すること
- 売却翌年2月15日(確定申告日)までに取り壊していること
- 相続から取り壊し・売却までの間、事業や貸地・居住などに利用していないこと
被相続人が亡くなってから3年以内に売却しないと、この特例を適用できません。相続手続きに時間がかかる可能性を考慮して、相続の発生前から売却計画を立てておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。
参照:
No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
土地売却後の確定申告が不要なケース
譲渡所得の計算結果が0以下になる場合、原則として確定申告は不要です。売却価格が取得費や譲渡費用を下回るケースが該当します。
例えば、以下のようなケースでは確定申告の必要はありません。
例)売却金額500万円、土地の取得費400万円、解体費用100万円
譲渡所得 = 売却価格 – ( 取得費 + 解体費用 )
= 500万円 – ( 400万円 + 100万円 ) = 0円
ただし、特別控除を適用して税額が0になる場合は、確定申告が必要です。例えば、3,000万円の特別控除を適用して非課税となるケースでは、適用を受けるために確定申告が必須です。
申告漏れがあると控除が適用されず、税金が発生する可能性があるため、注意しましょう。
【FAQ】土地売却での解体費用の控除に関連するよくある質問
土地売却に伴い発生する解体費用のほか、関連する費用が控除できるかどうかについて解説します。
地中埋蔵物の撤去費用は控除できる?
土地の売却に直接関連する撤去費用であれば、譲渡費用に含めることができます。
例えば、売買契約書に「地中埋蔵物の撤去が売却条件」と明記されているなど、売却と撤去費用の因果関係が客観的に証明できる資料があると、譲渡費用として認められやすくなります。
ただし、以下のようなケースでは、撤去費用を譲渡費用として計上するのは難しくなります。
- 売却予定がない段階で撤去した場合
- 売却よりもかなり前に発生した撤去費用
譲渡費用に計上できるかどうかは、売却との関係を証明できるかがポイントです。
庭木の伐採費用は控除できる?
地中埋蔵物の撤去と同様に、売却のために伐採が必要であると客観的に説明できれば、譲渡費用として認められる可能性があります。
特に以下のようなケースでは、控除対象になりやすいと考えられます。
- 買主の希望で庭木を撤去した場合
- 伐採しなければ土地の売却が難しい場合
ただし、売却の予定がない段階で伐採した場合や、単なる景観改善・整地目的で伐採した場合は、売却との直接的な関連性が認められず、譲渡費用として計上するのが難しくなります。
残置物の撤去費用は控除できる?
原則として、残置物の撤去費用は譲渡費用に含めることができません。不用品の処分や整理整頓は日常的な行為とみなされるため、通常は譲渡所得の計算において控除の対象外となります。
ただし、売買契約書に「売主が残置物を撤去すること」が条件として明記されている場合など、売買成立のために必要な費用であることが明確であれば、控除できる可能性があります。
地中埋蔵物の撤去、庭木の伐採、残置物の処分などは、売却との因果関係が証明できるかどうかが重要なポイントです。一概に「控除対象」または「対象外」と断言できるものではないため、判断が難しい場合は税理士に相談するのが確実です。
費用はかかりますが、適切な申告を行うことで節税効果が期待できる場合もあります。申告ミスによる税務調査やペナルティを避けるためにも、専門家のアドバイスを活用することをおすすめします。
まとめ
譲渡所得の計算における建物の解体費用と譲渡費用の取り扱いについて解説しました。
土地の売却を目的とした取り壊しであれば、解体費用を譲渡費用として計上することで、譲渡所得税の負担を軽減できます。
解体から売却までの期間が長いと、売却との関連性が認められず、控除が難しくなる場合があります。一方で、売買契約書に解体が売却条件として記載されているなど、譲渡のために必要な解体であることが明白な場合は、控除の対象となる可能性が高いです。判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
また、不動産売却の利益を最大化するには、税金の最適化と同様に最適な販売戦略を立てることも重要です。
建物を解体すべきか、古屋付き土地で売却すべきか迷っている場合は、信頼できる不動産会社に相談しましょう。利益を最大化するための最適な売却方法を提案してもらえます。
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逆瀬川勇造さん からのコメント
宅建士・2級FP技能士(AFP)・相続管理士
土地を売却して利益がある場合の譲渡所得税は、取り扱う金額が大きいこともあり、高額な納税となることもある点に注意が必要です。建物の解体代金は100万円以上かかることもあり、譲渡所得税の計算上、できれば経費として計上したいものですが、本記事でご紹介した通り、経費に計上するためには土地の売却のための解体である必要がある点に注意が必要です。その他、家を解体してしまうと、土地の上に建物が建っていることを条件に固定資産税を最大6分の1にできる特例の適用を受けられなくなるため、建物の解体のタイミングには注意しなければなりません。建物が建っていると維持管理コストがかかってしまうことから、早いタイミングで解体したいと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、損をしてしまうことのないよう、不動産会社の担当者とよく相談しながら進めることが大切です。