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2018年4月1日に新設された田園住居地域、いったいどんな特徴があるのでしょうか。また、25年ぶりの新しい用途地域追加は、なぜこの時期に起きたのでしょう。購入を検討している物件や相続した土地が田園住居地域にある方、ぜひご覧ください。
目次
田園住居地域とは
田園住居地域とは、都市計画法にて地域の活用方法を定める13の区分ある用途地域のうちの一つです。用途地域は住居系、商業系、工場系に分けられます。建てられる建築物の用途や大きさに制限を設けることで土地利用を定め、用途の混在を防ぐことを目的としているのです。
都市計画法 第九条にある田園住居地域の該当部分を引用します。
田園住居地域は、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。
上記のとおり、田園住居地域とは農地と低層住宅の調和した環境を保護するための地域なのです。
田園住居地域は冒頭でも紹介したように2018年に新しく追加されました。この改正は1992年に用途区分が12になって以来25年ぶりの追加でした。その背景には後述する「生産緑地法」にて定められた期限が2022年に迫っていることが挙げられます。
田園住居地域の特徴
それでは具体的に田園住居地域の特徴についてみていきましょう。
自然に恵まれた土地柄
田園住居地域は市街化を進める「市街化区域」のなかでも農地や緑地が多く緑豊かな地域です。日本の高度経済期に都市周辺地域の宅地化が進む一方、緑地の価値が見直され農地を保全する地区(生産緑地)が設けられました。こうして、都市部にありながら住宅と農地が存在するエリアが保たれてきたのです。
生産緑地の地区の指定は東京、名古屋、大阪をはじめとする都市部周辺にみられ、全体では13,000haもあるとされています。
田園住居地域の建設制限
田園住居地域とはその名の通り住居のための地域です。建築物の用途規制は低層住居専用地域と同様の制限になっています。田園住居地域ならではの特徴としては、条件内であれば農業の利便性を高める店舗や倉庫、小規模な工場といったものの建築が可能になっている点です。
- 店舗は150㎡以下のもの、または農産物直売所や農家レストランなどは500㎡以下のもの。
- 農作物を生産、集荷、処理、貯蔵などを行う倉庫、作業場(2階以下)や危険性がなく環境を悪化するおそれが非常に少ない工場や、農機具の収納施設など。
建蔽率や容積率といった形態の規制についても低層住居専用地域と同様になっています。
容積率 | 50~200% |
建蔽率 | 30~60% |
高さ | 10または12m |
外壁後退 | 都市計画で指定された数値 |
また、農地の開発や建築等を行う場合、市長の許可 が必要となります。さらに、一定規模(政令で300 ㎡と規定)以上の開発行為などは、原則できません。
税制措置
田園住居地域内の宅地化農地(※1、300㎡を超える部分)は、固定資産税等の課税評価額を1/2に軽減されます。 (平成31年度分より適用)また、田園住居地域内の宅地化農地について、相続税・贈与税・不動産取得税の納税猶予を適用することとなっています。
※1:市街化区域内の農地で、宅地化すべきとされている農地。特定市街化農地とも。一方、保全すべき農地を生産緑地という。
近い将来、周辺環境が変化する可能性
都市部の農地はバブル期に土地価格上昇による固定資産税の負担増のため、税負担の軽い宅地化へ転用が進みました。そこで生産緑地法の改正によって宅地化せず保全する農地(生産緑地)の税制措置を行ったのです。
2022年はその生産緑地法による都市部農地の税制優遇措置、農業を営む義務の終了期限にあたります。そのため、これを機に売却される農地が多数出てしまうのではないかと懸念されています。田園住居地域の指定で住宅と農地の調和を保った地域づくりが目指されていますが、都市部の農地が売りに出され、一戸建てやアパート、マンションができることにより周辺環境が変わるだけでなく、地価や家賃相場にも影響が出るのではないかという見方もあります。
住居専用地域や準住居地域との違いは?
田園住居地域は市街化区域の中でも緑が多いエリアです。市民農園などの取り組みもあり、農地の貸借を促進する制度もあるため、農業をやってみたい方にも向いているかもしれません。
建築物の用途規制から見ても住宅系の中では工場や倉庫の規制が最も緩やかである準住居地域と比較すると、農業に特化した規制の緩和であることがわかります。さらに、この緩和により農業を活かした直売所やレストランといった多角的な経営が狙いの一つでもあります。
参照:国土交通省「都市計画法・建築基準法:田園住居地域」平成30年4月1日施行
【まとめ】用途地域の特徴を理解して有益な土地活用を
他の住居系用途地域とは少し異なる特徴を持つ、田園住居地域についてご紹介しました。新設されまだ間もなく全国的に見ても限られたエリアにしか指定されていませんが、だからこそこの用途地域について理解し有効に活用したいものです。また、田園住居地域は生産緑地の終了の2022年問題と切り離せません。こちらも合わせて知っておきたい事項ですね。
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