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2011年の東日本大震災の際、沿岸部で大きな被害があった液状化現象。いつどこに発生するかわからない震災、新しく住宅を取得する際には地盤が安全か心配になりますよね。
液状化がどのような条件で発生するか、発生しやすい土地を知って、安心・安全なマイホーム取得を目指しましょう!
目次
液状化とは
液状化とは安定していた砂地盤が地震の振動によって圧力が加わり液体状になる現象です。液状化する砂地盤は地下水位が高く水分を多く含んでいます。地盤が液状化することで、建物の傾斜や沈下、マンホールなどの地下埋設物などの浮き上がりが発生します。
1964年の新潟地震が有名
液状化現象という言葉は1964年の新潟地震で有名になりました。地震のマグニチュードは7.5、新潟市では震度5強を観測しました。揺れの大きさでは阪神淡路大震災や東日本大震災に及びませんが、地盤の液状化現象によって建物被害は新潟県、山形県などで全壊1960棟、半壊6640棟に上りその他にも大きな被害が発生しました。新潟市中心部は信濃川が流れ、上流から砂を運んでいます。そうしてできた砂の地盤が地震によって液状化し、鉄筋コンクリート造の建物の倒壊や、地下水の湧水による浸水などの大規模な被害が生じたのです。
液状化の被害例
液状化はその名のとおり、地盤が液状になる現象です。ひとたび都市部で液状化が生じれば建物やインフラなどに甚大な被害をもたらします。
建物の沈下、傾斜
地盤が液状化することで建物が地面に沈み込んだり、傾いたりします。建物が不均等に沈下する不同沈下も含まれます。不同沈下は液状化がなく軟弱地盤でも発生しますが、傾きが生じることで建物の性能に様々な被害を与えます。
住宅が破壊される程ではないとしても、6/1000以上の傾斜で健康被害が発生します。
地下埋設物の浮き上がり
液状化した地盤の中に埋設されたマンホールは水よりも軽いため地面から浮き上がってしま います。マンホールの場所によっては交通を妨げ避難や支援物資運搬などの障害となることも。地下に埋設されている水道やガスといったライフラインの断絶も発生します。
噴砂・噴水
液状化が発生すると、地震の揺れによって圧力が増した地盤の砂や地下水が地表に噴き出します。沈下や地割れは液状化以外の原因でも発生しますが、この噴砂・噴水が起きるのは液状化特有です。噴砂によって自動車や住宅が埋もれてしまう、噴水した地下水で冠水するといった被害が発生します。
この噴砂の跡を調査することによって過去に発生した液状化を調べることもできます。
側方流動
耳慣れない言葉ですが、液状化によって地盤全体が水平方向に動くことを指します。これにより、盛り土の崩壊や地滑り、河川や海の護岸のはらみ出し・沈下が発生します。建物を支える地盤に側方流動が生じると、建物に引き裂かれる力が加わり破損の危険があります。
護岸・擁壁の損傷
阪神・淡路大震災では埋立地であるポートアイランドの護岸で側方流動が発生し、最大5メートルもの距離を移動し地盤が海中に流出しました。
港は埋め立てでできている場合が多く、上記のように地震によって液状化が生じることがあります。護岸や擁壁が側方流動や沈下によって損傷し、震災時に津波から内陸を守るという本来の役割を果たせず被害が拡大する例も出ています。
地盤の亀裂
地盤が液状化し動き出すことにより、地面に亀裂が生じます。亀裂に挟まれ命を落とした被害もあり、避難の際には注意が必要です。
液状化が発生する条件
液状化が発生する地盤の状態にはいくつかの条件があります。どんな条件によって起こりうるのか見ていきましょう。
砂が堆積している
液状化の条件の一つとして、砂が堆積していることがあります。粒の大きさの直径が0.075~2ミリの大きさの砂が液状化を起こしやすくなります。それより小さいものでは粘りが出て砂の粒子がお互いにくっつき合い地震で液状にバラバラになることはありません。粒の大きいもの(礫、砂利)であれば水はけがよいため液状化がしにくいとされています。
砂がゆるい
砂のかみ合わせが“ゆるい”ことも液状化の条件の一つです。砂粒の大きさと堆積の締まり具合は地盤の液状化に対する抵抗力に繋がります。地震による揺れによって圧力がかかり、地盤の抵抗力が勝てば液状化は生じませんが、地震の力が勝てば液状化が発生します。
砂が地下水に浸っている
地下水位が高い(地表から見て浅い)状態で、それによって軟弱な砂地盤が地下水の中に浸っている状態です。地下水が地面から1メートル程度のものは地下水が高い部類に入ります。しかし、地下水位は季節や降雨によって変化するため注意が必要です。
地震による振動が伝わる
液状化は地震をきっかけに発生します。まず、水分を大量に含んだ緩く堆積した砂地盤に地震の揺れによって強い圧力がかかります。そうなることにより、緩く堆積した砂地盤は砂粒同士のかみ合わせが弱まり地下水の中に浮いた状態となります。水混じりの砂地盤(個体)が地震の圧力によって砂混じりの液体になってしまうのです。また、緩く堆積した柔らかい地盤では地震の揺れを増幅させ、それにより液状化の可能性が高まります。
条件を紹介しましたが、液状化はこれらの要素が組み合わさり発生するものであるため一概に軟弱地盤だから、地下水位が何メートルだから発生するなどと断言することはできません。
液状化しやすい土地
液状化が発生する条件には、砂地盤であること、地下水位が高い(浅い)ことがありました。
それらの条件が揃う土地はどのような地形、土地利用なのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
- 昔、川や沼だった場所
- 埋立地
- 砂丘などが近い場所
- 大きな川が近い場所
- 盛り土・埋め戻した土地(砂利の採掘跡地)
- 昔、液状化を起こした場所
一度液状化が起きた地盤は水分が抜け締まるため安定すると考えられがちですが、それは違います。過去に液状化現象が起きた土地が繰り返し被害に遭う例も多く報告されています。地盤は長い年月をかけて安定していきますが、数十年から数百年のスパンで過去に被害があった土地は警戒をする必要があるでしょう。
液状化への対策
液状化のリスクを知るための実際の地盤に対しての調査は土地の購入前に行うことはできません。そのため、購入前にハザードマップや土地の成り立ち、地形による事前調査が重要になります。また、取得した土地が軟弱地盤で合った場合の対策もご紹介します。
液状化しやすい土地を避ける
液状化が起きにくい土地は地形区分では山地や台地です。これらの土地は200万年前以前に堆積した比較的古く硬い地盤から成り立っています。先ほど紹介した液状化しやすい土地を避け、台地などの地盤が安定した土地を選びましょう。
土地の調査を行う
購入前の調査にはハザードマップを利用しましょう。国土交通省が提供する「重ねるハザードマップ」では地形分類から「地形区分に基づく液状化の発生傾向」を確認できます。液状化しやすい土地でも紹介したように埋立地や旧河道、干拓地や自然堤防では発生傾向が高く、山地や丘陵では低くなります。同じく「重ねるハザードマップ」では過去の土地利用を航空写真で知ることができ、旧河道や沼地、埋立地を確認できます。
各自治体からも50メートル四方のメッシュで震度と液状化可能性の予測を表したハザードマップが作られています。ですが、メッシュの中でも建築時に地盤改良がなされていたり、部分的に過去に沼などがあった場所などは考慮されていない場合があるため注意が必要です。
また、「国土地盤情報検索サイトKunijiban」では国土交通省が調査した道路や河川、港湾事業の地質・土質のボーリンク柱状図を検索閲覧することができるため、近くにボーリング調査の履歴があれば参考にしてみましょう。
土地の購入後は実際の地盤調査が可能になります。戸建住宅では比較的安価なスクリューウェイト貫入法が多く用いられます。
【関連記事】地盤調査とは?詳しい方法や費用、調査を依頼するときの注意点を解説
地盤改良
液状化が懸念される地盤であっても地盤改良を行うことで、リスクを低減させることができます。主に下記のような工法があります。地盤への液状化対策は更地の状態であれば容易ですが、後に紹介する通り既存住宅では建物や周辺環境への影響もあるため難しくなります。
- 地盤に砂を圧入し締め固める
- 薬剤等を注入し地盤を固結させる
- ポンプなどで地下水を汲み上げ地下水位を低下させる
一番目と二番目の工法は液状化が起きやすい条件である「ゆるい砂地盤」を固めるもの、三番目の工法は「ゆるい砂地盤」が地下水に浸っている状態を解消するため地下水を下げることで地盤改良を行います。
建物を液状化に強い設計にする
地盤の液状化を防ぐのではなく、建物自体を液状化によって起きる地盤沈下(不同沈下)や地盤のずれに対して強い造りにするというものです。
建物自体の重さが偏っていると重い方に傾くため、正方形など均等に重さのかかる形がよいでしょう。べた基礎は面で地面に負荷を分散させることができ、建物の不同沈下を低減する効果が期待できます。沈下が起きた場合も建物への被害が少なく済み、基礎が強固なためジャッキアップがしやすく復旧が比較的容易になります。適切なべた基礎とするには基礎の配筋の太さや間隔、スラブ厚に留意が必要です。べた基礎の下に砕石を敷くと水はけが良くなり基礎の液状化を抑制する効果があります。
その他、地盤改良を行わずに被害を低減させる方法として杭で建物を支持する方法(構造的対策)もあります。これは軟弱地盤への対策としても一般的です。
【関連記事】べた基礎、布基礎とは?比較とメリット・デメリットを解説!
既存住宅の対策
さて、既に居住している住宅、または中古住宅を取得し、そこの地盤に液状化リスクがある場合はどうでしょう。基本的に新築時の地盤改良工事と同じ対策が可能ですが、住宅を温存しつつ行う施工になるため、沈下の復旧作業と同様に建物をジャッキアップする必要があります。そのため、新築時に行う費用と比べ多額の費用が必要となります。費用対効果を考慮して判断しましょう。また、新築時とは違い隣地との間隔によって施工が難しい場合もあります。既存住宅の対策は施工条件や隣地条件が様々でまだ実証例が少なく、これからの技術開発が期待されている状況です。
保証などの制度
液状化に遭ってしまった場合、利用できる保険や保証、行政支援をご紹介します。
地震保険では液状化も補償対象としています。1度を超える傾斜、30cmを超える沈下で全損扱いとなり、建物(時価)の地震保険金額の全額の保険金が支払われます。体調不良を起こす6/1000の傾きが0.34度であることを考えると1度の傾きはとても暮らせるものではありません。
行政の支援では「被災者生活再建支援金」があり、全壊住宅を再建した場合300万円の支給があります。東日本大震災で大きな被害がでた浦安市では市独自の支援金制度も整備されています。
その他、復旧工事のため、住宅支援機構による「災害復興住宅融資制度」もあり、様々な自然災害により被害を受けた住宅の居住者を対象に低金利での融資を行っています。
地盤の災害リスクを理解しておうち探しを
わたしたちの足元で、あたりまえのように建物を支え、インフラ整備のためにも役立っている地盤。それが突如として不確かなものになってしまうリスク、それによって引き起こされる被害を知っておかなければなりません。これは、ただ単に不安を煽るわけではなく、原因と対策を知ることによって安心してマイホームを取得する、マイホームで暮らしてゆくための知識です。
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参考資料:
「そこで液状化が起きる理由(わけ) 被害の実態と土地条件から探る」東京大学出版会 若松加寿江2018
「Q&Aで知る住まいの液状化対策」住創樹社
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