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現在、住宅ローンを組むときに、銀行から当然のように『抵当権』の設定を求められる流れが一般的となっています。
抵当権の設定は当たり前のことと理解していても、どんな権利なのかイマイチ分からない……と言う状態の方に向けて、抵当権を設定するための手続きや費用、申請しないとどんなことが起こるのか、などをまとめてみました。
これから不動産を売買する方はもちろん、宅地建物取引士の試験を控えている方にも是非押さえて頂きたい内容となっています。
それでは、早速一緒に見ていきましょう。
抵当権とは
まずは抵当権というものがどういった権利で、どんな時に使われるものなのかまとめてみました。
抵当権の概要
抵当権とは、住宅ローンを組んでお金を借りたり、住宅ローンの借り換えをしたりする際に、債務者(借りた側)が返済できない事態(債務不履行の状態)に陥ってしまったときのために、土地や建物を担保として確保しておける権利のことをいいます。
所有する不動産に抵当権が設定されていても不動産自体は自由に使用でき、売れるかどうかは別として、売却も可能です。
あまりメジャーではありませんが、抵当権設定が求められない住宅ローンも存在しています。
しかしながら、そういったローンには借入可能額が少額だったり、融資期間が通常より短く金利がかなり高めに設定されていたりといった条件があります。
金融機関が土地、建物を担保にすることができる権利
抵当権をつけることを『抵当権設定登記』と言います。
この登記をすることで、債務者が債務不履行により住宅ローンが返済できなくなった場合、金融機関は裁判所に申し立てを行い、強制的に不動産の競売を実施することができ、その売上代金をローン返済に充てられるようになります。
また、他の債権者がいたとしても優先的に弁済を受けることが可能になるのです。
対象となるのは、地上権(土地使用の権利)、土地や建物など不動産の所有権、他人の土地で農業を営むための権利である永小作権(えいこさくけん)。
現在、ほとんど全ての金融機関が、この抵当権の設定を必須として契約を行っています。
ローンの返済が滞ると、差し押さえられる
抵当権を設定した不動産の住宅ローンの支払いを滞らせてしまうと、最終的に不動産の『差し押さえ』が待ち構えています。
3か月以上住宅ローンを滞納している場合、まず督促状が送付されます。この督促状を無視して半年を過ぎると、いつ抵当権を行使されてもおかしくない状況となるでしょう。その後競売にかけられてしまえば、およそ9か月で大切な家を引き渡さなければならなくなってしまいます。抵当権の実行による競売をどうしても回避したい! という場合は、金融機関のコンセンサスを得られれば『任意売却』を検討してみてはいかがでしょうか。
住宅ローンに限らず、ローンは金融機関と交わした約束のようなものです。金銭トラブルが発生する前に、月々の返済金額 を見直し、不明点がある場合は相談しましょう。信頼関係を維持するためにも、支払の遅延が起こらないよう努力することが最も重要となってきます。
根抵当権とは違うの?
根抵当権の概要
抵当権と語感が似ている『根抵当権(ねていとうけん) 』という抵当権があります。同じ抵当権でも、性質や用途が全く異なるもので、法人を中心として利用されているものです。詳しくは下記で説明します。
抵当権とは別物
『根抵当権』とは、融資などで頻繁にお金の動きのある会社がよく利用する抵当権のことです。日頃から金銭がよく動く企業にとって、その都度抵当権を設定・登記・解除していては、税金や手数料の金額も膨大になりますし、そのやり取りだけで1日ではとても間に合わないでしょう。
そこで、『極度額』という金額の上限を決め、上限の範囲内であれば一取引ごとに抵当権を登記することなく、自由に融資・返済を可能にしました。この部分が根抵当権の特徴で、抵当権との大きな違いになります。
根抵当権に関して、内容は全く別のものと言うことがご理解いただけたのではないかと思います。
余談となりますが、根抵当権であっても、支払を滞納してしまうと差し押さえになる部分は変わりありませんので、注意が必要です。
一部では、住宅ローンを根抵当権という形を取って融資している銀行も存在しているようです。詳細を知りたい方は一度調べてみると良いかもしれません。
抵当権の登記や変更の手続き
抵当権は、設定時・内容変更・抹消時に証書の作成および手続きが必要です。
抵当権設定登記が完了すると、登記簿上で債務者・抵当権者(金融機関名)、登記の目的や原因などの情報が確認できるようになります。
自分でも手続きは可能ですが、不安な方は委任状を作成し司法書士に依頼する方向で考えると良いかもしれません。
また、住宅ローンには様々な借り入れ方法がありますが、ペアローンを組んだ際 は、所有者それぞれがローン契約し連帯保証人になるという形をとります。司法書士への依頼件数が増えるため、その分報酬が値上がりすることも頭の片隅に置いておきましょう。
関連記事:共有名義の住宅における住宅ローンなどのメリット・デメリットとは
抵当権の登記手続き
一般的には司法書士が代行
抵当権の手続きは、債務者本人か債務者の代理人が法務局へ登記に必要な書類を提出しなければなりません。
郵送での申し込みはもちろん、最近では、事前に申請用総合ソフトをダウンロードしたうえでの『オンライン申請』もできるようになりました。平日に時間が取れない、インターネットでの手続きが得意、など自分が対応しやすい申込方法で申し込みましょう。
登記に関しては、手続きの内容だけでなく、手間や時間の面でも対応が難しいと感じる方が多く、司法書士に代行を依頼するのが一般的な流れとなっています。
司法書士といっても、どんな方にお願いしたらいいか分からない!と言う場合は、不動産会社に相談してみるのも一つの手段です。
登録免許税がかかる
登録免許税とは、不動産を登記する際に必要な税金のことで、抵当権設定登記の場合は下記の通り算出が可能です。住宅ローンの借入金額 × 0.4%
一定の条件を満たしている住宅の場合は、軽減税率の特例ができる可能性があります。下記の記事で詳しくお伝えしていますので、気になる方はチェックしてみると良いでしょう。
関連記事:登録免許税とは?納付方法や計算方法、軽減措置の条件を解説
司法書士への報酬も必要
司法書士に登記を依頼する場合は、依頼料(報酬)が必要になってきます。金額は司法書士や依頼内容によって異なってきますので、登録免許税と併せて把握しておきたいところ。事前に見積を取っておくと安心です。
登記件数によって金額が変動するため、ペアローンの場合などは費用が別途かかってくる場合があります。
その他、印紙代や雑費もかかる
ここまでにお話した費用以外にも、手続きに必要な印鑑証明が1通300円、登記簿謄本の取得に必要な『登記事項証明書』発行手数料は1通600円(ネットでの取得は1通500円)など、所有権の移転に関する書類作成や契約書に貼り付ける印紙、必要書類を取得する場合にはそれぞれ費用が発生します。
抵当権の変更手続き
登記の内容に変更があった場合手続きが必要
抵当権設定登記後、住宅ローンの返済期間中に登録名義人の氏名や住所、抵当権者の順位など、契約情報が変更になった場合は、変更手続きを行う必要があります。
変更には原因証明書、印鑑証明書、登記識別情報や登記済権利証が必要となりますので、あらかじめ準備しておくと良いでしょう。
手数料がかかる
抵当権の変更手続きに関しても別途手数料が発生します。手数料は不動産1件の登記につき1,000円で、土地と建物の手続きをする場合は2件登記するので手数料は2,000円という計算になります。
こちらも司法書士への依頼を検討されている方は、別途報酬が必要になることを留意しておきましょう。
抵当権付きの不動産を相続するときは?
ここまで目を通してくださった方ならば、もし自分が不動産を相続する事になったとしたら、不動産相続前に、抵当権が付いているかどうか確認したい!と思うのではないでしょうか。
抵当権の確認方法や、抵当権が付いている不動産の相続方法を併せて見ていきましょう。
まずは不動産登記の内容を登記謄本で確認
住宅ローンが完済しているが、不動産登記上は抵当権が付いているのか
不動産の抵当権を確実にチェックするために、『登記簿謄本』の取得が最も確実な方法です。
登記簿謄本は、法務局窓口および『登記情報提供サービス』で確認が可能です。郵送の場合は法務局ホームページから書類を入手して送付すると、登記簿謄本が返送されます。自分が手続きしやすい方法で手続きしていきましょう。
抵当権がついているかどうかは、登記簿謄本の『乙欄』を確認します。住宅ローンは完済されているはずでも、抵当権が抹消されていない状態になっていることもあるので、注意が必要です。
抵当権がついたままであっても相続は可能となるため、債権者に確認するなどして住宅ローンが完済されていることが確実に分かっている場合は、一度相続した後に抹消登録手続きを行いましょう。
住宅ローンが完済していないため、不動産登記上にも抵当権が付いているのか
抵当権抹消のタイミングは、所有権移転登記と同時に行うケースが一般的な流れです。
抵当権が抹消されておらず、ローンも未完済の不動産を購入すると、万が一売主が住宅ローンの返済を滞納し抵当権が実行された場合、買主は住まいを失いかねません。
抵当権およびローン残債のある不動産の相続を検討している場合は、 決定する前に必ず登記簿謄本で債権者を確認し、ローン残債を問い合わせておきましょう。
借金が残っている場合
相続か放棄を検討する
借金がまだ残っている不動産の法定相続人になった場合、不動産の相続もしくは放棄という選択肢が発生します。
残債のある不動産を相続した場合、返済義務は相続人全員で負う形となりますが、債権者の承諾の上話し合い、不動産の相続人のみ返済義務を負う形に変更することも可能です。
相続した不動産の売却金や不動産以外の遺産額がローン残債を上回っていれば、ローンを完済し抵当権を抹消することができます。
また、団体信用生命保険に加入していれば、被相続人が死亡した際は保険金でローンが完済されるため、相続人に借金が残ることはありません。
しかし、残された財産が住宅ローン完済前の不動産のみだった場合は、ローン残債を確認した上で相続するかどうかを検討する必要があります。
抵当権付き不動産の相続税計算をする際、ローン残債は不動産の価格査定に影響します。借金分が不動産の時価額を超えてしまうと、不動産としての価値がなくなってしまうことになるのです。
団体信用生命保険に未加入でローン残債が巨額となる場合は、相続放棄も視野に入れて考えましょう。
相続放棄する場合は、相続人の権利自体を放棄するということになるので、負債はもちろんのこと、プラスになる資産を含めた被相続人の財産が一切相続不可能となります。
そして、一度相続放棄すると相続放棄の取り消しはできなくなってしまうため、慎重に判断することが必要です。 住んでいる不動産を どうしても手放したくない、という場合は、現在居住中の不動産を賃貸借契約に切り替えて住み続けられる『リースバック』も、併せて検討してみましょう。
関連記事:
リースバックの基本|リースバックの仕組みやメリット・デメリットなど解説
土地の相続税の計算方法は?相続税を下げるための特例を知っておこう
返済済みの場合
抵当権を抹消する
一般的に抵当権は、不動産を引渡すまでに抹消しておくのが通常の傾向となります。登記簿謄本に抵当権が残った状態のままでは、次の購入希望者や金融機関が抵当権の有無を正しく把握できず、売買に影響してしまう可能性が大きくなるためです。
後々の事を考慮して、大変な思いをする前に手続き関係を片付けておきたいですね。
抵当権の抹消手続き
抵当権は所有者が変更になった場合でも、自動的に切り替ったり、消滅したりするわけではありません。
住宅ローンの完済などで抵当権が抹消できる状態になると、金融機関から必要書類が送付されますので、抵当権を登記簿謄本上から消すための『抵当権抹消登記』を行いましょう。
抵当権抹消登記自体には、いつまでにやらなければならないといった期限はありません。
しかし、抵当権抹消登記の手続き後、実際に登記が変更されるまでに2週間程時間が必要です。
また、長期間放置したことで、ローン契約した金融機関が合併や吸収で無くなっていたり、商号などの基本情報に変更が生じていたりする場合があります。こういったときには、変更事項の履歴を全て書面で取り寄せるなどイレギュラーな事態にも対応しなければなりません。
他に必要な手続きへの影響も考えられますので、早めに抹消処理を行っておくことが大切です。
必要書類
1.登記原因証明情報(抵当権解除証書もしくは弁済証書)
住宅ローンを完済した際に金融機関から郵送されます。
この書類の受付をすることで、住宅ローンの返済を完了したということになる大切な書類。抵当権抹消日の項目が空欄の場合はローン完済日を記入しましょう。
金融機関によって書類名が異なる場合があります。『弁済証書』『抵当権解除(放棄)証』などの記載があるものがこの書類に該当しますので、どの書類か分からないといった場合は一度金融機関へ問い合わせてみると良いでしょう。
2.抵当権の登記済証(抵当権設定契約書)または登記識別情報通知書の原本
こちらも、住宅ローン完済時に金融機関から送られてくる書類となります。発行時期によって名称が異なり、平成18年以前は『登記済証』、それ以降発行されたものは『登記識別情報』に変更されており、オンライン申請で登記を行った場合はインターネット経由で通知が来る仕組みになっています。書面申請を行うと登記識別情報通知書が登記名義人宛に交付されます。
登記名義人が正当な権利を持っていることの公的証明書となり、不動産の譲渡や新しく抵当権を設定する際に使用するほか、再発行ができない書類となります。万が一無くしてしまった場合は手続きの手順が非常に煩雑になってしまうため、大切に管理しておきましょう。
3.登記事項証明書
自分で法務局窓口や登記情報交換システムで申請し、取得する書類となります。登記情報交換システムを利用した場合は最寄りの登記所で交付してもらえるため、自分の都合に合わせ取得ができるようになっています。
不動産の登記簿上の登録内容を公的に確認するための書類となります。不動産を取引する際に登場する機会が多いので、取得方法やタイミングは覚えておいて損はないでしょう。
4.代理権限証明情報(金融機関発行の委任状)
住宅ローン完済時、金融機関から送付される書類のうちの一つです。抵当権は債権者と債務者が関係する2者の権利となり、本来は債権者と債務者が法務局で手続きを行います。そうすると、金融機関の立ち合いがなく債務者のみで抵当権の抹消を行う場合、債権者である金融機関が不動産所有者に抵当権の抹消を『依頼』する形になります。そのためにこの委任状が必要になるのです。
そして司法書士に抵当権の抹消を依頼する場合には、金融機関および債務者(不動産所有者)から司法書士への委任状が必要になりますので、注意しましょう。
また、抵当権抹消日の欄が空いていないかどうかのチェックも忘れずに行いましょう。
5.抵当権抹消登記申請書
債務者が用意する書類で、抵当権抹消登記を申請するために用意します。http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html(法務局)から申請書を印刷して必要事項を記入します。書き方が不明な場合は掲載されている『記載例』を参考にしながら順番に進めましょう。
6.代表者事項証明書
金融機関から送付される書類の一部です。金融機関の登記関係を証明する書類で、資格証明書として利用することができます。
金融機関によって『登記事項証明書』『現在事項一部証明書』など、書類名が異なることがあるため、不安な方は金融機関にお問い合わせ頂くと安心です。
また、代表者事項証明書は『発行から3か月』の有効期間があり、無効となってしまった場合は法務局で手数料を支払えば再取得できます。余計なお金を削減するためにも、手早く手続きを完了してしまいたいところですね。
自分でやるか、司法書士や弁護士に依頼
抵当権抹消登記は、融資を受けていた本人が行う必要がありますが、司法書士や弁護士に依頼することも可能です。
手続き内容が比較的簡単であることと、発生する費用が大幅に抑えられるため、可能な方は自分で法務局に申請してみてもいいかもしれません。
また、抵当権抹消申請書に使用した印鑑を使って契印を行う箇所があるため、忘れずに持参しましょう。
司法書士に依頼する場合は手数料がかかる
法務局に行くタイミングがなかなか捻出できない方は、司法書士に依頼しましょう。
正確に手続きができるというメリットがあり、不備のため何度も法務局に赴くなどの手間や時間の削減につながります。
司法書士への報酬は1万円前後と言われており、自分で登記を行うよりはどうしても割高になってしまいます。
さらに複数機関からの融資を受けているケース、別途交通費や通信費がかかった場合などについては、別料金が発生する可能性がありますので、準備しておきましょう。
法務局への申請料金もかかる
自分で抵当権抹消登記を申請する場合、不安な部分は法務局窓口に直接聞いてみましょう。
必要書類が揃ったら、抵当権抹消登記申請書を同窓口に提出します。オンラインや郵送でも申請が可能なので、法務局まで行く時間がない方は郵送利用をオススメします。
また、不動産の場所により法務局の管轄地が異なっています。法務局のホームページにて確認が取れますので、事前に調べてから行動するとスムーズに手続きが行えるでしょう。
まとめ
抵当権について、いかがだったでしょうか。今回の記事のポイントをまとめましたので、再度気にしておきたい点を再確認していきましょう。
・不動産売買前に、登記簿謄本で抵当権の有無を確認!
・抵当権登録手続き、抹消手続きを理解し、速やかに対応できる準備を。
・他の手続きのためにローン完済後は早急に抵当権抹消登記を実行!
抹消手続きができる状態の抵当権は、放置していても何も良い事はありません。必要書類の中には有効期限のある書類も含まれるため、可能な限り素早く申請し、サクッと手続きを終わらせてしまいましょう。
抵当権抹消登記は法務局窓口、郵送に加えオンラインでも対応が可能になっています。必要書類の事前送付と申請用総合ソフトのインストールが必要となりますが、条件が合うならば使用してみてはいかがでしょうか。
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