この記事のポイント
- 空き家はこの30年で急増しており、老朽化や管理不全の原因になっている
- 地域特性や利用者とのマッチングを行うことで、空き家を資源として再生する成功事例もある
- 個人レベルでは、早めに相談先を確保することが、特定空家化や将来の負担を防ぐ対策になる
「空き家を持て余しているけれど、売らずに活かす方法はないだろうか」
「地域の空き家が増えてきて、このままでは街の魅力が下がってしまうのではないか」
こうした悩みに向き合うとき、実際の成功例を知ることは判断材料として頼りになります。
活用に成功した空き家には共通する工夫があり、その背景には所有者や地域の視点に寄り添った取り組みがあります。
この記事では、自治体・NPO・企業・個人が実現した多様な空き家対策の事例を取り上げ、取り組みの特徴や学べるポイントを解説します。
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記事の構成
日本の空き家問題の現状
ここ30年のあいだに、全国で空き家が目立つようになってきました。人口の減少や暮らし方の変化が重なり、住まいの使われ方が昔とは違ってきたことが背景にあります。
まずは空き家がどれくらい増えているのか、そして国がどのような枠組みで向き合っているのかを紹介します。
空き家率と空き家数の推移

参照:令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果|総務省
1993年から2023年までの30年間で、空き家数は約448万戸から900万戸へ約2倍に増え、空き家率も9.8%から13.8%に上がりました。
なかでも増加が大きいのが「その他空き家」です。これは、別荘や賃貸用といった明確な使い道がある物件ではなく、長いあいだ誰も使っていない住宅のことです。相続後に手が付けられないまま残っている家、転勤や入院で戻る見通しが立たない家などが含まれます。
「その他空き家」は131万戸(1993年)→385万戸(2023年)と約3倍に増えています。
住む予定のある空き家より、扱い方が決まらないまま時間が過ぎてしまう物件が増えている状況で、老朽化や管理不足につながりやすい点が課題になっています。
空き家対策特別措置法とは
空き家が増え、周囲に悪影響を及ぼすケースが増えたことを受け、2015年に「空き家対策特別措置法」が制定されました。使われていない家を「空家等」と呼び、「倒壊のおそれがある」「衛生面で問題がある」「景観を損ねている 」といった状態の家を「特定空家等」としています。
この法律によって、自治体は現地調査や所有者への連絡がしやすくなり、必要な場合には以下の手順で段階的に改善を求められるようになりました。
- 助言
- 指導
- 勧告
- 命令
- 行政代執行
また、勧告を受けた特定空家等は固定資産税の優遇が外れるため、放置し続けることにリスクとデメリットが生じるようになりました。
制度の目的は、空き家を一律に処分することではなく、危険なものは早めに対応し、使えるものは活用につなげるという考え方です。地域の安全と活用の両面から空き家に向き合うための土台となっています。
参照:
空き家対策|国土交通省
家等対策の推進に関する特別措置法|e-Gov 法令検索
空き家対策の主な方法
空き家をどう扱うかを考えるとき、必ずしも1つの正解があるわけではありません。建物の状態や立地、所有者の意向によって選べる方向性が変わってきます。
ここでは、大きく3つの活用パターンをみていきます。
住まいとして再利用する
空き家のもっとも身近な活用が、住宅として再び使う方法です。
- 賃貸住宅として貸し出す
- 移住希望者や二拠点生活を求める人へ提供する
といった選択肢があり、居住ニーズに合わせた活用ができます。
建物の補修が必要な場合もありますが、間取りや広さが合えば長く空いていた家でも新しい利用者が見つかる可能性があります。居住目的で利用されることで、周囲に人の気配が生まれる点も魅力です。
商業・サービス施設として転用する
住宅を別の用途へ切り替える方法もあります。
古い家の雰囲気を生かしたカフェ、少人数で使えるコワーキングスペース、旅行者向けの民泊など、使い方の幅は広いです。
- 店舗
- ワークスペース
- 宿泊施設
上記のような用途に転換することで、地域に人が訪れるきっかけを生む場面もあります。住宅としては使いにくい間取りでも、サービスの場としては魅力に変わることがあります。
地域のためのスペースとして活用する
地域の困りごとに応える形で活用するケースもあります。
例として、以下が挙げられます。
- 地域住民の集会所や交流拠点
- 子ども食堂や学習支援の場
- 高齢者の居場所づくり
人が住むわけではないものの、空き家が地域の活動を支える拠点になることで、周辺の見守りやコミュニティづくりにも良い影響が生まれます。
自治体やNPOの空き家対策の成功事例
空き家を地域の課題と捉えるだけでなく、地域資源として再評価しながら多様な取り組みを進めている自治体やNPOがあります。
実際の成功例を見ると、地域に合った形で空き家の価値を引き出していることがわかります。
古民家を会員制農家民宿として再生した事例(茨城県常陸太田市)
| 課題 | 受け皿となる宿泊拠点の不足、古民家の老朽化 |
|---|---|
| 対応策 | 古民家を改修し、会員制農家民宿として運営 |
| 事業主体 | 里美ツーリズム探求会(任意団体) |
| 成果 | リピーターが多く、地域との交流が進み定住の芽も育つ |
古民家を借り受け、宿泊できる場所として再生した取り組みです。
会員制を採用したことで、利用者の顔ぶれを把握しやすくなり、地域住民との関わり方も調整しやすくなりました。農作業体験などの活動も評判で、地域の魅力を体感するきっかけになっています。
参照元:
参考資料3)空き家の活用事例|国土交通省
THE ARAMAKI 荒蒔邸 – 茨城県常陸太田里見の築160年古民家民泊|囲炉裏体験&日本庭園
地域に配慮した空き農家紹介の取り組み(北海道芦別市)
| 課題 | 空き家紹介による地域住民との摩擦、移住者とのミスマッチ |
|---|---|
| 対応策 | 入念な面接と地域リーダーとの連携による丁寧なマッチング |
| 事業主体 | NPO法人北海道B&B協会 |
| 成果 | 約100件を紹介し、15件が定住へつながるなど地域活性化に貢献 |
協会が面接を行い、移住希望者の希望や生活イメージを丁寧に確認する仕組みを整えています。そのうえで、地域のリーダーとも情報を共有し、無理のない紹介を行う点が特徴です。
結果として定住に結びついた例もあり、地域とのミスマッチが起きにくい体制がつくられています。
空き蔵を地域資源として活かすまちづくり事例(三重県伊勢市)
| 課題 | 歴史的建造物の空き蔵が増え、地域景観の低下が懸念 |
|---|---|
| 対応策 | 蔵バンクの創設、空き蔵・空き家の仲介、商家の改修 |
| 事業主体 | NPO法人伊勢河崎まちづくり衆 |
| 成果 | 喫茶店・美容院・資料館など多用途で再生。観光客の回遊も増加 |
伊勢市の河崎地区には、古い蔵や商家が多く残っています。NPOは歴史的価値に注目し、所有者へアンケートを実施して貸し出しの意向を確認しました。次に、貸し出しOKの所有者と利用を希望する人とのマッチングの場をつくり、改修にも関わっています。
こうした流れから、蔵を使ったカフェや資料館が生まれました。人が立ち寄る場所が増え、地区の雰囲気が明るくなった点も大きな成果です。
企業による空き家ビジネスの成功事例
企業が関わる空き家活用は、社会課題の解決に加えて「採算性」も求められます。空き家を資産として捉え、流通・改修・運営といった多様な角度から事業化する動きが広がっています。
ここでは、ビジネス価値と地域貢献を両立した3つの事例を紹介します。
全国の空き家を「探せる・買える仕組み」に変えた事例(ふるさと情報館)
| 課題 | 地方に空き家は多いのに、買いたい人が探しにくい |
|---|---|
| 対応策 | 全国の空き家をデータベース化し、会員向けに紹介 |
| 事業主体 | ふるさと情報館(株式会社ラーバン) |
| 成果 | 毎年約350件が成約し、空き家流通を拡大 |
この取り組みは、空き家を「見つけにくい」という根本的な課題に対して、企業が全国から物件情報を集め、会員に紹介する仕組みを作ったものです。
買いたい人がスムーズに探せるようになり、移住者や二拠点生活を望む人の選択肢が広がりました。媒介手数料が企業の収益となり、継続的に成約件数が出ている点でビジネスとしても安定性があります。
参照:
参考資料3)空き家の活用事例|国土交通省
ふるさと情報館
空き家を買い取り、修復し、店舗として再生した事例(岩瀬まちづくり株式会社)
| 課題 | 古い街並みの空き家が増え、景観が低下 |
|---|---|
| 対応策 | 空き家を企業が買い取り、自社で改修して貸し出す |
| 主体 | 岩瀬まちづくり株式会社 |
| 成果 | 飲食店や工房が入居。観光客が増え、地域に利益が生まれる |
この企業は「空き家の持ち主が修復できないなら、企業が買い取って再生する」というアプローチを取りました。歴史的建物を丁寧に改修し、喫茶店・ガラス工房・物販店など多様なテナントを誘致。
空き家が商業施設へ変わることで収益が生まれ、それがさらに街の回遊性向上や観光客増につながる仕組みができています。
高山市で商店街の空き店舗対策を進めた事例(すみれリビング株式会社)
| 課題 | 商店街の高齢化により、将来的な空き店舗増加が懸念された |
|---|---|
| 対応策 | インキュベーション施設の設置、空き店舗・事業承継調査の実施 |
| 主体 | すみれリビング株式会社(連携:岐阜県高山市) |
| 成果 | 現状を把握でき、若い世代の関心と参加が進んだ |
商店街の将来的な空き店舗化を見据え、地域の実態を早期に把握するための調査を行った事例です。
高校生が活動できるインキュベーション施設を設けたことで、若い世代が商店街に関わるきっかけが生まれました。
調査結果は商店街や市とも共有され、課題を共有しながら次の対策に向けた協力体制が整った点が特徴です。
海外の空き家対策の成功事例
欧州では、空き家の発生規模や建物の特性が国や地域によって大きく異なるため、課題に応じた多様な対策が展開されています。
ここでは、住宅不足と空き家問題をあわせて解消するための先進的な取り組みを2つ紹介します。
宗教施設を住宅へ転用し、弱い立場の人の住まいを確保した事例(ベルギー・ベツレヘムプロジェクト)
| 課題 | 宗教施設の空洞化と、住宅を確保しにくい層の増加 |
|---|---|
| 対応策 | 空き修道院・教会を住宅へ転用し、支援付き住まいとして提供 |
| 主体 | 地域NPO・行政機関 |
| 成果 | 住まいを必要とする人の受け皿を創出し、歴史的建物の保存にも寄与 |
ベルギーでは、使用されなくなった宗教施設を改修し、住まいに困窮する人へ提供する「Bethléem project」が実施されているそうです。
教会や修道院は耐久性が高く、共用スペースを生かしたコミュニティ形成がしやすい点が利点です。
生活支援サービスも併設され、住まいの確保が難しい人が地域に留まりながら再出発しやすい環境が整えられました。
参照:Bethléem Project (Belgium, 2006-present) | Arena Housing Knowledge Base
商業ビルの上層階を住宅へ転用するプログラム(アイルランド・ダブリン市)
| 課題 | 商業地での空きフロア増加と、若年層の住宅不足 |
|---|---|
| 対応策 | 商業ビル上層階を社会住宅へ改修(Adaptive Reuse Program) |
| 主体 | ダブリン市 |
| 成果 | 空き床の利活用が進み、若者・単身者向けの住まいが増加 |
ダブリン市は、商業ビルの空き上層階を社会住宅へ転換する取り組みを進めています。
Capel Street などの事例では、店舗部分は営業を維持しつつ、上階のみを住戸に改修することで、都市中心部の限られた土地を有効に使っています。若者や単身者が暮らしやすい住戸が増え、商業エリアの活気維持にもつながっています。
参照:Adaptive Reuse | Dublin City Council
個人でできる空き家対策・できること
空き家の活用方法には多くの選択肢がありますが、まず大切なのは「放置しないこと」です。
特別な知識や費用がなくても、個人が日常の延長で取り組める対策はいくつもあります。
ここでは、将来のトラブルを避けるために、早い段階から進めておきたい3つのポイントを紹介します。
将来の扱いについて家族で共有しておく
空き家に関するトラブルの多くは、相続後に「誰が管理するのか」「売るのか貸すのか」などの方針が決まらないまま時間が経つことで生まれます。
所有者の意向が家族に共有されていないと、相続の手続きや管理の役割分担が進まず、建物の劣化が早まる可能性があります。
どのように使いたいか、将来売却する可能性はあるかなど、あいまいな部分を早めに話し合っておくことが、無用なトラブルの予防につながります。
建物を適切に管理し状態を維持する
空き家を所有している場合、定期的に管理する必要があります。
最低限の清掃や換気、庭木の手入れを続けるだけでも、建物内部の傷み方は大きく変わります。外から見える範囲が荒れていると、近隣から苦情が寄せられたり、不法侵入のリスクが高まったりします。
また、管理不足が続くと、自治体から「特定空家」と判断されることがあります。これは、倒壊の危険や衛生上の問題があると認められた状態を指し、指導や勧告の対象になる場合があります。
最終的には固定資産税の軽減措置が適用外になる可能性もあるため、状態を維持することは経済面でも重要です。
早い段階で相談先を決めておく
空き家をどう扱うか迷ったとき、いざ相談しようとしても「どこに連絡すればよいのか分からない」という声は多いです。
早いうちから、地元の不動産会社や空き家バンク、または自治体の窓口など、状況に応じて相談できる先を把握しておくと安心です。
専門家に相談すると、建物の状態や立地に応じて「どのような選択肢があるか」を整理しやすくなります。判断に迷ったときに頼れる場所があると、行動のハードルが下がり、放置につながるリスクも減らせるでしょう。
空き家対策で活用できる補助金・支援制度
空き家の管理や活用を検討するとき、行政の補助金や支援制度を知っているかどうかで選択肢が大きく変わります。
制度の対象は「所有者」「購入者」「民間事業者」「自治体」と幅広く、空き家の状態や目的に応じて利用できる内容が異なります。
ここでは、代表的な制度を一覧で紹介します。
| 制度名 | 内容 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 空き家対策総合支援事業 | 空き家の除却・活用・実態調査・所有者特定に関する支援。除却は最大で国2/5の補助。 | 自治体・所有者 |
| 全国版空き家・空き地バンク | 全国の空き家情報を横断的に検索できる仕組み。自治体への導入支援も含む。 | 自治体・所有者・利用希望者 |
| 安心R住宅制度 | 耐震性・インスペクション実施・改修履歴などの情報が明確な既存住宅として認定。流通を後押し。 | 事業者・購入者 |
| フラット35地域連携型/地方移住支援型 | 自治体の施策と連動して、金利を一定期間引き下げ。空き家取得の支援として活用される。 | 購入者 |
| 相続空き家3,000万円特別控除 | 相続した空き家を一定期間内に売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除。 | 相続人 |
| 住宅セーフティネット制度 | 空き家を登録住宅として活用する際、改修費(最大100万円/戸)や家賃補助の制度を用意。 | 所有者・事業者 |
参照:
国土交通省における空き家対策支援メニュー等(令和2年度末時点)|国土交通省
補助金一覧|東京都 空き家情報サイト|東京都住宅政策本部
除却や改修の費用を補える制度に加え、相続時の控除や空き家バンクの仕組みなど、目的に応じて使えるメニューは多様です。
制度は自治体によって内容や条件が異なるため、空き家の状態や将来の方針を踏まえて早めに確認しておくことが大切です。複数の制度を組み合わせることで、費用負担を抑えながら対策を進めやすくなります。
まとめ
空き家をどう扱うかは、所有者にとって大きな悩みです。
本記事では、自治体や企業の事例から活用の可能性を見てきましたが、個人が向き合う際に大切なのは「放置しない」という姿勢です。小さな行動が、将来のトラブルを避ける確かな1歩になります。
一方で、活用を前提に考える必要はありません。状態の維持が難しい、遠方で管理できない、相続後の負担が大きいと感じる場合は、売却という選択も現実的な解決策です。
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