中古住宅のインスペクションが義務化されました。しかし、そもそもインスペクションとは何でしょうか。義務化されたとはいえ、まだ世間一般にインスペクションは浸透していません。ここでの説明はインスペクションの基本事項や義務化された内容です。また、インスペクションの持つ多くのメリットの説明をします。日本に導入されてまだ日の浅いインスペクションをより深く知りましょう。
インスペクション(ホームインスペクション)とは
そもそもインスペクションとは何でしょうか。不動産業界では建物診断のことをインスペクションと言っています。インスペクションを行うのは、建築や設計の専門家。専門家による診断なのです。もともとインスペクションは調査、監査、査察といった詳細な調査、といった意味があります。大きな会社にいる監査役もインスペクターとも言うのです。
中古住宅のインスペクション義務化
2018年から中古住宅のインスペクションが義務化されました。とはいえ、それはインスペクションを行なうことが義務化されたわけではありません。インスペクションを行なったかどうかなどの情報を説明することが義務となったのです。この義務化によって不動産業界の中でもマイナーな存在だったインスペクションが一躍有名になりました。ここでは義務の内容、実際にインスペクションを行なう場合の価格相場、そして国土交通省によって策定されたインスペクションのガイドラインについて見ていきます。
義務化された内容
義務化された内容は以下のとおりです。
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①インスペクションについての説明
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②インスペクションが実施済なら、その結果
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③売主や買主が建物の状況を書面で説明を受ける
インスペクションがどんなものなのか、売買対象の建物でインスペクションが実施されたのか、そして建物の状況が今どのようになっているのか、といったことが告知義務となりました。インスペクションや建物についての基本事項を説明する必要が生じたのです。
インスペクションの相場
インスペクションの相場は業者にもよりますが、およそ5万円から10万円程度です。これを高いとみるか、安いと見るかは判断が分かれます。ただ、専門家による公正な調査で安心が変えると考えると安いと考えることも可能です。
インスペクションのガイドライン
2013年に国土交通省より、インスペクションに関するガイドラインが公表されました。それによると、インスペクションでチェックすべき箇所は次のとおりです。柱や梁などの建物が安全を確保するための箇所や雨漏りを防ぐ部分、腐食しやすい水回りなどを重点的に調査することが求められています。
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①構造耐力上の安全性に問題のある可能性の高いもの
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②雨漏り、水漏れなどが発生している、または発生する可能性の高いもの
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③設備配管に日常生活上支障のある劣化などが生じているもの
インスペクションのメリットとデメリット
売買でも説明することが必須となった、インスペクション。ではインスペクションはどのようなメリットがあり、デメリットがあるのでしょうか。説明が義務化された今でもインスペクションは普及したとは言えません。メリットも多いはずですが、それが伝わっていないことも考えられます。メリットとデメリットの解説です。
インスペクションのメリット
インスペクションのメリットは次のとおりです。
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①第三者のアドバイスがもらえる
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②欠陥住宅購入が未然に防げる
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③入居後のトラブルが減る
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④リフォームの計画がたてやすい
ひとつずつ見ていきます。
第三者のアドバイスがもらえる
専門家からの確かな意見がもらえます。インスペクションを行うのは、建築士をはじめとする専門家です。それもインスペクションの講習を受けないといけません。建築のスペシャリストがさらに講習を受けないとインスペクションはできないのです。こうした専門家からわずかな調査費用でアドバイスがもらえるのは貴重なものとなります。
欠陥住宅購入が未然に防げる
インスペクションは基本的に非破壊検査です。壁を壊して壁の中を見ることはしません。それでも専門家はサーモグラフィや超音波等を駆使して建物の検査をしていきます。こうすると、今実際にある欠陥や将来的に欠陥になりそうな箇所が判明するのです。その住宅の欠陥を購入前に知ることができ、欠陥住宅をつかんでしまうリスクを減らすことができます。
入居後のトラブルが減る
入居後に雨漏りなどの欠陥が見つかると、トラブルに発展します。入居後だと責任の所在が不明確になりやすいため、解決にも時間がかかるのです。インスペクションをしておけばこうしたトラブルを未然に防ぐことができます。トラブルになりそうな箇所が判明するので、その住宅を買わない、または売主の責任で直してもらうことが可能です。
リフォームの計画がたてやすい
インスペクションをすることで修繕すべき場所がわかります。このため、修繕計画も立てやすくなるのです。修繕すべき場所がわかっていれば、修繕費用を貯めておくこともできます。あるいは破損の程度が小さいうちに修繕することも可能です。インスペクションで建物の状態がわかっているからこそ、先回りの修繕をすることができます。
インスペクションのデメリット
一方、デメリットは以下のとおりです。
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①インスペクションをしている間に他の人が購入してしまう可能性
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②費用負担する場合がある
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③不動産業者あっせんの場合、買主に重要事項が報告されない可能性
順次解説します。
インスペクションをしている間に他の人が購入してしまう可能性
人気物件はすぐに売れてしまうのは、不動産でも同じです。インスペクションにはどうしても数週間の時間がかかります。その間に他の買主が買ってしまう可能があるのです。また、人気物件のオーナーはすぐに売れることを見越しているので、インスペクションに非協力的な場合もあります。
費用負担する場合がある
今の日本ではインスペクションを売主負担で行うか、買主負担で行うか決まっていません。このため、買主負担でインスペクションを行う場合もあります。晴れて購入できればよいのですが、欠陥が見つかって購入を見送ることもありえるのです。こうなるとインスペクション費用が無駄になる可能性もあります。
不動産業者あっせんの場合、買主に重要事項が報告されない可能性
あってはならないことですが、インスペクション業者が不動産業者とつながっている場合もあります。本来公正であるべきインスペクションに手心が加えられる可能性も否定できません。インスペクション業者はネットでも検索可能です。できるだけ、自分で見つけましょう。
インスペクションに関する疑問
まだまだ世間一般では「インスペクションって何?」といった状態です。これまでは中古一戸建て住宅を想定してお話ししてきました。ここでは中古一戸建て住宅だけでなく、中古マンションや新築住宅でもインスペクションを活用できることをご紹介します。
中古マンションでもインスペクションはあるの?
中古マンションでもインスペクションはできます。中古マンションのインスペクションは専有部分にとどまりません。マンション自体の玄関や廊下などの共用部分も調査してくれます。マンションの場合は、居室だけでなく共用部分の状態も評価につながるものです。積立金が不足して修繕できないマンションもあります。専門家に共用部分まで見てもらえるは心強いものです。
新築住宅でもインスペクションはあるの?
新築住宅でもインスペクションはできます。また、建築中の住宅こそ、インスペクションは威力を発揮するのです。建築中であれば手直しが容易にできます。中古住宅では見えない壁の中も建築中なら見ることが可能です。隠れてしまう場所が見えること、手直しが容易なことは新築住宅のインスペクションの大きなメリットになります。
まとめ
日本では導入されて日が浅いインスペクション。まだ普及していないのが実態です。インスペクションにはここでご紹介したような多くのメリットがあります。購入するにあたって、建物の状態をきちんと知っておくのは大事なことです。ここで勉強したインスペクションをぜひ活用していきましょう。