普段はあまり意識をすることの少ない、土地の境界線。しかし、いざ売買や分筆(土地を分けること)を行う際には重要な確認事項となります。さらに、境界線があいまいだったために相続などで所有者が変わった後、隣地所有者とトラブルとなることも。このような問題を避けるためにも土地の境界線について知っておきましょう。
目次
土地の境界線に関するトラブルは少なくない
本来土地は一続きのものですが、わたしたちはそれを区分し隣り合い所有し合って生活しています。こうして細分化された土地はめいっぱい使用したいものですが、そのため建物の増改築や塀の建て替えなどをきっかけとして互いの所有権を主張して隣地所有者間で緊張状態になってしまうことがあります。
- 隣家の塀が自分の土地に建っていた
- 使用している土地が隣家の土地だと言われた
- 土地の相続をする際に、相続人が分割線に関してもめる
- 建物の壁、庇が越境している
境界標という土地の境界を示す印がない、紛失しまったことで境界があいまいになり、所有権の主張の食い違いが発生してしまいます。
土地の境界線は2種類ある
紛らわしいことに、土地の境界には2種類の意味があります。
筆界の概要
筆界とは不動産登記された一筆の土地の範囲を言います。法律で定められた境界のため「公法上の境界」とも言われます。法務局に備え付けられている図面で確認することができ、地番と一致します。これは国のみが定められるものであり、性質上客観的に定まっており、関係当事者の合意によって決まるものではないとされています。
「筆界 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう」
(不動産登記法第123条第1号)
所有境界の概要
所有境界とは所有者間の合意に基づいて決まります。この合意は私法上の契約であり、そのため「私法上の境界」とも言います。普段生活をしていて意識している「境界」はこちらを指して用いられる場合があります。その他土地を占有していることから「占有界」とも言います。
通常 、筆界と所有境界は一致しています。しかし、所有境界は登記をした後に時効取得(※)や譲渡、所有者間の合意によって所有境界が変動し筆界と一致しなくなってしまうケースがあります。また、筆界を定める境界標が工事や地震によってずれたり、失われてしまったりすることもあります。こうした筆界と所有境界の不一致により正しい境界をめぐってトラブルが発生してしまうケースがあるのです。
※所有の意思をもって平穏かつ公然と10年または20年不動産を占有することで所有権を主張できる。
土地の境界線に関するトラブルを防止するには
では、土地の境界線のトラブルを防止し安心して売買、相続を行うためにはどうしたらよいのでしょうか。
正しい境界線を確定させるには“境界確定測量”
境界確定測量とは、土地の境界標を隣地の所有者と確認し、境界線を確定させるための測量です。境界確定測量を行うことで、隣地所有者と土地の境界線についてトラブルにならずに済み、相続する際に相続人同士のトラブルを防ぐことに繋がります。境界確定測量は土地家屋調査士に依頼します。
その詳細については、確定測量の関連記事からご覧ください。
正しい境界を確認するには“境界確認書”
境界確認書(または境界協定書)とは隣地所有者との間で境界の位置がどこであるか、そして争いがないことを相互に確認し取り交わす文書です。
境界確認書を取り交わすことで、相互に正しい境界線を把握し、境界線に関するトラブルを防ぐことが可能になります。また、将来的に相続や売却したのちにも効力が引き継がれるよう記載することで安心して土地を譲ることができるのです。
このような境界確認書は登記記録の土地面積を修正する際や境界確認協議申請の際などに必要となる他、土地の売却時にも隣地との境界に問題がないことを明らかにするためにも作成されます。
“筆界特定制度”を活用する手もある
筆界特定制度とは、筆界に争いがあった際に利用できる筆界特定登記官によって筆界特定を行う制度です。土地の所有名義人などが申請可能です。行政処分ではありません(法的拘束力はない)が、専門家が関与することで紛争当事者がこの結果を尊重し解決に至ることが期待されています。
境界確定測量は建物を新たに建てるときや売却、相続の際に境界を確定するため個人の都合で行いますが、筆界特定制度は隣地所有者間の紛争解決のために設けられた制度です。
筆界特定制度を用いるメリットは、申請人は申請手数料のほか測量が必要となった場合の測量費用のみの負担で済むことです。裁判手続きではなく行政手続きとして行えることで、筆界についての適正な判断を迅速に示し、筆界をめぐる紛争を早期に解決することが可能になります。
このような紛争解決のための手段として土地家屋調査士が設置し弁護士が協力して行う民間の機関が存在します。これを民間型ADRと言い、ADRとは裁判外紛争処理機関という意味です。
塀を設置する際のポイント
境界に塀を設けることは一般的に行われており、特に共同で塀を設置することに関しては「囲障設置権(いしょうせっちけん)」といい隣地所有者に境界線上に共同で塀を設置することを要求する権利があります。塀の設置はプライバシーと敷地内の安全のために協力義務として認められているのです。
まず、塀の設置場所について隣地の方と話し合い、以下の2つの方法が考えられます。
隣地所有者と共同で壁を設置する
塀を共同で出資する場合、境界線の中心の通るように設置します。デザイン性や材質、費用、依頼する業者について協議する必要があるため手間がかかります。また、協議が整わない場合は民法で定められているものにならうこともできるでしょう。その他自治体や地域の慣習がある場合はそれに従います。
- 1.二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。
- 2.当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ二メートルのものでなければならない。
(民法225条)
その後の修繕やメンテナンスについても平等で分担するため、随時話し合い隣地所有者と良好な関係を保つことが重要です。
自分の土地に塀を設置する
自分の土地に自分の費用で建てる場合、壁の所有権は自分のものとなります。工事で隣地に立ち入る必要のある場合は事前に了承を得て、良好なご近所づきあいを保ちましょう。
こうして設置した壁がもし倒壊し通行人に被害が及んだ際は、壁の占有者・所有者が損害賠償の責任を負うこととなります。つまり共同で設置をした場合は共同で、単独で設置した場合は単独で責任を負うこととなるのです。
トラブルを避けるためにも、境界は明確に
境界は、地価が高いエリアでは少しのずれが評価額に大きな影響を与えたり、敷地面積と建築基準法の関係で希望する建物が建てられなくなってしまうケースもあり、非常に神経質になりがちな部分です。ご近所との良好な関係を保ちつつ、自分や家族が幸せに暮らし、将来に禍根を残さないためにも境界を明確にしておくことが大切です。
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