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近年日本各地で地震や台風といった災害が相次いでいます。直接は大きな被害を受けなかった地域であっても停電によって長期間不便な生活を強いられるという事態が発生しました。現代の生活において電気が使えない状態は照明や家電が使えないだけでなく、スマホの充電ができずに情報を得られない、連絡手段がなくなることに繋がり大きな不安となることでしょう。この機に防災対策として家庭用蓄電池や発電機を検討された方も多いのではないでしょうか。
また、2020年末に政府が「2030年ガソリン車禁止」を打ち出したことで家庭にて使用する電気の重要性はさらに高まりつつあります。あったら安心、でも費用が掛かるし、どんな設備がいいのかよくわからない。そんな自家発電設備について解説します。
自家発電とは
「自家発電」とは、電力会社からの電力供給の有る無しに関わらず、消費者(家庭や企業など)が何らかの発電設備を用いて自ら発電を行うことを指します。近年、省エネルギーと非常時のレジリエンス(強靭性の意味。供給のエネルギーに頼らず自立して生活できること)強化の面で注目されつつあり、自家発電の価値はさらに高まりつつあります。
自家発電設備といっても、常に稼働させ電力を利用する「常用」と、停電など非常時に予備電源として用いる「非常用」に分けることができます。次の章では住宅の自家発電装置として導入されることの多い「太陽光発電」、ガスから電気と湯を生み出す「燃料電池(エネファームなど)」について主に解説していきます。これらの自家発電装置は非常時にも電源として使用できますが、日常的に発電することが目的の発電装置です。
自家発電を導入するメリット・デメリット
災害時などのインフラ停止に備え注目されはじめた自家発電設備ですが、災害対策以外にどのようなメリットがあるのでしょうか。また、デメリットはどのようなものがあるのでしょう。具体的に見ていきましょう。
メリット
まずは自家発電を導入するメリットをご紹介します。
光熱費カット
非常時だけでなく日常的に利用できる太陽光発電システムとエネファーム。これらを使用することで光熱費カットが期待できます。太陽光発電は再生可能エネルギーである太陽光によって発電を行うため、発電にかかる費用は0円です。エネファームはガスで発電を行い家庭での電力消費の多くを賄うため、電気使用量が少なく済みます。いずれにしても電気料金を節約することが期待できるでしょう。
しかし、導入時にかかる費用が高額なため、家族構成や環境によって必ずしもお得になるとは限らないという面もあります。日々の使用でどの程度お得になるかを予め計算し、ガスや電力の契約もそれぞれの状況に適したものを選択しましょう。
災害時に役に立つ
2018年の熊本地震では電気の復旧までに4日間を要しました。また、2019年に千葉を襲った台風15号では千葉の全域に停電が発生し、20日を経過しても復旧しないエリアがありました。
災害は突然やってきます。自家発電を導入する大きいメリットは災害時に電気を使用できるという点なのではないでしょうか。家で発電ができれば、災害などで停電が続いた際も電源を確保できます。このような災害時のレジリエンス強化はZEH+Rの基準としても定められています。
しかし機器によっては停電すると使用できないため、導入時には災害時に使用したいことを業者に相談し仕様をよく確認しましょう。
電気自動車との相性が良い
太陽光発電で生み出した電気は電気自動車の充電に使うことができます。電気自動車の電気を太陽光ですべて賄うことができれば、環境に優しい上に自動車の燃料費を節約することができます。さらに、後述しますが電気自動車を蓄電池として使用することが可能となり、停電時の電源として使用できます。
余った電気は売れる
太陽光発電におけるメリットです。電力会社と売電契約をすれば余剰電力を売電でき、副収入となります。ただし、近年売電価格は徐々に下落しているため、自家消費をメインに考えてもよいでしょう。日中の余剰電力を蓄電池に貯め夜間に使用する、エコキュート(ヒートポンプ技術を利用し電気でお湯を沸かす設備)で「お湯」として蓄えるといった方法があります。
しかし、太陽光発電の売電価格が下がっているからと言って、今から始めるのが損というわけではなく、以前は導入費用が高額だったため導入補助の意味で高価格な買取り(FIT制度)が行われていたのだと考えましょう。
デメリット
では、デメリットはどのようなもので、導入時にはどこに気を付けたらよいのでしょうか。
電気の容量が限られている
発電した電気は蓄電池なしには貯めておくことができません。そのため、日中太陽光で発電した電気は発電時に使用するか、夜間使用するためには蓄電池に貯めるなどをしておかなければなりません。
この蓄電池は無限に電気を貯められるわけではなく、容量の上限があります。自家発電だけに頼って電力を使用するには蓄電池の容量によって上限が決められる面があります。さらに、蓄電池は容量が大きくなるにつれて高価になるため、導入時には闇雲に大容量の蓄電池を購入するのではなく、電気を使う時間帯やどれくらいの電力が必要になるかを予め検討しましょう。
また、災害時に非常用電源として使用する際も使いたい家電をリストアップして必要な容量を選ぶと良いでしょう。例えば、照明100W、冷蔵庫300W、スマホ充電10Wの場合、合計410Wを24時間使いたい場合410W×24時間=9.84kWhの容量が必要となります。
設置できる家が限られる
太陽光発電は屋根など日照が確保できる場所と、それに加えて発電した電気を調整するコンバーター、さらにエネファームを導入する場合は1.1㎡程度の屋外スペースが必要となります。また、蓄電池は直射日光が当たると危険なため場所を選びます。
マンションでは太陽光発電の大きなパネルの設置は難しいでしょう。エネファームはマンションなどの集合住宅でも共用廊下やバルコニーなどに設置が可能です。管理組合に事前に確認を行いましょう。
メンテナンス費用が必要
普段電気を使用する際に設備のメンテナンスを意識することはありませんが、太陽光発電やエネファームは継続して発電を行うために定期的な点検が必要です。蓄電池も合わせて使う場合は充放電回数に限度があるため、いずれ交換が必要になります。
いざという時にきちんと動作できるようにも、普段から気を付けなくてはいけません。
壊れることもある
太陽光発電は屋外にパネルを設置するため台風の影響で破損する可能性があります。さらに、可燃物のため、システム周辺の出火や火災には十分に気を付けなければなりません。
住宅用火災保険の補償範囲に含め、いざというときに対処できるようにしましょう。
また、太陽光パネルを設置した際に屋根の防水層に穴をあけてしまい雨漏りが発生するトラブルがあります。施工レベルが信頼できる業者に依頼しましょう。
自家発電設備の種類と費用
太陽光発電、エネファームを中心に話を進めてきましたが、自家発電設備には他にも種類があります。日常的に発電した電力を使うのか、非常時のみ発電するのかで適した設備は変わります。必要な発電量や費用、目的に合わせて選びましょう。
太陽光発電
屋根など陽当たりのよい場所に太陽光パネルを設置し、太陽光で発電します。発電した電気はそのままでは使えず、パワーコンディショナーという装置で家庭用に使用できる電力に変換します。太陽光を利用するため日中しか発電ができず、夜間や雨天に電気を利用したい場合は電力会社の供給する電力を使用するか、日中に発電した電気を蓄電池に貯めておく必要があります。
太陽光パネル設置の費用は1kwあたり25万円程度で、全国的な平均積載量は4.5kw程度と120万円程度が導入費用の目安となっています。蓄電池の購入も含めると費用はさらに高額になります。
家庭用燃料電池
家庭用燃料電池は「エネファーム」という愛称で呼ばれ、Panasonic、京セラ、アイシン精機から発売されています。ガスを利用し、水素と空気中の酸素を化学反応させることによって発電し、その際に発生する熱を利用し給湯も行う一石二鳥の装置です。停電時に動作させたい場合は停電時自立運転機能があるものを選びましょう。
価格はメーカーや機器によっても異なりますが、本体価格で100~200万円程度となっており、さらに設置工事費用がかかります。
風力発電
家庭用の発電装置としては一般的ではありませんが、企業では風力発電を常用自家発電設備としているところがあります。郊外に立ち並ぶ巨大な風力発電機を目にした方もいらっしゃるでしょう。
家庭用はというと庭先に設置できるような小型の風力発電機が発売されており、数万円からの安価なものもあります。しかし、発電量は数十W程度と大きくはなく、家電を動作させることを考えると何基も設置しなければならないためコストパフォーマンスは良くないと言えるでしょう。
ここからは、災害などで停電が発生し発電をおこなう際の手段である非常用自家発電機をご紹介します。規模にもよりますが太陽光発電やエネファームよりも比較的安価に導入することが可能です。
手動式発電機
人力で発電を行う装置です。手でハンドルを回す、自転車の要領でペダルをこぐなどがあります。燃料は不要ですが発電量は多くはなく、ラジオやスマホの充電など小さい機器の電源向きです。価格は数千円から数万円程度で購入することができます。
エンジン発電機
自動車のエンジンと同じくガソリンを燃料とし発電します。発電量が大きいため、冷蔵庫やエアコンを動かすことも可能です。小型のものは持ち運びができるため、屋外のイベントなどの電源としても活躍します。発電できる量にもよりますが、小型で安価なものでは3万円程度から購入することができます。燃料のガソリンの匂いや保管方法、騒音が懸念点となりますが、カセットボンベで稼働させるお手軽なものも発売されています。
続いて、発電設備ではないが非常用の電源として使用できるシステムをご紹介します。
蓄電池代わりになる電気自動車
非常時に電源を確保するという点では、電気自動車も候補に挙げられます。本来であれば、家庭用電源などから電気自動車へ充電を行いますが、専用の設備を導入することで電気自動車に蓄えられた電気を住宅で利用することが可能になります。このように電気自動車に貯めた電力を住宅で使用するシステムをV2H(Vehicle to Homeの略)といいます。
一般的な家庭用蓄電池よりも電気自動車の方が大容量で高性能なこともメリットの一つです。しかし、電気自動車であっても車種によってV2Hに対応していないことがあるため、購入時には確認を。
太陽光発電 | 燃料電池 (エネファーム) |
風力発電 | 手動式発電機 | エンジン発電機 |
常用自家発電装置 | 非常用電源 | |||
120万円程度~ | 100~200万円+設置費用 | 3万円程度~ | 数千円~ | 3万円程度~ |
パネルの積載量、日照による 平均積載量は4.5kw |
電気と一緒に湯をつくる 停電時発電機能付き機器がある |
数十W 風速次第 |
15W~体力次第 小型の機器向け |
種類が豊富 目的に合わせて |
自家発電の消費と売却
自家発電した電気は自家消費することもできますし、売電契約をすれば電力会社に売電することも可能です。売電を行う場合は自家発電分をすべて売電する、自家消費しきれなかった電力、つまり余剰電力を売る2パターンがあります。
自家消費のメリット・デメリット
売電をせず、発電した電力をすべて自宅で消費する場合のメリット・デメリットを解説します。
ます、メリットです。自家消費をするのであれば電力会社との煩雑な売電契約や、卒FIT後の売電価格の下落などに頭を悩ませる必要がありません。
一方で、太陽光や風力に頼った発電は天候に左右されるところが大きく、特に太陽光発電は夜間に発電できません。この点は自家消費を自家発電の電力に頼る上ではデメリットとなります。デメリットを補完するために蓄電池を導入するにしてもロスは約20%とも言われ、日中の発電量と夜間の消費量のバランスに配慮が必要です。
売却のメリット・デメリット
自家発電した電気を売却するメリットは、ずばり副収入を得られるということでしょう。しかし、年々電気の買取り金額は下落しており、2021年のFIT買取り価格は19円/kWh、2022年度はさらに下がり17円/kWhに(いずれも税込み)。電力会社から購入する電気料金のほうが割高な可能性もあります。売電金額で導入費用の元をとろうと考えるよりも、自家発電によってお得になった光熱費に焦点を当ててみましょう。
売電価格に関しては、関連記事にてより詳細に紹介しています。
住宅のエネルギー計画は自分に合ったものを
自家発電設備を導入することによって、停電時にも電気が使用できるようになり大きなメリットとなります。しかし、日常的に使用することになる太陽光発電、家庭用燃料電池エネファームは日頃の光熱費にも大きく関わる上、導入費用も高額なため、自分のライフスタイルや住居の環境に合った使い方で損をしないかをよく検討することが重要です。電気設備は複雑な為、導入時にはオール電化にするのか、ガス併用なのかなど、どのように利用したいのかを専門家に相談し、メリット・デメリットをよく確認しましょう。
ナカジツの新築住宅は太陽光発電と相性のよいオール電化
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