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日本は災害大国と称される程多くの自然災害のリスクを抱えており、特に地震とは切っても切れない関係となっています。
こうした自然災害時でも、電力を継続して供給するための非常用電源として、家庭用蓄電池を導入する家庭が増えてきています。
家庭用蓄電池は、太陽光発電を導入し余剰電力を高額で買い取る固定価格買取制度が満了する家庭がでてきたことにより、発電した電気を自宅で消費し活用するための補助ツールとしても注目されている存在です。
これからの生活に必要となるかもしれない蓄電池。なんとなくご存知だった方も、初めて存在を認知した方も、知識を深めて選択肢の数を増やしていきましょう。
目次
住宅用蓄電池とは
蓄電池とは、容量の大きな電池のようなものです。バッテリー部分に電気を貯めておいて、好きな時に貯め、好きなタイミングで使用することができます。
災害時の非常用電源として活用できるため、近年必要性が高まっているアイテムなのです。
住宅用太陽光発電は設置してから10年間、【固定買取制度(FIT制度)】によって、高価格(FIT価格)での売電が確約されています。
しかしながら、この高価格売電期間が終了(卒FIT)して固定買取制度適用外となると、電気の売電価格は大幅に値下がりしてしまいます。
そのため、電気の売電価格よりも電力会社から購入する電気の方が割高になるので、蓄電池を導入して、たくさん自家消費をしたほうがお得に電気を使うことができます。
2009年からスタートしたFIT制度は、2019年11月に10年が経過したため、卒FITする家庭が続々と増えてきました。
卒FIT後も太陽光発電の余剰電力を有効活用するにあたり、この家庭用蓄電池が注目を集めているという訳です。
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家庭用蓄電池には、主に以下の4種類が存在しています。
●リチウムイオン電池
現在主流となっているのが、このリチウムイオン電池。
携帯のバッテリーや家庭用蓄電池など幅広く利用されており、現在最も注目されている蓄電池と言えるでしょう。
現在はさらなる大容量化に向けた開発やバッテリー寿命の長期化が進められていて、今後の需要拡大による市場価格の低下が期待されています。
保存状態や充放電回数によってはバッテリー寿命が著しく劣化する恐れがありますが、一般的に販売メーカーにて蓄電容量の長期保証がついている場合がほとんどです。
保証期間内であれば、蓄電容量が一定基準値を下回ってしまっても蓄電池内の電池モジュールを交換することができるので、安心して利用することができます。
●鉛蓄電池
鉛蓄電池は、現在も自動車のバッテリーや非常用バックアップ電源として使用され続けている蓄電池です。
蓄電池の中では最も長寿命で、サイクル回数で3150回、使用期間に換算すれば約17年間も使用することが可能と言われています。
そして、充放電の回数は劣化に影響することがありません。
この使用寿命を維持しながら使用するためには、電力を全て使い切ってしまったり、バッテリーに定められている放電終止電圧を下回る状態(過放電)にならないようにすること、使用後は早急な充電を徹底することが大切です。
●ニッケル水素電池
リチウムイオン電池が登場してからというもの、活躍の場は大きく減りましたが、今でも乾電池タイプの蓄電池をはじめとして、ハイブリッド車のバッテリーや鉄道、モノレールの地上蓄電設備などの用途で使用されている電池です。
バッテリー寿命はサイクル回数約2000回、使用期間に換算すると5年~7年と、蓄電池の中では最も儚い命……。
高温環境下での使用、大電流充電による電池温度の上昇など、外的要因に弱く影響されやすいので、気付かない間に寿命を縮めてしまっている場合が多くあります。
●NAS電池
日本ガイシ株式会社が東京電力と共同で研究・開発した、世界初のメガワット級の電力貯蔵を可能にした蓄電池が、NAS電池です。
独自の高度なセラミック技術を用いているため、量産を維持できるのは日本ガイシのみ。
蓄電池の中でも使用環境や使用状況による影響が少なく、バッテリーの最大サイクル回数は約4500回、使用期間に換算すると15年と、鉛蓄電池と勝るとも劣らない長寿命であるにも関わらず、その大きさは鉛電池の約3分の1と非常にスリム。
このコンパクトなサイズでの高出力と、長時間の電力貯蔵ができる点が最大の特徴でしょう。
硫黄とナトリウムイオンの化学反応で繰り返し充放電します。
作動温度を300度に維持しなければならないことや、危険物指定されている物質を使用しているため、安全対策や事故発生時の対策が重要な課題となってきます。
住宅用蓄電池のメリットとデメリット
ここまで家庭用蓄電池の概要についてお話してきましたが、メリットやデメリットの視点からも、より深く蓄電池について理解していきましょう。
メリット
電気代を安くできる
電力会社との契約プランを時間帯別電灯と呼ばれる種類の電気料金プランに変更すると、
電気使用が一般的にほとんどない夜間の時間帯の電気料金が驚く程安く設定されています。
この時間帯に蓄電池に電気を貯めておいて、日中に貯めた電気を使うことで日々の電気料金を安くすることが可能となります。
停電時に活用できる
電気は暮らしを守るための、必要不可欠なライフラインです。
大きな震災や災害などが原因で、長期間電気が使用できない状況下に置かれることは、できるだけ避けたいのが本音ですよね。
事前に非常事態に備えて蓄電池を準備しておけば、停電時でも対応可能な強い家にパワーアップ!
家庭用蓄電池のスペックにもよりますが、一般的なタイプでは約12時間から17時間は蓄電池に貯めた電力だけで通常の生活を送ることが可能となるのです。
最大でどのくらいの電気をどれだけの時間使うことが出来るか、事前に調べておくと良いでしょう。
太陽光発電と組み合わせると良い
太陽光パネルと一緒に蓄電池を導入し、蓄電池に貯めた電力を自家消費することで、電力会社から供給される電気の使用量を減らすことができます。
その結果、電気料金が安くなるので、とってもお得に生活ができるようになるのです。
そして災害時であっても、太陽光発電システムがまだ生きているならば、太陽光で発生した電力を随時蓄電池に充電して復旧を待つ、ということも可能に。
暗がりの中、いつ消えるとも分からないろうそくや懐中電灯の小さな灯りを頼りながら、心細く過ごすことはなくなるかもしれないのです。
デメリット
購入費が高い
経済産業省のデータによると、2015年度の家庭用蓄電池の価格は、平均が約22万円/kWh
目標価格は、2019年度で13.5万円/kWh、2020年度には、9万円/kWhとなっています。
容量が小さい4kWhでも約90万円、さらに大きな容量を求めれば100万円や200万円を超え、政府がいくら自家消費を推進しているとはいえ、とても気軽に手が出せる金額ではありません。
しかしながら、企業努力や補助金によってお安く導入できる可能性がありますので、真剣に導入をお考えの方は、購入時期を見計らうことも大切です。
※ kWh(キロワットアワー):太陽光発電システムを1時間(h)発電し続けた時の発電量。1kW=1,000W。
設置スペースが必要
蓄電池には、屋内に設置できるタイプと、屋外に設置するタイプの2種類が存在します。
屋内型の小型のものでもエアコンの室外機程のサイズで、重量は50kgから160kgとなり、小型でもしっかりとした重みがあります。
これが屋外型のものになると、サイズ感はエアコンの室外機約2基分、重量も100kgから270kg……最大でライオン1頭分と考えると、頭をもたげてしまいそうな重量感です。
そして屋外型蓄電池の場合、設置するには『直射日光が当たらないこと』『高温多湿でないこと』『重塩害地域でないこと』などいくつかの条件を満たす必要性があります。
屋内型の場合は設置する環境面での配慮はそれほどありませんが、稼働時は若干の運転音が発生します(約35~40db以下)。
寝室や勉強部屋など騒音が気になってしまう場所に設置することは避けた方がいいかもしれません。
また、消防法や火災予防条例の規制を受けるため、設置場所にて機械のサイズ+1mの点検スペース確保が必要となります。
購入後、スペースが足りず設置ができない事態とならないよう、事前に設置場所の確認をしておきましょう。
劣化する、充電回数が決まっている
蓄電池の寿命は【サイクル】で表記されます。サイクルとは、充電と放電を1セットとして、何回繰り返すことができるかという回数になります。
保証されているサイクル回数を超えると、徐々に蓄電容量が減っていきます。 家庭用蓄電池でもっとも普及しているリチウムイオン電池は、目安としてサイクル回数で言うと約4,000回、使用期間は約10年間という期間が一般的と言われています。
このサイクル数はメーカーによって異なるため、目安となる回数を各社の製品情報やホームページなどでチェックしてみると良いでしょう。
寿命を迎えると全く使用できなくなるわけではありませんが、蓄電容量は時間経過で確実に減っていき、最終的には電池交換が必要となります。
半永久的に使用できる蓄電池は現状存在していないため、買い替え費用が発生することも頭に入れておく必要があります。
住宅用蓄電池の選び方
蓄電池は、どう使うかによって容量や設置場所が異なり、選ぶ種類も異なってきます。
性能や保証内容なども販売製造メーカーによって特徴があるため、購入時は家庭での使用状況をイメージしながら、下記の選定ポイントを抑えつつ検討していきましょう。
●容量
蓄電容量の大きい家庭用蓄電池のほうが多くの電気を貯めておくことができ、その分停電時も家電を長時間使うことができますが、蓄電容量の大きさに比例するように価格も高くなっていきます。
蓄電池の電力容量が10kWh以上のものを大型、10kWh未満を小型に分類することができます。
家庭での使用を目的とした場合は、停電時にどこまで蓄電池で補って生活するかを考え、自分にとって最適な容量がどのくらいなのかを算出する必要があります。
停電時を想定して使用量を判断する場合は、最も使用電力の多いエアコンを利用したいかどうかを最初に決めるとスムーズです。
また、規定された条件下で蓄えられる電気量(定格容量)と、実際に使用できる電気量(実効容量)が異なっている場合があるため、購入前によく確認しましょう。
●サイクル、寿命
蓄電池には様々な仕様のものがあり、その種類によって充放電の仕組みや、使用時のスペック、寿命も種類によって異なります。
多様な蓄電池の寿命について、一概に言及することは非常に難しいです。
蓄電池の寿命は『サイクル回数』もしくは『使用期間』のどちらかで表記されていて、頻繁に充放電を繰り返さないものは使用期間で記されることが一般的となっています。
面倒であっても、気になるメーカーのもは一つずつ確認していくか、比較サイトを利用するのが得策です。
また、充電は100%満タンにするよりも90%程度で抑えることで、電池への負荷を軽減するだけでなく、過充電を防ぎ安全に利用することができます。
長時間利用する場合、30%程度を残した状態で利用を終了することで、充電時と同様に過放電を防止できます。
どんなタイミングで来るか分からない非常事態。いざという時安心して電気が使えるよう、定期的に保守サービスを利用してメンテナンスを行いましょう。
●タイプ(太陽光発電と連携、スタンドアローン)
蓄電池には、主に下記4つの型が存在します。
そして、停電時の働き方で、さらに下記の2つに分けられます。
≪全負荷型≫
家全体の電力を瞬時にバックアップ、通常時と同様に電気の使用ができるタイプ。200Vに対応したものが多く、充電残量が残っていればエアコンなどの電力量が大きいものも使用できます。
≪特定負荷型≫
事前に選択した特定の家電にだけ電力を供給するタイプで、全負荷型より価格が安く、商品数も多めとなっています。停電時最低限の家電使用を想定している家庭向きです。
●大きさ
蓄電池のデメリット部分でもお伝えしましたが、家庭用蓄電池は想像しているよりも意外と大きな機械です。
蓄電池の大きさは使用目的によって変わるので、本体の設置および、工事などの作業をするための十分なスペースを確保できるのかどうかはもちろんのこと、
希望の蓄電池の蓄電量が現在の生活スペースに見合ったものであるかどうか、しっかり照らし合わせて考える必要がありそうですね。
●メーカーごとの特徴を捉える
一般的に家庭用蓄電池には10年保証が付いてきますが、保証の内容は購入する製造販売メーカーによって異なります。
そして購入する販売店によっても、独自のサービスを展開している場合があります。
10年以上の長期利用となる家庭用蓄電池。サービスや保証内容の詳細、保証期間は、購入前にしっかりとチェックしておきたいポイントとなります。
蓄電池の蓄電容量や放電、充電時間、停電時最大出力などのスペックについても、メーカーによって大きく特徴が異なります。
通常利用したい家電の種類やライフスタイルを再確認しながら、どのように電気を使いたいか考えて購入を検討しましょう。
そして、特定負荷型の蓄電池購入を検討中の場合は、蓄電容量に加え、併せて停電時の出力もチェックしておくことが大切です。
住宅用蓄電池を設置するなら補助金の活用を
住宅を「使うエネルギー≦創るエネルギー」、いわゆるZEH(ゼッチ)にするための蓄電池購入であれば国からの補助金制度の対象となり、蓄電池購入の際に補助金を使うことができます。
既に10kW以下の太陽光発電システムを導入済み、または蓄電池と同時に導入予定の方が対象という条件がありますが、補助金額が最大60万円と大きいため、蓄電池を検討中の方で制度適用が可能な方は、ぜひ検討していただきたい制度となります。
地方自治体単位でも補助金制度が存在している地域があるため、購入前にお住まいの地域に確認してみることをオススメします。
そして、上記の補助金制度と地方自治体の蓄電池補助金制度は、なんと併用が可能!
予算枠が設けられていることや、蓄電池が幅広く普及し、蓄電池自体の価格が低下することによって制度が打ち切られる可能性があるため、
蓄電池の購入に補助金制度利用を検討している場合は、できるだけ早めに導入した方が良さそうです。
補助金の金額は、下記3種類の蓄電池の種類によって異なります。
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・災害時、太陽光発電で発電した電気を優先的に蓄電池に貯め、自家消費を優先するグリーンモードへ切り替えることができる災害対応型
※グリーンモードは定置型蓄電池であればほぼ搭載されているモードになります。
・VPP(各地の蓄電池や太陽光発電といった施設をまとめて活用し、ひとつの発電所のように運営する仮想発電所)に参加し、ECHONET LiteやAIF認証を行い、HEMSなどの機器を経由して監視制御を行うネットワーク型
・VPPに参加して、求められた需給調整に対し素早く柔軟に対応できるシステムを持つ周波数制御型
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経済産業省交付の補助金の資料には、
『経済産業省から補助金の交付決定を通知する前において、発注等を完成させた経費については、補助金の交付対象とはなりません。』
という記載がされているため、蓄電池の購入契約は必ず補助金交付が決定してから締結しましょう。
公募は予定予算に到達した時点で締め切られます。また、申請依頼から補助金の交付まではある程度の時間を必要とするため、早めに申請方法の確認と準備を進めておくといいかもしれませんね。
※ ZEH…ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称。室内環境を快適にすることと、年間で消費する住宅のエネルギー量がおおむねゼロになることを目指す住宅のこと
詳しくはこちら…住む人にも環境にも優しい“ZEH”の家とは
※ ECHONET Lite …さまざまな家電、住宅設備などと相互に通信をするための共通の通信規格
※ AIF認証… ECHONET Liteを使用して通信する場合に付与される認証のこと
※ HEMS…電気の発電量や使用量、ガス・水道の使用量をモニター画面などで「見える化」したり、HEMS対応の家電や住宅設備をコントロールすることができる管理システムのこと
住宅用蓄電池を設置する際はオーナーに相談をする
蓄電池について、これまではあくまで戸建て住宅を想定してお話させて頂きましたが、太陽光発電や蓄電池を賃貸マンションなどの集合住宅に取り入れたい!とお考えの方もいるかもしれません。
蓄電池の設置は壁に穴を開けたり、分電盤の工事が必要になります。退去する際には、入居した時と同じ状態に戻さなければならないことから、太陽光発電システムや蓄電池を設置するのは難しいと言えるでしょう。
蓄電池と工事費用だけでなく、退去時も多くの金額が必要になってしまうため、総合的に考えると節約にはならないかもしれません。
蓄電池の設置に限らず、オーナーに相談なく一方的に壁や床へ手を加えてしまうと、強制退去になってしまうなんてことも考えられます。
どうしても蓄電池を設置したい!という方は、工事不要、ソーラーパネル付きのポータブル蓄電池を検討してみましょう。
日常的な使用となるとどうしても容量の不足感は否めませんが、高額な原状回復工事費用を支払ったり、強制退去となる心配はなくなります。
しっかり備えて安心感ある生活を
これから太陽光発電の導入を考えている人や、卒FITを迎える家庭での蓄電池導入がだんだんと増えている状況で、自宅にも設置すべきかどうか迷う方もいるのではないでしょうか。
蓄電池は決して安い買い物ではありませんが、電気代節約や災害への備えなどの面で大きなメリットがあります。
金額面でお悩みの方は補助金制度を利用してみるのも一つの手段です。
まずはお住まいの市区町村に、補助金制度の有無や公募期間を問い合わせてみることから始めてみてはいかがでしょうか。