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更新日:2026.04.07

認知症の親の不動産を売却する方法。名義変更の必要姓や後見人制度の概要

認知症の親の不動産を売却のアイキャッチ

この記事のポイント

  • 成年後見制度を活用すれば認知症の親の不動産を合法的に売却できる
  • 申立てから売却完了まで通常1年前後・後見人報酬は月2万円〜が目安
  • 意思能力があるうちに家族信託契約をすると裁判所関与なく柔軟に売却できる

「親が認知症かもしれないけれど、この家は売却できるのだろうか?」
「施設に入ることになったら、実家はどうやって処分すればいい?」

親の認知症が疑われる状況で不動産の売却を考えたとき、多くの人が手続きや法律の壁にぶつかります。不動産は大きな資産である一方、所有者本人の意思確認が重視されるため、通常の売却とは進め方が異なります

状況によっては成年後見制度などの仕組みを理解しておくと、手続きの見通しが立ちやすくなります。

この記事では、認知症の親が所有する不動産を売却する際の基本ルールや、成年後見制度などの主な方法、手続きの流れをわかりやすく解説していきます。

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認知症の親の不動産は、原則売却できない

結論、認知症が進行した親は「意思能力」を失っているとみなされるため、本人名義の不動産を通常の手続きで売却することはできません

特別な法的手続きを経ずに売買を進めると、契約自体が無効になるリスクがあります

無断で売却すると罰則も

民法第3条の2は、意思能力を有しない状態でなされた法律行為を無効と定めています。

つまり、認知症の親が署名・押印した売買契約は、後から無効と判断される可能性があるのです。

さらに深刻なのは刑事責任です。本人の同意なく家族が不動産を売却・換金した場合、横領罪(刑法第252条)に問われる可能性があります。日本の刑法には親族間の犯罪について刑を免除する「親族相盗例」がありますが、不動産の横領はこの特例の対象外となるケースがあります。また、民事上も売却代金の返還や損害賠償を請求されるリスクがあります。

不動産取引の現場では、司法書士や宅地建物取引業者が売主の本人確認・意思確認を行う義務を負っています。認知症の疑いがある場合、取引そのものを断られることも少なくありません。

売却を進めるには、後述する成年後見制度などの法的手続きが不可欠です。

出典:

認知症の親の家を売却する方法と制度 認知症の親の家を売却する方法と制度

前章で述べたリスクを回避しながら合法的に売却するには、法律上の制度を活用する必要があります。

主な選択肢は「成年後見制度」「家族信託」「任意後見制度」の3つです。

制度 利用できるタイミング 手続き先 費用目安
成年後見制度 認知症進行後(意思能力喪失後) 家庭裁判所 申立費用約1万円+後見人報酬 月2万円〜
家族信託 認知症発症前(意思能力あり) 公証役場・専門家 初期費用 数十〜100万円程度
任意後見制度 認知症発症前(契約)/発症後(発動) 公証役場・家庭裁判所 後見監督人報酬 月1〜3万円

成年後見制度の利用

成年後見制度は、意思能力を失った親の財産を、家庭裁判所が選任した後見人が管理・処分できる制度です。

申立費用は収入印紙800円分と郵便料が必要で、後見人への報酬は月額2万円が目安とされています(財産額が多い場合は増額されます)。

出典:

また、居住用不動産を売却する際は、家庭裁判所の許可を別途取得する必要があります。許可なしに行った処分は無効となるため、手続きの省略はできません。

専門家(弁護士・司法書士)が後見人に選任されるケースも多く、費用と時間がかかる点がデメリットです。一方、認知症発症後でも利用できる点が最大のメリットです。

出典:

家族信託の利用(認知症前)

家族信託は、本人(委託者)が意思能力のあるうちに信頼できる家族(受託者)へ財産の管理・処分権限を移す契約です。

認知症になった後も受託者の裁量で不動産を売却できます。成年後見制度と異なり裁判所が関与しないため手続きが柔軟で、売却のタイミングや使途を家族が主体的に判断できる点がメリットです。

ただし、本人に意思能力がある段階でしか契約を結べません。「物忘れが増えてきた」と感じたら、早めに専門家へ相談して意思能力の状態を確認することが重要です。

初期費用は専門家報酬を含めると10万〜100万円程度かかります。

任意後見制度の利用(認知症前)

任意後見制度は、本人が元気なうちに将来の後見人(任意後見人)を自分で選び、公正証書で契約しておく制度です。

成年後見制度(法定後見)との最大の違いは、後見人を裁判所ではなく本人が指定できる点にあります。

ただし、契約しただけでは効力は生じません。認知症が進行した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点で効力が発生します

家族信託と同様、意思能力があるうちにしか契約できません。

出典:

成年後見人による不動産売却手続きの流れ

家庭裁判所への申立てから所有権移転登記の完了まで、成年後見制度を使った不動産売却には複数のステップがあります。

各段階でやるべきことを時系列で確認しておきましょう。

1)家庭裁判所への申立て

後見開始の申立ては、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。主な提出書類は以下のとおりです。

  • 申立書(裁判所所定書式)
  • 診断書(裁判所所定書式。かかりつけ医に依頼)
  • 本人の戸籍謄本・住民票・登記されていないことの証明書
  • 本人の財産目録・収支状況報告書
  • 申立人の戸籍謄本

費用は収入印紙3,400円(申立費用800円+登記費用2,600円)が基本です。医師による鑑定が必要と判断された場合は、5万〜10万円程度が別途かかります。

申立てから後見人が選任されるまでの標準的な期間は2〜4カ月です。

出典:

2)後見人選任

提出書類をもとに家庭裁判所が審判を行い、後見人を選任します。申立て時に親族を候補者として申告することもできますが、財産規模が大きい場合や親族間に意見の相違がある場合は、弁護士・司法書士などの専門家が選ばれるケースが多くなります。

後見人には月額2万〜6万円程度の報酬が発生し、本人の財産から支出します

3)居住用不動産の処分許可申立て

売却する物件が本人の居住用不動産(実家など)にあたる場合、後見人が独断で売買契約を結ぶことはできません。家庭裁判所の許可を得ることが法律上の要件です。手順は次のとおりです。

  • 「居住用不動産処分許可の申立書」と必要書類を家庭裁判所に提出する
  • 裁判所が内容を審査し、許可または不許可の審判を下す
  • 許可審判書の謄本を受け取る

裁判所が許可を判断する主な基準は、以下の3点です。

  • 売却の必要性(施設入居費用の確保など)
  • 売却価格の相当性
  • 本人の生活への影響

介護費用の捻出など合理的な理由があれば、許可を得られるケースがほとんどです。

出典:

4)売買契約の締結と決済・登記

許可審判書を取得したあと、後見人が本人の代理人として売買契約に署名・捺印します。その後、残代金の決済・物件の引き渡し・所有権移転登記を順に完了させれば手続きは終了です。

登記申請には許可審判書の謄本など、後見人の権限を証明する書類が必要になります。

主な売却方法は「売買仲介」と「買取」の2パターンです。売買仲介は一般の買い手を広く募るため売却価格を高くしやすい反面、成約まで時間がかかります。

買取は不動産会社が直接購入するため早期に現金化でき、施設入居費用を急ぎ用意したい場合などに向いています。

 

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認知症の親の家の売却までにかかる期間

手続きの流れを把握したうえで、実際にどれくらいの期間が必要かを確認しましょう。

後見人の選任から売却完了まで、トータルで半年〜1年以上かかるケースが大半です

認知症の親の家の売却までの流れ

後見申し立てにかかる期間

家庭裁判所への申立てから後見人が選任されるまで、2カ月以内に終局するケースが多いようです。ただし、申立書類の準備や、裁判所による調査や審判の手続きが長引いた場合、3カ月以上かかるケースもあります。医師の診断書取得や書類収集に手間取ると、さらに長引くこともあります。

なお、申立件数は年々増加しており、令和6年には後見開始の審判申立件数が28,785件(暫定)に上っています。件数の増加に伴い、審判までの期間が延びる場合もあります。

出典:

売却許可が出るまでの期間

後見人が選任されたあと、居住用不動産を売却するには家庭裁判所の許可が必要です。許可申立てから審理完了までの期間は、問題のない事案であれば1〜2週間程度が目安とされています。

出典:

ただし、この期間はあくまで許可審理だけの目安です。実際には後見人選任後に不動産会社との媒介契約・買い手探し・売買契約と進む必要があり、売却活動だけでも数カ月かかることがあります。

申立て準備の段階から売却完了まで、全体では早くとも6カ月、通常は1年前後を見込んでおくとよいでしょう

認知症に伴う不動産の名義変更について

「名義を変えてから売ればいい」と考える方も少なくありませんが、認知症の状態での名義変更には法的な制約があります。

変更できるケースとできないケースを整理したうえで、それぞれの対応策を解説します。

認知症でも名義変更できるケース

認知症と診断されていても、契約内容を理解して自ら意思表示できる状態(意思能力がある状態)であれば、名義変更の手続きは可能です。

認知症の診断の有無ではなく、手続きを行う時点での判断能力で判断されます

実務では、司法書士が取引の当事者本人に面談し、取引の目的や内容を理解しているかを慎重に確認します。意思確認が取れれば、手続きを進められます。

出典:

名義変更ができなくなるケース

認知症が進行し、契約の内容を理解して判断できない状態になると、名義変更を含む法律行為はできなくなります。民法第3条の2は、意思能力のない状態でなされた法律行為を無効と定めています。

家族が代わりに手続きを進めようとしても、本人の有効な署名・押印が得られないか、得られたとしても後から無効とされるリスクがあります。名義変更を前提とした売却計画は、この時点で根本から見直しが必要になります。

成年後見制度による対応方法

意思能力がなくなった場合は、家庭裁判所に申し立てを行い、成年後見人を選任してもらう方法が有効です。選任された後見人は、本人に代わって不動産の管理・名義変更・売却手続きを行う権限を持ちます。

親の認知症が進行してから動き出すと手続きが長引くため、早めの相談が重要です。

共同名義の親が認知症の場合

不動産が複数の名義人による共有(共同名義)であっても、認知症の親に意思能力があれば売却は可能です。

ただし、不動産を売却するには名義人全員の同意と契約への参加が必要です。

親に意思能力がなければ、共同名義であっても単独名義と同様に後見人の選任が必要です。「自分の持分があるから大丈夫」とは判断せず、親の状態に応じた対応を専門家に相談することをおすすめします。

認知症の親の不動産売却での注意点

委任状の限界、契約無効の可能性、家族間トラブルの3点を確認しておきましょう。

委任状だけでは売却できないケースがある

委任状は、本人が意思能力を持つ状態で作成しなければなりません。認知症が進行した後に家族が委任状を用意しても、その委任状自体が法的に無効となります

不動産会社や司法書士は、売買契約の締結時に本人の意思確認を行います。当日の様子から認知症が明らかと判断された場合、委任状を持参していても取引を断られるのも珍しくありません。

こうした場面では、成年後見人を選任した正規の手続きを経ることが唯一の解決策です。

売買契約が無効になる可能性もある

民法第3条の2は、意思能力を持たない者が行った法律行為を無効と定めています。認知症の親が同席のもとで契約を結んでも、後から「契約時に意思能力がなかった」と判断されれば、売買契約は無効となります。

たとえば、軽度認知症として手続きを進めた後、実際には重度の認知症だったことが判明し、買主側から無効を主張されるケースがあります。売却代金を受け取り済みでも返金を求められる可能性があるため、事前に医師の診断書を取得するか、後見人による手続きを選ぶ必要があります。

家族・親族間でのトラブルリスク

一人の子が独断で売却を進めると、ほかの兄弟姉妹から「事前に相談がなかった」「売却代金の使途が不明瞭だ」と反発を受けることがあります。こうした不信感は、後の相続争いに発展しやすく、親族関係を大きく損なうリスクがあります。

回避するには、検討段階から関係する家族全員で話し合い、合意内容を書面で記録しておくようにしましょう。後見人が選任されている場合は家庭裁判所の監督のもとで手続きが進むため、透明性が自然と確保されます。

 

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認知症の不動産売却では司法書士との連携が不可欠

意思能力の確認から成年後見申立て、売却後の所有権移転登記まで、司法書士は手続きのあらゆる場面を担います。

専門家と早期に連携することで、契約の無効リスクや書類の不備を防ぐことができます。

弁護士・司法書士費用

費用は依頼した業務ごとに精算するのが一般的で、すべてをまとめて一括払いする形にはなりません。

成年後見申立てのサポートは10万〜20万円程度が相場です。申立て時に必要な収入印紙は800円で、郵便料は申立先の裁判所ごとに異なります。

出典:

不動産の所有権移転登記を依頼する場合は、5万〜10万円程度が目安です。司法書士が後見人に選任された場合は、さらに月額2万〜5万円程度の継続的な報酬が発生します。

費用が段階的に積み上がる構造なので、依頼前に業務ごとの見積もりを確認しておくことが重要です。

まとめ

認知症の親の不動産売却は、正しい手順と制度の理解が必須です。

意思能力を失った親の不動産は原則として売却できず、無断で進めると契約無効や法的リスクを招きます。とくに成年後見制度を利用する場合、申立てから売却完了まで半年〜1年以上かかるため、早めに動き出す必要があります。

手続きの各段階では司法書士と連携し、家庭裁判所への許可申請や登記手続きを正確に進めることが求められます。

また売却活動に関しては、後見人制度への理解があり、似たケースの実績が豊富な不動産会社に相談することをおすすめします。

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