コロナウイルスはさまざまな分野に影響を及ぼしています。時間が経つにつれ、ウイルスとの接し方が浸透し対応策がわかりつつありますが、休業要請やステイホームなどによりこれまでの生活様式から変化した方も多いのではないでしょうか。第2波・第3波の警戒も必要な状況です。
まだ終わりが見えず、一定の対応策が必要ですが、2020年度前半の休業等により収入が減少し、これまで通りの家計のやり繰りでは上手くいかず、特に住宅ローンなどの返済について厳しく感じているかもしれません。
そこで今回は、コロナウイルスの影響で住宅ローンの返済が難しいときどうするかについて解説します。
目次
住宅ローン返済の猶予はある?
住宅ローンの返済額は他の支出額に比べて多く、また住宅は生活の基本となることからなるべく早く対策しておきたいものです。住宅ローンの返済について、一時的に厳しい場合は相談に乗ってもらえるのか、住宅ローンの返済猶予について解説します。
海外の対応
日本におけるコロナウイルスによる住宅ローン対策を紹介する前に、アメリカとイギリスの対応を見ておきましょう。
アメリカ政府のサイトによると、政府が支援する住宅ローンを利用している場合、差し押さえや立ち退きの一時停止、6ヶ月分の支払い延期や減額ができるようです。
一方、イギリス政府のサイトには、住宅ローン利用者への直接的な支援は見当たりませんでしたが、バークレイズ銀行のサイトによると、最大3ヶ月間、返済を猶予してもらうことができるようです(a mortgage payment holiday)。
国や州、地域によって違いはありそうですが、国や金融機関などによる支払い猶予が行われていることがわかります。
※参考:usa gov “Mortgages”
https://www.usa.gov/mortgages
uk gov “Coronavirus (COVID‑19)”
https://www.gov.uk/coronavirus
BARCLAYS
https://www.barclays.co.uk/coronavirus/mortgages/
では、フラット35はどのような対応をしているでしょうか。
フラット35の対応
フラット35を利用中で,住宅ローンの返済が困難になっている場合、安心して返済を続けるための方法が3つあります。
<フラット35 返済方法の変更>
① 返済期間の延長(最長15年)
:返済期間を延長することで、毎月の返済額を減らし、返済の負担を軽減する方法
② 返済額の軽減(一定期間)
:一定期間内の返済額を減らすことで、返済の負担を軽減する方法。軽減する期間は相談で決める。
③ ボーナス返済の見直し
:ボーナス返済月の変更や減額、取りやめにより、返済の負担を軽減する方法
①~③は組み合わせることも可能で、コロナウイルスの影響による減収などがいつまで続くかわからない場合は、①を中心に考えるといいでしょう。また、影響が限定的な場合は②、ボーナスへの影響が大きい場合は③など、状況に応じて選択します。
返済額変更の要件
返済期間を延長したい場合などは、一定の要件を満たす必要があります。対象者は幅広く、解雇・リストラや病気による減収などに加え、業績悪化による給与・ボーナスの減収、受注減・売上減による減収(自営業者)なども対象となります。
収入減少割合20%以上や年収に応じた返済負担率、月収が「世帯人数×64,000円」以下など収入額の要件もあります。下記の要件を参考にしてください。
<返済期間延長(返済特例) 主な要件>
⑴ 離職や病気等で返済が困難であること
⑵ 次の①~③のいずれかの収入基準を満たすこと
① 年収が「年間総返済額の4倍」以下
② 月収が「世帯人数×64,000円」以下
③ 返済負担率が下記の率を超え、収入減少割合が20%以上
年収 | 返済負担率 |
300万円未満 | 30% |
300万円以上400万円未満 | 35% |
400万円以上700万円未満 | 40% |
700万円以上 | 45% |
⑶ 継続して返済できること
※参考:住宅金融支援機構「ご返済が困難になっているお客様へ」
https://www.flat35.com/files/300334035.pdf
返済額の軽減期間など具体的に変更するためには、相談する必要があります。要件を満たしているかどうかを含め、金融機関や住宅金融支援機構各支店に相談してみましょう。
返済額変更による影響
返済額の変更などによる影響も確認しておかなければなりません。①~③を選択した場合の影響は次のようになります。
<フラット35 返済方法変更による影響>
① 返済期間の延長(最長15年)
:返済期間を延長するため、延長期間が長いほど、利息額が増え、総返済額は増加します。
② 返済額の軽減(一定期間)
:返済額を減らした期間に相当する部分は、返済が遅れることになりますので、利息額が増え、総返済額は増加します。
③ ボーナス返済の見直し
:ボーナス返済を取りやめた場合、その返済額分をどのように支払うかによって変わってきますが、一般的には返済を遅らせるため、利息額が増え、総返済額は増加します。
どの方法でも、総返済額や利息額がどの程度増えるかは、住宅ローン残高や金利、残りの返済期間などによりますので、影響が大きいかどうかは、相談で返済予定額を確認してから判断しましょう。
住宅ローンの延滞が生じた場合
住宅ローンの返済が難しくなれば、金融機関に相談することが原則ですが、相談しても支払えない場合や相談しにくく延滞してしまった場合はどうなるのでしょうか。
まず、延滞期間が1~3ヶ月程度の場合、返済日の翌日より遅延金(元金)に対して年14.0%程度の遅延損害金が発生します。年利率は金融機関によって異なります。返済が遅れることにより利息額も増加します。
また、ほとんどの場合、住宅ローン金利は優遇金利を適用しています。この優遇金利は、契約通りの金額を毎月返済することが条件となりますので、優遇金利が適用されなくなる可能性があります。
次に延滞期間が6ヶ月程度となると、金融機関からの支払催促も、ハガキから電話など直接的となり、住宅ローン残高の一括返済を求められる段階になります。1年も経てば、自宅は競売にかけられる可能性が高くなりますので、任意売却や民事再生(個人再生)などの方法を取る場合は、早めに弁護士などの法の専門家に相談した方がいいでしょう。
また延滞した旨が個人信用情報機関に登録され、新規のローンを組んだり、カードを作ったりすることができなくなる可能性があります。
※任意売却:住宅を価格交渉して売却することで、競売より高値が付くことを期待できます。
民事再生:住宅ローン特則を付けることで、住宅を手放すことなく、債務整理をすることができます。
※個人信用情報機関:個人の借り入れ状況などを記録している機関で、クレジットカードやローンの審査で参照されます。
返済が難しいときにすべきこと
返済が厳しくなったと感じたときには、できるだけ早く借入先の金融機関に相談することが重要です。フラット35の場合、先ほど紹介した返済方法の変更が可能です。
また、コロナウイルスの影響で返済が難しくなった場合、国や地方公共団体による支援金や補助金制度を確認しましょう。国による1人10万円の特別定額給付金はご存じだと思いますが、都道府県や市区町村単位でも独自に対策しているケースが見受けられます。情報が更新されていないか、こまめに確認する必要があります。
給付金制度だけでなく融資制度の活用も有効です。制度や条件によっては、無利子・無担保で借り入れることができますので、検討してみましょう。
家計が赤字なら家計の見直しを大胆に!
住宅ローンの返済が難しい状況では、他の支払いにも影響が出ている状況でしょう。コロナウイルスの影響が一時的で、預貯金で対応できる方は問題ないかもしれませんが、家計の余裕がある方ばかりではありません。
影響が長期に渡る可能性がある場合、固定費などの返済を大胆に見直し、減少した収入の範囲内でやり繰りできる体制を整えておくと、精神的にも経済的にも安心です。住宅ローンの返済が厳しく、まだ金融機関に相談していない方は、一度、相談してみてください。返済方法の見直しでゆとりが出るかもしれません。
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