ウッドショックっていつ終わるの?
う~ん。アメリカのほうは、すでにバブルが弾けたって聞くけど、ロシアの軍事侵攻の影響も…
建築費があんまり高くなっちゃうんじゃ、家を新築するの考えちゃうよ。
影響は一戸建て住宅一棟あたり数十万から百万程度と言われてる。原因や現状を詳しく見ていこう。
目次
ウッドショックとは?
日本では2021年3月頃から住宅の柱や梁などに使う建築用木材の需要が供給を上回り不足が続きました。それによって木材価格が高騰し、住宅建設において納期や価格などに影響を与えたのです。
【2022/05/03追記】経産省の分析レポートの輸入物価指数をみると、集積材、製材は2022年でピークアウト。しかし、合板や丸太は以前上昇継続となっています。
出展:どうなったウッドショック;価格の高止まりが需要を抑制?|その他の研究・分析レポート|経済産業省
ちなみに、ウッドショックは和製英語で、今回欧米の記事を検索したら「lumber crisis」「lumber shortage」をよく見かけたよ。
ウッドショックはなぜ起きた?
⇒新型コロナがアメリカの新築住宅需要増をもたらし、その影響が木材の価格に
日本の住宅の建材などに使われる木材の7割弱が輸入に頼っています。輸入先はカナダやロシア、スウェーデンなどです。
アメリカでは新型コロナウイルスの流行により、リモートワークやロックダウンが行われました。おのずと自宅で生活する時間が増え、自宅の改修や郊外に新築住宅を建てる人が増加したのです。その裏には、ここ数年アメリカで膨大な財政出動や低金利政策がとられ住宅需要が伸びていたことも影響しています。その結果アメリカでの木材需要が増え、日本への輸出が減少しました。
その他の要因として、原産国での山火事などの自然災害、コロナの流行によるトラックドライバー不足、輸出コンテナの不足などの要因が絡んでいます。
【2022/05/03追記】3月15日FRB(アメリカの日銀的存在の機関)がゼロ金利政策を終了し木材先物価格が一時期の高値の半分程度になるなど落ち着きを見せています。
2021年8月頃に一旦落ち着きを見せた木材先物価格ですが、それ以降再度上昇。1月、3月には再度高騰しています。3月中旬以降落ち着いてはいますが、この影響が日本に及ぶにはしばらく時間がかかると言われています。
ウッドショックの影響は
⇒国内の木材流通価格・工期にも影響
世界的なウッドショックの影響により、国内に木材が不足してしまいました。その結果、国内に流通する木材の価格も高騰してしまっています。
また、建築が予定されていた住宅であっても、木材の入手が困難となり着工が遅れるといった影響が出ています。
ロシア材のウッドショックへの影響は?(2022年5月3日追記)
日本政府は4月12日にロシアからチップや丸太、単板などの輸入を禁止する決定をしました。これらの製品は輸入全体のごく一部であり、影響は限定的と見られています。
しかし、他の輸入国が自国消費にシフトした際の影響も考えられ、油断はできません。
北欧などの日本が木材を輸入している国が、ロシア材を買わず自国消費にシフトして
日本への木材輸出が減っちゃうかも…!
住宅価格の値上げはどれくらい?
気になるのは住宅価格がどれだけ値上がりするかですよね。買い控えをした方がよいのでしょうか。
まず新築住宅価格の値上がりですが、一棟あたり数十万円から百万円程になると言われています。
【2022年5月3日追記】
国土交通省がまとめている「建設工事費デフレーター」という資料があります。その中で木造住宅の建設工事費を抜き出してみました。
2015年を基準(100)とし、推移が表されています。それぞれの月で変動はあるものの2021年3月以降はほぼ右肩上がり。2021年12月に一度落ち着いていますが、年明けから再度上昇しています。
例えばウッドショックの影響を受けていない2020年4月の住宅価格と2022年2月の木造住宅建設工事費を比較すると、10%以上も値上がりしています。つまり1500万円の住宅を建てた場合には150万円上乗せした価格となっているということです。
新築住宅の価格の値上がりはいつまで続く?
2021年10月現在、木材価格は落ち着いてきていますが、いまだ価格は高騰しています。
⇒【2022年5月3日追記】住宅価格の値上がりはウッドショックの影響ばかりではない
住宅価格の高騰はウッドショックのみに起因するものではありません。2022年5月現在、円安が進行しています。この影響によって輸入材の価格はさらに高騰し、さらにその他の原材料や輸送に必要な燃料も高騰しています(アイアンショック、オイルショックとも言われます)。
実際、大手建材メーカーも値上げを告知しており、多くのメーカーが2022年4月1月から、そのほかのメーカーも2022年以内に値上げを告知しています。この値上げで10~20%前後の値上げが行われます。頭が痛い問題ばかりですね。
中古住宅への影響は?
中古住宅は新築住宅に比べ割安感があり、リノベーションを行うことで内装を新しく、自分好みのデザインにできることから人気となっています。そこへ木材高騰が影響して、新築住宅から中古住宅へ一部の需要がシフトしている様子もあるようです。そのため、今後ウッドショックの影響が長引けば、中古住宅の価格への影響も増加することが考えられます。
もし中古住宅を購入する場合でも、リフォームを行うのであれば木材を使用するため多かれ少なかれ木材価格の影響を受けると言えるでしょう。
国産材も高騰している?
輸入材の高騰のあおりを受け、国産材も高騰しています。国産材は建材全体の3割程度ですが、輸入材が入ってこないため需要が増え価格が上昇しています。木材の性質上、いきなり増産をしようとしてもできないところがネックとなっています。
【2022年5月3日追記】
林野庁の資料を見てみましょう。各木材製品価格の推移グラフを見ると、2020年時点に比べ、価格が倍以上になっています。3月時点でも一部の材木を除いて高騰が続いています。
出展:林野庁資料「全国の木材需給動向について(令和4年3月)(PDF : 1,228KB)」
政府の対応は?
全研総連による工務店へのウッドショックの影響調査では政府からの支援策を求める声がありました。コロナ後にウッドショックが解消されなければ零細事業者は廃業の懸念もあります。
2021年5月14日の国土交通省赤羽大臣の会見では中小工務店への影響の大きさについて触れながらも“これまで、国産材、輸入材の需要・供給についての話はありましたので、今回改めて林野庁としっかり連携しながら、国産材を供給する林業事業者、製材事業者の皆さんとの長期調達の協定や契約を、必要があれば取り組まなくてはいけないと思っておりますし、複数の木造住宅供給事業者による共同調達の仕組みなどについて、情報提供を含めて対応を進めていきたいと考えております。”としています。
今後の見通しが立たないウッドショック。日本の建築業を支える中小の工務店への対策を期待したいですね。
【2022年5月3日追記】
さて、この記事を2021年10月に書いてから半年が経過しました。輸入材の代替えとして国内材の生産量を伸ばすべく林野庁はウッドショックの対策として令和3年の補正予算と4年度の予算合わせて1709億円が計上されることとなりました。(令和4年度の新型コロナ対策予算は5兆円)日本の林業が盛り上がって国内需要が満たされるようになるといいですね。しかし、それにはまだまだ長い目で見なければならないでしょう。
ウッドショックはいつまで続くの?住宅の買い時は?
アメリカの木材価格高騰はコロナの終息と合わせて住宅のリフォームから旅行など他の娯楽へと消費が移行したこともあり落ち着きつつあるようです。(あまりの価格の高騰に買い控えが起きたとの見方もあります。)しかし、日本への影響の鎮静化にはまだしばらくかかりそうです。
現状、どの程度で価格が落ち着くのかは色々な憶測が錯綜しています。価格のこと、経済のことに関しては、いつどうなるとはなかなか言えないようです。
住宅購入を検討するのであれば、ウッドショックの影響も正直に話してくれるハウスメーカー、工務店がよいですね。
【2022年5月3日追記】
住宅価格に影響するのはウッドショックだけではありません。国内外の木材の他の原材料、燃料、円安なども大きく関係してきます。値上がりしてしまうからといって焦って購入を決めるのはおすすめしません。また、建材や設備の仕入れが滞り入居が遅れてしまうことも考えられますから、お子様の進学などでどうしても決まった日までに入居をしたい方は余裕をもってスケジュールを立てられるとよいでしょう。
参照:
リフォーム産業新聞 第1502号(2022.4.25)
ウッドショックによる 工務店影響調査(第2回)