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この記事のポイント
- 現在の立地を活かしてリノベーションすれば移転より低コストで環境を刷新できる
- 成功のカギは法令・契約制約の確認と、課題と目的を明確にしたうえで設計・会社選定を行うこと
- 費用は工事規模で大きく変わり、移転より抑えられるケースが多いが、予備費確保と相見積もりが重要
「現オフィスの使い勝手が悪い」
「オフィス移転の手間や費用を考えると踏み切れない」
そういった担当者の声は少なくありません。現状の場所を活かしながら環境を刷新できるのがオフィスリノベーションです。
この記事では、向き不向きの判断基準から費用相場、実際のデザイン事例まで、検討に必要な情報をまとめています。読めば、リノベーションをするかしないかの意思決定の材料を揃えられるはずです。
記事の構成
オフィスリノベーションはどんな企業におすすめ?
オフィスリノベーションが有効かどうかは、建物の条件や賃貸契約の状況によって変わります。
費用をかけても効果が出るケースと、そうでないケースを先に把握しておくことが大切です。
向いている企業
- 現在の立地や建物には満足しており、内装・間取りに課題がある
- 賃貸の場合、ビルオーナーから工事の許可が得られる見込みがある
- 残存契約期間が3年以上あり、投資を回収できる見通しが立つ
- 移転と比較してコストを抑えたい
とくに向いているのは、「今の場所は気に入っているが、働き方に合った空間になっていない」と感じている企業です。
立地や建物の構造に不満がなければ、内装を手直しするだけで課題の大半を解消できるケースは多くあります。

賃貸オフィスの場合は、工事がテナント側の裁量で発注できるC工事の範囲かどうかも確認が必要です。
ビルオーナー指定の業者施工が求められるB工事が多くなると、費用が想定より膨らむことがあります。退去時の原状回復義務の範囲についても、契約書と照らし合わせて事前に確認しておきましょう。
参照:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)|国土交通省
向いていない企業
- 残存契約期間が1〜2年以内で、工事費用を回収できない
- ビルオーナーから内装工事の許可が下りない、または大幅に制限される
- 立地や最寄り駅からのアクセスなど、場所そのものに問題がある
- 建物の老朽化が著しく、設備や構造体に根本的な問題がある
リノベーションはあくまで現在の場所を前提とした改善策です。「採用に不利な立地」「建物の設備が古すぎて、テナント工事の範囲では対応しきれない」といった場合は、移転を先に検討するほうが合理的です。

残存契約期間の短さも、判断の分かれ目になります。数百万円規模の工事費をかけても、1〜2年で退去するなら費用対効果が合いません。
契約更新のタイミングを見据えながら、リノベーションか移転かを判断する視点が求められます。
オフィスリノベーションとは
オフィスリノベーションとは、現在使用している事務所の空間を改修し、機能性やデザインを刷新する工事を指します。
移転せずに現在の場所で環境を変えられる手段として、総務担当者や経営者から注目されています。
リフォームとリノベーションは混同されがちですが、本来の意味は異なります。
リフォームは劣化した箇所を元の状態に戻す「原状回復」が主な目的です。対してリノベーションは、改修によって以前より高い機能や価値を空間に与えることを指します。間取りの大幅な変更や設備の全面更新といった工事がその典型です。
ただし、施工会社の提案資料や日常の会話では両者が厳密に使い分けられないケースも多く、規模の大きな改修工事を「オフィスリフォーム」と呼ぶこともあります。呼称の違いよりも「どこをどう変えるか」という工事の中身に着目するほうが実用的です。
近年は働き方改革の流れを受け、コミュニケーションを促すレイアウトや、集中と協業を場面に応じて使い分けられる空間設計への関心が高まっています。オフィス移転と比べてコストを抑えやすい改善策として、リノベーションを選ぶ企業が増えているのはこうした背景があります。
オフィスリノベーションの効果と費用対効果(ROI)
オフィスリノベーションがもたらす変化は、見た目の刷新だけではありません。生産性の向上・コミュニケーションの活性化・採用と定着への好影響と、事業運営に直結する複数の効果が期待できます。
生産性の向上
照明・温熱・騒音といった室内環境を改善すると、執務者の集中力が高まり、知的生産性の向上につながります。
作業の種類に応じてゾーンを分け、集中エリアには防音パネルを設け、クリエイティブ作業エリアには自然光を取り込む設計が典型的な手法です。
参照:オフィスの複合的な室内環境条件の改善による知的生産性および健康性の向上に関する研究|J-STAGE
費用対効果は、改善前後の1人あたり業務アウトプットを時給換算して比較し、リノベーション費用との回収期間を試算するのが現実的です。社員数が多いほど、わずかな効率改善でも金額ベースの回収が早くなります。
コミュニケーションの活性化
高さのあるパーテーションで席を囲った旧来のレイアウトは、声をかけにくい雰囲気を生みがちです。
フリーアドレスや部署横断型のコラボレーションスペースを設けると、自然発生的な会話が増え、情報共有のスピードが上がります。
参照:2024年度 調査報告書要約版|公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会
効果の測定には、部署横断ミーティングの頻度や「相談しやすさ」に関する社内アンケートのスコアを前後比較する方法が使えます。手戻り工数の削減額として試算できれば、投資判断の根拠としても説得力が増します。
採用力・定着率の向上
求職者はオフィス見学の印象を重視します。自然光が入る執務スペース・リラックスできる休憩エリア・清潔感のある共用部は、選考辞退率の低下につながります。
厚生労働省の調査でも、職場環境の整備が中小企業の離職対策として有効であることが示されています。
参照:働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査 報告書|厚生労働省
費用対効果は、1人あたりの採用費と研修費の合計に、削減できた離職者数の見込みを掛け合わせて試算します。数名の離職を防ぐだけでリノベーション費用を上回るリターンが得られるケースも珍しくありません。
【比較】オフィス移転とリノベーションはどちらがよい?
移転かリノベーションかの判断は、コスト総額と目的のすり合わせで決まります。同条件で費用を比べると、両者の差は予想より大きくなるケースがほとんどです。
コスト比較
50坪・50席のオフィスを想定し、主要な費用項目を比較します。
| 費用項目 | リノベーション | 移転 |
|---|---|---|
| 内装工事(坪単価) | 20万〜30万円 | 20万〜40万円 |
| 家具・什器 | 既存流用で追加費用を抑えられる | 1席あたり10万〜30万円 |
| インフラ工事 | 小規模または不要 | 50万〜200万円(一式) |
| 旧オフィス原状回復 | 不要 | 別途必要(賃貸条件による) |
| 概算合計(50坪) | 1,000万〜1,500万円 | 2,000万〜4,700万円超 |
リノベーションが有利な理由の大半は、原状回復費用の有無です。
移転では旧オフィスの原状回復にB工事・C工事の区分が絡み、想定外のコストが発生しやすくなります。
一方、スケルトン状態からの全面改修に近い規模になると、リノベーションの費用も移転並みに近づくため、工事範囲の見極めが重要です。
メリット・デメリット
コスト以外の観点も含め、両者の特性を箇条書きで整理します。
リノベーションのメリット
- 引越し費用・旧オフィスの原状回復費用が発生しない
- 段階的な施工で業務への影響を最小限に抑えられる
- 立地や賃貸契約を変えず、現在の環境を改善できる
リノベーションのデメリット
- 建物躯体や既存設備の制約を受ける
- 賃貸物件ではオーナーの承認が必要で、工事内容に制限が生じることがある
- 残存契約期間が短いと費用回収が難しい
移転のメリット
- 立地・広さ・設備をまとめて刷新できる
- スケルトンから設計するため、レイアウトの自由度が高い
移転のデメリット
- 原状回復費用・引越し費用が二重にかかる
- 移転準備から入居まで、総務担当者の業務負担が集中する
- 通勤距離や路線が変わり、社員への影響が生じる場合がある
オフィスリノベーションの前に確認しておくべきこと
工事に着手する前に、法令・契約上の制約と課題・目的の2点を先に確認しておく必要があります。
この順序を省くと、後から計画の組み直しが生じたり、費用をかけても課題が解決しなかったりする結果になります。
法令・契約上、そもそも工事が可能か
賃貸オフィスの場合、賃貸借契約に工事実施時の貸主承諾条項が定められていることがほとんどです。廊下・エントランス・トイレなどの共用部には原則として手を入れられず、変更できるのは専有部のみです。
工事の計画を立てる前に、契約書の内容と建物管理会社への確認を先に済ませておきましょう。
建築基準法では内装材料の制限や避難経路の確保が義務づけられており、間仕切り壁の新設や天井材の変更はこれらへの適合確認が必要です。
消防法上も、工事によって火災報知器やスプリンクラーの設置基準を満たさなくなるケースがあります。設備を変更・新設した際は消防署への届出と検査が求められるため、施工会社と一緒に事前に確認しておくことが重要です。
課題の整理と目的の明確化
目的が曖昧なまま工事を進めると、費用だけかかって業務上の課題が何も変わらない結果になりがちです。
「雰囲気を変えたい」という動機だけでは、どこに予算を配分すべきかの判断が難しくなります。
出発点は「何が問題か」の言語化です。
「集中して作業できる場所がない」なら個室ブースや吸音材の設置が解になりますが、「部門をまたいだ連携が生まれにくい」なら執務レイアウト全体の見直しが必要です。課題の種類によって工事の内容も費用規模も変わるため、施工会社へ依頼する前に関係者間で目的を合意しておくことが、遠回りを防ぐ一番の近道です。
オフィスリノベーションの進め方・流れ
全体の流れは「課題整理→設計・デザイン→施工→運用」の4段階です。
50坪規模の工事であれば、着工から完成まで2〜3カ月、計画の開始から数えると4〜6カ月程度を見込んでおくのが現実的です。

1)課題整理
最初のステップは、現状のオフィスで何が問題なのかを具体的に言語化することです。
「なんとなく使いにくい」という感覚を、「集中作業スペースが不足している」「来客動線と社員動線が交差している」といった個別の課題に落とし込みます。
部署ごとにヒアリングを行い、課題の優先順位を決めておくと、設計の方向性がブレにくくなります。
予算の上限と工期の制約もこの段階で確認しておくことが重要です。前章で触れた法令・契約制約の確認も、課題整理と並行して進めます。
2)設計・デザイン
課題と目的が固まったら、施工会社や内装デザイン会社に要件を伝え、レイアウト案と見積もりを作成してもらいます。
複数社から提案を受けると、費用感と設計の方向性を比較しやすくなります。
間仕切り壁の新設や撤去など、建築確認申請が必要になる工事が含まれる場合は、申請期間を工期に組み込む必要があります。
申請には数週間から1カ月程度かかるケースがあるため、スケジュールには余裕を持たせてください。
3)施工
施工中は業務を止めずに進めるか、週末や夜間に集中して工事を行うかを事前に取り決めておきます。
執務エリアを分割しながら段階的に工事する「フェーズ工事」を採用すると、業務への影響を抑えられます。
工期中は現場監督と定期的に進捗を確認し、設計変更が生じた場合はその都度、費用と納期への影響を確認します。想定外の追加費用が発生しやすいのもこの段階であるため、予備費として総工費の10〜15%程度を確保しておくと安心です。
4)運用
工事完了後、実際に使い始めてから初めて気づく不具合や使いにくさが出てくることがあります。
入居後1〜2カ月を目安に、社員へのアンケートや現場ヒアリングを実施し、軽微な修正や家具の配置換えで対応できるか確認します。
また、先に触れた生産性や採用・定着への効果を検証するには、リノベーション前後の数値を比較できる状態にしておくことが前提です。改修前の段階で、測定指標と計測方法を決めておくと、投資対効果の評価がしやすくなります。
オフィスリノベーションのデザインアイデア
レイアウトとデザインの設計次第で、オフィスの使いやすさは大きく変わります。代表的な3つのアプローチを取り上げ、それぞれで得られる効果も合わせて解説します。
ゾーニング設計
ゾーニングとは、オフィス全体を用途ごとに区画する設計手法です。
集中作業エリア、チームでのコミュニケーションエリア、来客応対エリアを明確に分けることで、業務の切り替えがしやすくなります。各エリアに適した照明や音環境を設けられる点も、生産性向上に直結します。
ゾーニングが曖昧なオフィスでは、電話応対の声が集中作業の妨げになったり、来客動線が社内スペースと交わったりという問題が起きがちです。間仕切りや家具の配置を見直すだけで解消できるケースも多く、必ずしも大規模な工事を必要としません。
可動式パーテーションの導入
固定の壁を設けず、移動できるパーテーションで空間を仕切る方法です。
少人数のミーティングから全社集会まで、その日の用途に合わせてレイアウトを変えられます。将来的なチーム編成の変化にも柔軟に対応でき、再工事のコストを抑えられる点も魅力です。
注意が必要なのは消防法上の規定です。
パーテーションの高さや配置によっては、スプリンクラーや火災感知器の有効範囲に影響が出ることがあります。東京消防庁はオフィスの避難通路について幅1.2m以上の確保を求めており、設置前に施工会社や管轄の消防署と確認しておくことが大切です。
ブランドを体現するデザイン
コーポレートカラーを壁面やアクセント家具に取り入れたり、企業のビジョンや価値観をサインやグラフィックで空間に表現したりすることで、オフィス全体に一体感が生まれます。
社員が自社のカルチャーを日常的に意識できる環境は、エンゲージメントの維持にもつながります。
採用活動の面でも効果が出やすいアプローチです。オフィス見学の場で企業の世界観が伝わるデザインは候補者の記憶に残りやすく、SNSや採用サイトに掲載できるビジュアルとしても活用できます。空間デザインが対外的なブランドコミュニケーションの一端を担う、という発想は中小企業でも取り入れやすいものです。
オフィスリノベーションの事例
実際にオフィスリノベーションを行った企業の事例を紹介します。課題の種類や規模感が異なるため、自社の状況に近いケースを参考にしてください。
自社アートをオフィス空間に統合したブランド体現(ヘラルボニー)

引用元:ヘラルボニー、ユニリーバ・ジャパン創業60周年を記念し全面改装したオフィスを彩る|株式会社ヘラルボニー
知的障害のある作家のアートワークをライセンス展開するヘラルボニーは、オフィスそのものを自社ブランドの体現空間として刷新しました。
壁面や什器に作家の作品を取り入れることで、来訪したクライアントや採用候補者がブランドの世界観を体感できる設計になっています。
「オフィスは最初に触れるブランド体験」という考え方が、リノベーションの設計思想の根幹にあります。外部のデザイン会社に丸投げするのではなく、社内のクリエイティブチームが主導することで、ブランドの一貫性を保ちながら空間を作り上げた点も特徴的です。
移転せず既存フロアをコラボレーション空間へ(オズマピーアール)

引用元:オズマピーアール 本社オフィスをリノベーション 「新しい『問い』、新しい『あたりまえ』」が生まれ続ける場へ|株会社オズマピーアール
PR会社のオズマピーアールは、本社オフィスを全面的にリノベーションしました。
フリーアドレスを導入するとともに打ち合わせスペースを整備し、社員が連携しやすい環境へと刷新しています。
大規模な移転を行わずに働き方を変えるアプローチとして、既存フロアを活用したリノベーションは費用面でも現実的な選択肢です。
セントラルキッチンを核に据えた本社オフィスの全面リノベーション(SSU)

マーケティング支援などに取り組むサニーサイドアップ(SSU)は2020年に本社オフィスのリノベーションを完了しました。
このリノベーションで最も注目を集めたのがセントラルキッチンの設置です。社員が自然に集まり交流できる場として設計されており、コミュニケーションの活性化を空間から後押しする試みになっています。
執務エリアだけでなく、社員が共に使う場所へ重点的に投資することで、日常的な働きやすさと組織の一体感を同時に高めた事例です。
固定壁の撤去でフロアを一体化(中規模クリエイティブ企業)

※画像はイメージ
かつて会議室と執務エリアが壁で細かく区切られていたオフィスでは、部門間の情報共有が滞りがちです。
ある中規模のクリエイティブ企業では、固定壁を可動式パーテーションに置き換えることで、平常時はオープンフロアとして使いつつ、必要なときだけプライベートな空間を作れる設計に変えました。
工事範囲が間仕切りの変更だけに限られるため、移転と比べて工事の負担を抑えやすく、既存フロアを活かしたままレイアウトを見直せる点が、このアプローチの強みです。
老朽化した設備と照明を更新し環境を改善(地方製造業)

※画像はイメージ
照明の暗さや空調効率の悪さが長年の課題となっていた製造業の管理部門が、設備を中心にリノベーションを行った例もあります。
デザイン面の変更よりも実用的な設備更新を優先したことで、予算を絞りながら執務環境を改善しています。
見た目よりも機能性を優先する判断は、従業員満足度の底上げに直結しやすく、省エネ効果による光熱費の削減が初期投資の回収を後押しするケースもあります。
オフィスリノベーションでよくある失敗事例と注意点
計画段階で見えていなかったリスクが、工事中や完成後に表面化するケースは少なくありません。費用・設計・運用という3つの観点から、代表的な失敗のパターンを整理しておきます。
コスト超過
当初の見積もりから費用が膨らむ原因として多いのが、解体後に発覚する躯体や配管の劣化です。
壁を開けてみると想定外の補修が必要だった、というケースは古い物件ほど起きやすくなります。また、工事中の仕様変更(追加の間仕切りや照明変更など)は単価が割高になりやすく、小さな変更の積み重ねが最終的に数百万円規模の超過につながることもあります。
対策としては、解体前に専門業者による現地調査を十分に行い、予備費として工事費の10〜15%程度を確保しておくことが現実的です。仕様変更は着工前に確定させ、工事中の追加依頼は原則しないというルールを社内で決めておくだけでも、超過リスクはかなり抑えられます。
使いづらい設計
見た目はおしゃれでも、実際に使うと不便という設計ミスは珍しくありません。
よくある例が、集中ブースを増やしたのに換気が不十分で長時間いられない、開放的なオープンレイアウトにしたら会話の声がフロア全体に響いて集中できない、といったケースです。
根本的な原因は、デザインの議論に現場で働く社員が加わっていないことにあります。計画段階でチームリーダーや業務の異なる担当者からヒアリングを行い、「実際にどこで何をしているか」を把握したうえで設計に反映することが重要です。事務所衛生基準規則が定める照度・換気・温湿度の基準も、設計時に確認しておく必要があります。
社員に定着しない
完成したオフィスを社員が使いこなせない、もとの働き方に戻ってしまうという失敗も起きます。
フリーアドレスを導入したのに全員が同じ席に座り続ける、新設したコラボレーションスペースに誰も来ない、といった状況がその典型です。
新しいオフィスは「空間を変えれば行動が変わる」ほど単純ではありません。変更の目的と期待する使い方を事前に説明し、必要であれば運用ルールを設けることが定着を左右します。リノベーションの完成をゴールにせず、完成後3カ月程度は運用状況を確認しながら微調整する期間と捉えておくと、現場とのギャップを早めに埋められます。
オフィスリノベーションの費用と補助金・助成金
費用の見通しが立ちにくいことが、リノベーション検討をためらわせる主因のひとつです。工事規模ごとの相場と活用できる補助制度を把握しておくと、現実的な予算計画を立てやすくなります。
工事規模・内容別の費用相場と内訳
オフィスリノベーションの費用は、工事の範囲と内容によって大きく異なります。目安として、以下の表を参考にしてください。
| 工事内容 | 坪単価の目安 | 主な内訳 |
|---|---|---|
| 軽微な改修(塗装・家具入替) | 5〜15万円 | 壁面塗装、家具・備品の更新 |
| 間仕切り・床・照明の変更 | 15〜30万円 | パーテーション、床材、照明器具 |
| レイアウト全体の刷新 | 30〜50万円 | 上記+電気配線の変更、空調調整 |
| 設備含む全面改修 | 50万円〜 | 上記+給排水、天井・壁の全面工事 |
近年は建設工事費の上昇傾向が続いており、実際の見積もりは上記より高くなるケースもあります。複数の施工会社から相見積もりを取り、内訳を比較することが重要です。
初期費用を抑える補助金・助成金の種類と活用方法
オフィスリノベーションに活用できる公的支援制度は、主に国の制度と自治体の制度に分かれます。
国の制度として代表的なのが、環境省が所管する省エネ改修向けの補助制度です。LED照明への切り替えや高効率空調の導入を伴うリノベーションであれば、対象となる可能性があります。
また、厚生労働省の働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)は、労働時間の短縮を目的とした設備投資に使える助成金で、オフィス環境の整備費用も要件を満たせば対象になります。
最低賃金の引き上げとセットで生産性向上に取り組む場合は、業務改善助成金も選択肢のひとつです。
参照:
省エネ改修への補助制度及び支援ツール等一覧|環境省 グリーンビルナビ
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|厚生労働省
業務改善助成金|厚生労働省
自治体独自の支援制度は地域によって内容が異なるため、所在地の産業振興課や商工会議所に問い合わせると確実です。補助金・助成金は公募期間が定められているものが多く、申請タイミングを逃さないよう、リノベーションの計画段階から情報収集しておくことが大切です。
【物件別】オフィスリノベーションの注意点
物件の種類によって、リノベーションで考慮すべき法的制約や契約上の条件が異なります。自社の物件形態を把握したうえで、以下の注意点を着工前に確認してください。
賃貸オフィス・貸事務所の場合
賃貸物件でリノベーションを行う際に最初に確認すべきなのは、原状回復義務の範囲とオーナーへの事前承諾です。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、賃借人が故意・過失で損傷した部分に加え、契約で特約が設けられている場合は通常損耗を超えた箇所についても原状回復義務が生じます。
参照:原状回復をめぐるトラブルとガイドラインについて|国土交通省
間仕切り増設や床材変更など、退去時の撤去が難しい工事ほど退去費用が膨らむリスクがあります。
工事内容と原状回復の範囲を書面でオーナーと合意しておくことで、退去時のトラブルを防げます。
倉庫・古民家を活用する場合
倉庫や古民家をオフィスへ転用する場合は、建築基準法上の用途変更手続きが伴うことがあります。
延べ床面積200㎡を超える特殊建築物への用途変更は確認申請が必要で、大規模な模様替えを同時に行う場合は建物全体が建築基準関係規定の審査対象になります。
消防設備の面では、用途変更後の用途区分に応じた火災報知器・誘導灯の設置が求められます。
倉庫は消防法施行令別表第一の14項に分類されており、オフィス用途へ変更すると設置基準が変わるため、設計段階で所轄の消防署に相談しておくことが重要です。
参照:倉庫(14項)に係る主な消防法令上の規制について|消防庁
自宅兼事務所・シェアオフィスの場合
自宅の一部を事務所として使う物件では、用途地域による制限を先に確認します。
第一種低層住居専用地域など住居系の用途地域では事務所の開設自体に制限があり、リノベーションで事務所部分を拡張すると建築基準法に抵触するおそれがあります。また、住居ローンを利用している物件は、金融機関への用途変更の確認も必要です。
シェアオフィスやコワーキングスペースへの入居の場合、内装の改修は運営会社との契約で原則禁止されているケースがほとんどです。
ブースの設置や間仕切りの変更を希望するなら、契約書の改修条項を入居前に確認し、必要に応じて個別交渉を経てから工事の計画を立ててください。
信頼できるオフィスリノベーション会社の選び方
依頼先の種類によって、得意領域とコスト感が大きく異なります。工事の規模や目的に合わせて選ぶことが、プロジェクトの成否を左右します。
まず確認したいのは、建設業許可の有無です。工事費用が500万円以上になる場合、請負業者には建設業許可が義務づけられています。見積もりを依頼する前に、許可番号を保有しているかどうかを確認してください。
| 依頼先 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 内装工事専門会社 | 工期が短く費用を抑えやすい | デザイン提案力は限られる |
| 設計事務所+施工会社 | 設計の自由度が高い | 窓口が分かれるため調整に手間がかかる |
| 設計・施工一括対応会社 | ワンストップで対応でき、責任の所在が明確 | 相見積もりが取りづらい |
実績件数と施工事例の業種・規模感も選定の判断材料になります。自社と近い規模・用途のオフィス事例を複数持つ会社であれば、課題の理解が早く、提案の精度も上がります。
まとめ
オフィスリノベーションは、現在の拠点に留まりながら働く環境を大きく変えられる手段です。移転と比べてコストを抑えつつ、生産性向上・採用定着率の改善・ブランド体現など多面的な効果が期待できます。
成功のポイントは、工事前に法令・契約制約を確認し、課題と目的を明確にしたうえで、信頼できる施工会社を選ぶことです。デザインや予算の話を進める前に、この土台を整えることが後の工程全体を左右します。
現在のオフィスに間取りや動線、雰囲気の課題を感じているなら、まずは専門会社への相談から始めるとよいでしょう。
ナカジツの「Asobi-リノベ」は、企画・設計から施工・アフターフォローまでをワンストップで手がけるリノベーションサービスです。
初めてリノベーションを検討する方でも、現状の課題整理から丁寧にサポートいたします。自社オフィスの改善を具体的に動かしたいと考えているご担当者様は、ぜひ一度お問い合わせください。





































