一戸建てに占める木造住宅の割合は90%。住宅を新たに購入する方の大部分が木造住宅を選ばれます。長いローンを組んで購入するマイホーム、できるだけ長く快適に暮らしたいものですが、木造住宅の耐久年数はどれくらいで、どんなメンテナンスが必要なのでしょうか。
また、中古住宅の購入を検討する際、木造住宅では何年程度まで許容範囲なのでしょう。そしてどんなポイントに気を付けて購入検討したらよいかもご紹介します。
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住宅の耐用年数とは
一口に耐用年数と言っても、税務上のもの、劣化によるもの、と複数の意味があります。それぞれの定義と耐用年数を見てみましょう。
法定耐用年数 | 物理的耐用年数 | 経済的耐用年数 |
税務上の基準 | 工学的判断に基づき決定される | 市場価値がある期間 |
法定耐用年数
「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に定められた、課税の公平性を図るための税務上の基準です。国税庁のサイトから引用します。
減価償却資産とは、事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具など、一般的に時の経過等によってその価値が減っていく資産をいいます。
住宅も減価償却材の一つであり、法律によって新築時から、一定の耐用年数が定められているのです。
減価償却資産の取得に要した金額は、取得した時に全額必要経費とするのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくべきものです。
減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続です。
一戸建てなど、建物を購入し賃貸を行う場合に減価償却資産として耐用年数の間毎年必要経費とすることができます。中古住宅を購入した際は別途減価償却用の計算が必要です。
言ってしまえば税務の便宜上決められた目安ですから、実際の住宅の状態に則するわけではありません。以下に紹介する耐用年数よりも明確に○年、と決まっているだけ分かりやすいとも言えます。
物理的耐用年数
中古住宅の耐用年数についの国土交通省の定義を引用します。
建築部材の物理的な劣化に伴う耐用年数であり、工学的判断に基づいて決定される。
同一環境下で同一の材料であれば、同一の耐用年数となる。
木造住宅であれば、柱や梁といった構造部分、壁や屋根材なども含まれるかと思いまが、それら”部材そのものの物理的耐久性、耐朽性”が重視される要因として挙げられます。
同一の環境、同一の材料、という仮定は全く難しい条件です。なぜなら、住宅を作っている工務店やハウスメーカーの施工の質や、気候などの環境、木材の種類、メンテナンス状況もそれぞれ異なることが容易に想像されるためです。もし物理的耐久年数を数字で表したとしても、目安でしかないことはお分かりいただけるかと思います。
経済的耐用年数
国土交通省資料から引用しますと、経済耐用年数とは
物理的・機能的視点のみならず、市場性の始点を含め、経済的に市場性を有するであろうと考えられる期間である。
とされています。
つまり、市場で売買される価値がある期間を指します。市場価値というと、住宅の立地や間取り、メンテナンスの程度(見た目、物理的な面)など条件は物件によって様々、価値も変わってきます。しかしながら、市場の需要に則して考えてみますと、新築住宅を求める人の割合が多く中古住宅の購入を希望する人が少なければ、おのずと経済的耐用年数は短くなってしまいます。実際日本の住宅の寿命は欧米に比べ短い傾向があります。
そんななか、行政の意向としては中古住宅の価値を向上し経済耐用年数を伸ばしすことで、既存の住宅(中古住宅)を活用したいというところがあります。そこで次のような耐用年数の概念が生まれています。
期待耐用年数
あまり聞きなれない、この基準は物理的耐用年数と経済的耐用年数の間をとったような存在です。
物理的耐用年数が物理的劣化を経た結果ギリギリまで使用に耐えうる期間を指すのに対し、通常範囲の維持管理で使用できると思われる耐久年数をいいます。
木造住宅の耐用年数は?
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色々な種類の耐用年数をご紹介しました。さらにここでは、木造住宅に住み続ける、中古木造住宅を購入する、といった視点で耐久年数のお話をしていきます。
住宅の構造毎の耐用年数の違い
住宅の構造ごとに耐久年数は変わってきます。木造住宅以外の構造の住宅の耐久年数も知っておきましょう。
法定耐久年数
法定耐久年数は木造住宅22年、コンクリート造では47年です。
物理的耐用年数
研究によって異なりますが、木造では65年、コンクリート造では約120年持つというデータが出ています。
木造住宅の耐用年数について
既に耐用年数には複数の意味がある事はご紹介しました。物理的耐用年数だけをとっても、住宅の置かれた状況によって変わってしまいます。それでは、一般的によく聞く住宅の寿命が22年、30年だという、この数字は一体何なのでしょう。
木造住宅の耐用年数が22年と言われる理由
まず、22年という数字。先に解説した通り、これは法律で定められた減価償却期間の耐用年数です。税制上決められた期間のため、現実に建物が使用に耐えるかどうかに即した年数ではありません。
木造住宅の耐用年数が30年と言われる理由
もう一点の30年という数字。こちらは以下のような要因が考えられます。いずれにしろ物理的耐用年数というわけではありません。
■キッチン、浴室などの設備寿命が30年
一般的に水回りの設備は20~30年が交換目安とも言われています。それらを一斉に取り換えるとなると大金が必要です。さらに壁紙や外壁、屋根のメンテナンスもしていなければ全体的に老朽化した印象になってしまします。
■住宅の取り壊しの実態を反映した年数
統計によるデータで、取り壊した建物の築年数が27年だったことを反映した年数のようです。これには都市計画による取り壊しも含まれます。
30年というと、子どもが大人になり独立し、セカンドライフのために郊外の一戸建てを手放し都心のマンションや賃貸物件への移住を考える、持て余した部屋のリフォームを検討するタイミングということも影響しているかもしれません。
■1981年に耐震基準法の改正があった
耐震基準の大改訂が行われたのが1981年でした。そのため、その改定以前に建てられた建物を新しい耐震基準に見合うものにするには耐震工事が必要となってしまいます。先ほどの設備の寿命とも相まってリフォーム費用が高額になケースが多いこともあり、取り壊し新築する場合が多かったとも考えられます。
耐用年数と寿命は異なる
耐用年数が一般的に22年、30年と言われている理由を改めて見てみると、実際の住宅の耐久性を表していないことが分かります。適切なメンテナンスを行うことで、住宅の寿命は伸ばすことができる、というより計算で算出されるような物理的耐久年数に近づけることができます。
しかし逆に、本来なら住宅の機能を維持するためにメンテナンスの必要があっても、居住者が高齢なため費用の問題や手間がかかることからあえてリフォームをしないケースもあります。居住者の生活設計に合わせて住宅の耐用年数は決めればよいものなのです。
長く住むためにできることとは(メンテナンスやリフォームなど)
新築時に注意することとしては、防蟻対策をきちんと行うこと。その他、構造面では、構造バランスの悪い家を作ってしまったがために、長い年月を経て不同沈下を起こしてしまうということがあります。広いリビングや解放感あふれる吹き抜けも魅力的ですがメリット、デメリットをふまえつつ構造的に強い家を作りたいものですね。
住宅の設備の耐久年数は概ね30年程度です。住宅内の設備(キッチンや浴室、内装など)は目につくためリフォームの対象となります。しかし、住宅の居住者の命を守るはずの構造躯体(柱や梁、基礎)は普段目にすることがなく、問題にも気づきにくいものです。
構造躯体の耐久性に影響を及ぼす雨漏りやシロアリ被害が出ないよう、定期検査やメンテナンスを怠らないことが肝心です。以下の「物件選びのポイント」にもご紹介しますので、ぜひご覧ください。
物件選びのポイントは?
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中古物件を購入する際、家のどの部分に注意したらよいのでしょうか。特に重要な箇所をピックアップして解説します。
主要構造部分
主要構造部は、壁、柱、床、梁、屋根、階段をいい、建築基準法で定められています。このなかで構造を支える役割を持つ柱、壁については特に注目して見なくてはなりません。なぜなら、表面的な壁紙や設備は交換が効きますが、柱が傷んでいた場合、構造の耐久性に問題が生じてしまい大規模な改修が必要となるためです。地震や台風から大切な家族の命を守る住宅の耐久性が懸かっているわけですから、しっかりと確認しましょう。
柱の耐久性を下げる要因は以下の通りです。いずれの要因も水分が多い状況が劣化を引き起こしますよ、という内容です。
シロアリ対策
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シロアリによる被害(蟻害)で、構造躯体である柱の強度、ひいては建物の耐震性は大きく損なわれます。大きな原因は雨漏り、水回り設備の水漏れ、結露による湿気、つまるところ「水分」です。水分があると、腐食菌による劣化も懸念されます。
雨漏り
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屋根や壁の劣化により雨漏りが発生していないかを確認します。雨漏りは住宅トラブルの大半を占めるほど多く、品確法で定められている瑕疵担保責任でも新築住宅の「構造」と「雨漏り」は10年間と特に長い期間の保証となっています。
設備の老朽化
浴室やキッチンといった設備の寿命は20から30年程度と言われています。設備そのものの劣化も問題ですが、先に挙げたような水漏れが構造躯体の劣化に繋がってしまいます。特に老朽化した浴室は水漏れの原因となることが多いため注意が必要です。
築30年以上経っている木造住宅を選ぶ時のポイントは?
中古物件を選ぶ際のポイントをご紹介しましたが、そのなかでもさらに新築時から時を経ている物件、築30年以上が経過している木造住宅を選ぶ際、特に気を付けたい内容をみていきましょう。
改修工事が過去にあったか
改修工事の履歴があれば閲覧しましょう。定期的なメンテナンスがされていた物件であれば耐久性が保たれていると考えることができます。しかし、水漏れや雨漏りによる改修工事であれば構造躯体に劣化が生じている可能性があります。
旧耐震構造ではないか
1981年以前に建てられた建物は旧耐震構造の可能性があります。大規模地震に耐えられる強度が無く危険なばかりではなく、住宅ローンの査定や住宅ローン控除の優遇が受けられないなどの問題があります。
旧耐震構造の住宅を耐震工事し新耐震の強度を持たせる耐震工事を行うことはできますが、大きな費用が掛かってしまいます。今後どれだけこの住宅に住み続けるのかと費用を鑑みて検討しましょう。
参考サイト:国土交通省
木造住宅を選ぶならナカジツ
木造の中古住宅を購入する際の注意点などご紹介してきました。中古自動車も単純に走行距離ではなく、きちんとメンテナンスされてきたかどうかが実際の状態に影響します。住宅も、雨漏りやシロアリ被害が無いよう施工時から気を遣いメンテナンスされ大切に住まわれてきたものは、構造躯体の耐久性も保たれている可能性があります。
中古住宅を購入する際は見た目や価格ばかりに目を奪われず、災害から「命を守る」という視点で住宅の性能も見定めましょう。そのためには構造や、どうしたら耐久性は低下してしまうかといった知識が欠かせません。
構造部分の確認のためには屋根裏や床下の基礎部分を確認する必要がありますが、専門知識がなくてはなかなか難しい作業です。そのため、中古住宅の現状把握をするためのインスペクション制度が2018年4月に施行されました。これにより仲介業者によるインスペクションの説明、斡旋などが義務付けられています。インスペクションの結果を見て、安心して中古住宅を購入できるわけです。
また、住宅を購入した際は、購入して終わりではなく、長く安心して住み続けられるよう定期的なメンテナンスを行うべきです。
ナカジツでは新築住宅をご購入のお客様のアフターケアにも注力しています。中古住宅の購入をご検討で、どう選んだらよいか悩まれている方もぜひご相談下さい。