中古住宅を購入した場合は、どのような税金が課税されるでしょうか?各種の特例の活用により軽減されるものもあります。また、保有しているときに課税される固定資産税はどのように課税されるのか。今回は中古住宅に課税される各種の税金について、詳しく解説していきたいと思います。
目次
中古住宅にかかる税金
〇登録免許税
住宅を購入してその所有権移転の登記をする場合や住宅の購入にあたってローンを組んだ場合には抵当権の設定登記を行いますので、その際に課税されるのが登録免許税になります。
住宅用家屋については、住宅用家屋の軽減税率という特例があります。
原則 | 住宅用家屋の特例 | |
所有権移転登記 | 不動産価額×20/1000 | 不動産価額×3/1000 |
抵当権設定登記 | 不動産価額×4/1000 | 不動産価額×1/1000 |
具体的にイメージができるように金額で当てはめてみますと、
原則 | 住宅用家屋の特例 | |
固定資産税評価額 1,000万円 | 1,000万円×20/1000=20万円 | 1,000万円×3/1000=3万円 |
債権額 2,000万円 | 2,000万円×4/1000=8万円 | 2,000万円×1/1000=2万 |
住宅用家屋の特例の適用を受けるには次の要件を満たす必要があります。
- 自己の居住用の住宅である
- 家屋の床面積が50㎡以上であること。(上限はありません。)
- 1982(昭和57)年1月1日以降に建築されたもの、または一定の耐震基準を満たしたもの
- 取得後1年以内に移転登記をしていること。
なお、上記表の不動産価額とは市町村の固定資産台帳に記載された固定資産税評価額をいいます。
〇不動産取得税
不動産を取得したときに、取得した者に対して、都道府県が課税する税金です。不動産の取得後おおむね半年後に支払いをします。
税率(令和8年3月31日までの取得) | |
家屋 | 不動産価額×3/100 |
土地 | 不動産価額×1/2×3/100 |
家屋については、次の要件を満たす場合には不動産価額から一定の金額を控除される特例があります。
- 家屋の床面積が50㎡以上240㎡以下
- 次のいずれかに該当するもの
- 昭和57年1月1日以降に新築されたものであること
- 昭和56年12月31日以前に新築されたもののうち、新耐震基準に適合しているものとする証明を受けたものであること。
(証明に係る調査が住宅の取得日前2年以内に終了しているものに限ります。) - 昭和56年12月31日以前に新築されたもののうち、平成26年4月1日以降に取得し、取得した日から6か月以内に耐震改修を行い、新耐震基準に適合していることについて証明を受けたものであること。
控除される金額は新築年月日に応じて以下の通りです
新築年月日 | 原則 | 軽減税額相当額 |
昭和29年7月1日~昭和38年12月31日 | 100万円 | 30,000円 |
昭和39年1月1日~昭和47年12月31日 | 150万円 | 45,000円 |
昭和48年1月1日~昭和50年12月31日 | 230万円 | 69,000円 |
昭和51年1月1日~昭和56年6月30日 | 350万円 | 105,000円 |
昭和56年7月1日~昭和60年6月30日 | 420万円 | 126,000円 |
昭和60年7月1日~平成元年3月31日 | 450万円 | 135,000円 |
平成元年4月1日~平成9年3月31日 | 1,000万円 | 300,000円 |
平成9年4月1日以降 | 1,200万円 | 360,000円 |
軽減税額相当額は、控除額×税率3%、つまり実質の減税額を表しています。
次に中古住宅用の土地を取得した場合における不動産取得税の軽減措置についてご紹介します。
以下の適用要件を満たす中古住宅用の土地を取得した場合には不動産価額から一定額を軽減します。
(適用要件)
- 住宅と土地の取得者が同じであること。
- 取得した住宅が前述の家屋適用要件を満たし、土地の取得が住宅取得前後1年以内であること。
(軽減額)次のうちいずれか大きい金額
- ①45,000円
- ②土地の1㎡当たりの価格(※)×住宅の床面積の2倍(200㎡が限度)×税率3%
(※)令和8年3月31日までに取得したときは、価格を2分の1にした後の金額から1㎡あたりの価額を計算します。
実際にどれくらいの軽減が受けられるか、具体的に金額を見てみましょう。
(計算例) | |
家屋 | ・平成7年3月新築 ・延べ床面積130㎡ ・取得価額 1,600万円 ・固定資産税評価額 800万 |
土地 | ・面積170㎡ ・取得価額 1,900万円 ・固定資産税評価額 1,200万 |
①軽減がない場合の不動産取得税の税額
計算 | 税額 | |
家屋 | 800万円(固定資産税評価額)×3%=24万円 | 24万円 |
土地 | 1,200万円(固定資産税評価額)×1/2×3%=18万円 | 18万円 |
計 | 42万円 |
②軽減がある場合の不動産取得税の税額
計算 | 税額 | |
家屋 | 800万円(固定資産税評価額)-1,000万円(軽減額)<0 ∴0 | 0万円 |
土地 | 1,200万円(固定資産税評価額)×1/2×3%-21万円(軽減額※)<0∴0 | 0万円 |
計 | 0万円 |
※土地の1㎡当たりの価格35,000円(1,200万円÷2÷170㎡)×住宅の床面積の2倍200㎡(130㎡×2=260㎡>上限200㎡ ∴200㎡)×税率3%=210,000円>45,000円 ∴21万円
今回のケースでは本来課税される42万円の全額が軽減され、納税額は0円になります。
固定資産税とは
固定資産税とは、マイホームなどの不動産を持っていると市区町村から課税される税金をいいます。
毎年1月1日現在の市町村の固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に課税されます。よって、1月2日から12月31日までの間に不動産の売買や購入をした場合には、その年は固定資産税が課税されません。
〇固定資産税を計算する。
固定資産税の税額は固定資産税評価額×1.4%で計算されます。
なお、同一の市町村内に所有する固定資産の課税標準額の合計額が、次の金額の場合は固定資産税がかかりません。
▼固定資産税の免税点
土地30万円未満、家屋20万円未満
〇固定資産税の評価額について
固定資産税の税額を算出する基準は、原則としてその資産の固定資産税評価額です。
固定資産税評価額は公示価額の70%程度といわれています。固定資産税評価額は3年に一度見直しがされ、各市区町村で固定資産課税台帳を閲覧することもでき、さらには固定資産税評価証明書を発行してもらうことで確認することができます。ちなみに次回の見直しは令和9年度になります。
〇固定資産税評価額に対する特例
固定資産税評価額の特例には、住宅用の土地に対する特例があります。
特例 | |
200㎡までの小規模住宅用地 | 固定資産税評価額×1/6 |
200㎡を超える一般住宅用地 | 固定資産税評価額×1/3 |
なお、住宅用の土地とは、現に人が居住する家屋の敷地のことをいい、建築予定の土地は該当しません。家屋の床面積の10倍の面積を限度とします。
計算例で確認してみましょう。
計算例①
マイホームの敷地 60㎡ 固定資産税評価額 1,500万円
→ 60㎡<200㎡ ∴小規模住宅用地 1/6の適用
→ 税額計算 1,500万円×1/6×1.4%=35,000円
計算例②
マイホームの敷地 340㎡ 建物の延床面積 160㎡ 固定資産税評価額 4,080万円
→ 340㎡>200㎡ 建物の延床面積160㎡×10=1,600㎡>340㎡
∴200㎡を超える部分は一般住宅用地 1/3の適用
→ 税額計算
4,080万円×(200㎡/340㎡)×1/6×1.4%=56,000円
4,080万円×(140㎡/340㎡)×1/3×1.4%=78,400円
56,000円+78,400円=134,400円
固定資産税を納める人や納める時期は?
〇固定資産の保有者
固定資産税は毎年1月1日現在で固定資産を所有している人が納税義務者になります。
ここで所有しているというのは、土地登記簿、建物登記簿に所有者として登録されており、市町村の固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に課税されます。
よって、売買等により実際の所有者が変わっていても、登記簿等の名義変更手続きが1月1日現在において済んでいない場合、前の所有者が納税義務者となり、納税通知が発送されます。
このように法律上はその年の1月1日現在の所有者に1年分の課税通知が行きます。しかし、年の途中で売却した場合、売却して保有していない不動産に対する固定資産税を支払うのはしっくりこないでしょう。しかし、法律上は年の途中に取得した不動産に係る固定資産税の納税義務はありません。
ただ、売買契約を取り交わすうえで、双方の合意はとても大切です。お互いの言い分をすり合わせて、互いに納得するところで契約になると思います。固定資産税の期中精算については、契約をする際お互いの合意で行われることが多いようです。
〇支払い時期
固定資産税の納税は、毎年、市町村長から送付される納税通知書に従い、年4回に分けて納付をします。納期は、原則として4月、7月、12月、2月で市区町村や年度によって異なることはあります。振込用紙による納税のほか、市区町村によっては自動振替による納税やクレジットカードによる納税もできます。クレジットカードによる納税を行うと手数料がかかりますが、カードのポイントもたまりますので、両者を比較してうまく活用してみましょう。
中古マンションと一戸建て、固定資産税が高いのはどちら?
マンションと一戸建てでは、土地や建物に対する条件が違うため、固定資産税も変わります。両社の比較をしてみましょう。
まず、土地の場合、一戸建ての場合、そのまま敷地面積により算出しますが、マンションの場合は、敷地面積を戸数で割った数値になります。つまり、階数が多く、戸数も多いマンションの場合は土地の評価額はより少なくなります。
土地に対する固定資産税は前述した住宅用土地の特例によって固定資産税が軽減されます。同価格程度のマンションと一戸建てを比較すると一戸建ての方が所有する土地が広い場合が多く、軽減前の固定資産税額が高くなりますが、特例によって減税の恩恵をより受けるのは評価額の高い一戸建ての固定資産税になります。
次に建物に対する固定資産税を比較してみましょう。マンションの場合は鉄筋コンクリート構造のものが多く、一戸建ての木造住宅と比べると評価額自体が高く見積もられることになります。また、鉄筋コンクリート造の耐用年数は47年、木造の耐用年数は22年。耐用年数とは建物の価値の目減り分を合理的に算出するために法律で定めた年数のことです。マンションは47年かけて価値を目減りさせていくのに対し、一戸建ての場合は22年かけて価値を目減りさせていきます。耐用年数が短い一戸建てでは、固定資産税の下限までは早く到達する分、マンションより固定資産税は少なくて済みます。
まとめ
今回ご紹介した各種の税金は中古住宅等を取得することにより、皆さんが自ら税金の計算をして、納めるものではなく、都道府県や市区町村が計算して納税通知が送られ、その通知に従って税金を納めるものです。ご紹介した各種の税金の特例についても、基本的にはその適用を加味して税金の通知が来ます。しかし、計算の仕組みを理解して取得に備えることはとても大事なことです。うまく活用してみましょう。
税理士法人コスモス 栗木 博史 先生
【ナカジツ編集部】各減税制度の延長による期限の更新、登録免許税の軽減要件における令和4年の耐震証明書が不要となる改定の記事の更新を行いました。