戦後から高度経済成長期にかけては住宅が不足し、質どうこうよりも不足を補うためにどんどん建築するという時代でした。現在では安全で快適な環境であること、そして省エネで長く使えるように良質な住宅をつくっていこう、という流れになっています。
しかしながら、一般消費者にとって住宅の性能はわかりにくいものです。そこで住宅性能を客観的に評価できる基準が作られました。
おうち探しを始められたならば、「住宅性能評価」についても知ってみてはいかがでしょうか。
目次
住宅性能表示制度とは
住宅性能表示制度の概要
住宅性能表示制度は、国土交通省により施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法、2000年4月1日施行、10月運用開始)に基づいて作られました。国土交通大臣によって登録された第三者機関によって客観的に住宅性能を評価し表示するための基準や手続きが定められています。性能表示事項は以下の引用の通り、10分野34事項から成り立っています。
① 構造の安定に関すること ② 火災時の安全に関すること ③ 劣化の軽減に関すること ④ 維持管理・更新への配慮に関すること ⑤ 温熱環境に関すること ⑥ 空気環境に関すること ⑦ 光・視環境に関すること ⑧ 音環境に関すること ⑨ 高齢者等への配慮に関すること ⑩ 防犯に関すること こうした事項は、次のような考え方に基づき設定されました。 ・評価のための技術が確立され、広く利用できること ・設計段階で評価が可能なものとすること ・外見からでは容易に判断しにくい事項を優先すること ・居住者が容易に変更できる設備機器などは原則として対象としないこと ・客観的な評価が難しい事項は対象としないこと
引用元:国土交通省住宅局住宅生産課監修「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」
この住宅性能表示制度は品確法の3本柱の一つであり、他には「瑕疵担保責任」、後述する「紛争処理体制」があります。
参照:住宅性能表示制度の概要(国土交通省)
住宅性能表示制度のメリット
住宅性能が一定の基準で表示されることは消費者にとって分かりやすいだけでなく、具体的にどんなメリットがあるのでしょう。制度によるメリットをご紹介します。
住宅性能評価書の内容で契約
設計図は図面通りに住宅を完成させるために重要な契約書類です。そこに住宅性能評価書(またはその写し)を添付することで住宅性能評価書の内容を契約したということになります。しかし、契約書面に契約内容に含めないと明記された場合は適用外となります。
第三者機関の評価を受けられる
客観的な評価を行う、国交省によって登録された第三者機関「登録住宅性能評価機関」によって住宅性能評価書が交付されるため安心です。設計図書段階の「設計住宅性能評価書」と施工・完成段階における検査を経た評価結果の「建築住宅性能評価書」の2種類があります。それぞれ法律に基づくマークが表示されます。申請から評価の流れは後述します。
引用元:住宅性能表示制度の概要(国土交通省)
紛争処理を迅速に受けられる
建設住宅性能評価書が交付された住宅は国交省が指定する住宅紛争書路支援センターに申請し、円滑に紛争の対応をしてもらえます。住宅性能評価書の記載内容だけではなく、請負契約、売買契約に関する当事者間のすべての紛争を扱い、申請費用は1件につき1万円です。
住宅性能の比較
住宅の性能が客観的にわかりやすくなったことで、予算や希望に合わせて、性能を高めたり、不要と思う性能を削ったりといったことが可能になりました。
住宅ローン、地震保険において優遇される
評価書の必須項目には耐震等級が含まれているため、取得した耐震等級によって地震保険の割引を受けることができます。耐震等級3では割引率が50%、2で30%、1(建築基準法レベル)で10%です。(2014年7月1日以降契約)
耐震等級3 | 50%割引 |
耐震等級2 | 30%割引 |
耐震等級1 (建築基準法レベル) |
10%割引 |
住宅ローンに関しては、住宅性能表示制度を利用した新築住宅は住宅金融支援機構提携のフラット35での検査を一部省略できる優遇が受けられます。(一定の条件を満たす必要があります)
住宅性能表示制度のデメリット
住宅の性能がわかりやすくなる住宅性能表示制度ですが、メリットの裏にはデメリットが隠れています。自分の希望を明確にして、理想の家づくりにのぞんでください。
等級をあげると建築コストがあがる
等級は高く作ったほうがいいに越したことはない、と思われるかもしれません。しかし、耐震、耐火、劣化の軽減などなど、すべての性能を高めようとすればそれだけ資材や手間がかかり、費用もかさみます。せっかく性能の高い住宅を手に入れても、住宅ローンの返済に追われて理想の生活が送れなければ意味がありません。予算と自分の希望をよく考えて性能を決定しましょう。
住宅性能表示項目の間で両立できない場合がある
こちらはデメリットというよりも注意点です。住宅性能のある項目を高めようとすると、他の項目が低くなってしまうトレードオフとなる場合があります。例えば、構造の強さを高めるためには壁が多い方がよいですが、窓が大きいほうが良い人には相反する内容です。
新築住宅の住宅性能評価10分野
住宅性能評価は設計段階と施工・完成段階の2段階で評価を行います。設計段階で評価を経ていなければ建設段階の検査は受けられません。設計と施工の両工程での評価が必要なのです。設計段階の評価をまとめたものを「設計住宅性能評価書」、施工と完成段階で4回の検査結果をまとめたものを「建設住宅性能評価書」といいます。この2つの段階で評価が行われることで決められた性能で建てられた住宅であるということが証明されます。
必須項目
新築住宅においては全部で10分野32項目あるうち、4分野9項目が必須項目となっています。住宅を購入する消費者の関心が高く、建築後に目視などでは調査しづらい内容が挙げられています。基本的に分野・選択項目が増えるごとに申請に必要な料金が上がり、その他にもRC造か木造といった構造、規模によっても料金が変化します。登録機関の料金表から確認が可能です。
まずは必須の4分野をご紹介します。この分野内に項目が設けられています。
構造の安定
住宅は柱や梁、壁、基礎といった構造躯体で成り立っており、その下を地盤が支えています。構造躯体は屋根や家財などの重さを支えるだけでなく、地震、風、積雪といった自然の影響を受けながら居住者の生活、命を守れなければなりません。構造躯体の強さや地盤、基礎などの項目の性能を7つの項目で評価します。最も一般的な項目に耐震等級があり、1から3までの等級があります。
劣化の軽減
住宅は日夜雨風にさらされ、太陽光や湿気、シロアリなども劣化の大きな一因となります。最初は高い性能を保持していても、すぐに劣化してしまっては意味がありません。この分野では構造躯体の劣化を遅らせるための対策が講じられているかを評価します。等級2で2世代(概ね50~60年)、等級3では3世代(概ね75~90年)の期間、構造躯体などがもつことが定められています。
維持管理・更新への配慮
「劣化の軽減」では耐用年数が長い構造躯体についての基準が定められていました。この分野で耐用年数が短く、長く住宅で暮らすうち点検や交換が必要となる箇所の維持管理が容易に行えるかどうかを評価します。例えば水道の給排水管、ガス管は壁の中を通っているため、予め配慮をしなければ補修が難しくなってしまいます。
●温熱環境
マイホームで快適に過ごすためには温度管理が重要です。夏は暑さから、冬は寒さから守ってくれる家でなくてはなりません。また、エコの観点からも省エネルギーな高断熱の住宅を建てることは重要です。断熱等性能等級は1から7まで定められています。
選択項目
残りの6分野は選択項目です。
- 光・視環境
- 空気環境
- 音環境
- 火災時の安全
- 防犯対策
- 高齢者への配慮
既存住宅(中古住宅)では9分野で評価される
2002年8月から既存住宅を対象とした性能表示制度の基準が定められました。劣化状況などを目視(柱や梁は壁などを破壊しなくては確認できない)で評価し、現状検査・評価書(既存住宅性能評価書)が交付されます。
性能評価の流れ
設計図書など必要書類の評価を行い、設計住宅性能評価書が作成されます。次に住宅の着工が開始された後に施行段階・完工段階の検査を行います。①基礎配筋、②躯体工事完了時、下地張り直前④竣工時の4回現場に立ち入り、図面通りの施工が行われているかを検査し「建築住宅性能評価書」が交付されます。
住宅性能表示制度の申請は誰が行うか
申請は誰がおこなってもよいことになっています。しかし、設計住宅性能評価書の作成(設計評価)を申し込むには設計図面など書類を揃えなければなりませんので、あらかじめ請負業者に相談を行いましょう。
まとめ – 性能を知り表示することで安心のマイホームを
住宅性能表示制度をご紹介しました。この制度によって性能が表示され、「性能=安心」が可視化されました。しかし、予算やライフスタイルに合わせて住宅の性能を決めるのは消費者の皆さんです。性能の等級、数値を理解して最適な組み合わせを見つけましょう。
性能表示制度があるとはいえ、深く知るには住宅の専門知識が必要です。また、その性能は審査時のものであり時間の経過とともに変化します。そのため、住み始めてからの定期的なメンテナンスも欠かせません。
住宅性能表示制度と似たものに長期優良住宅があります。所得税の住宅ローン控除の上限が引き上げられる、固定資産税の優遇が受けられるなどメリットが多い認定制度です。
マイホームづくりの土地探しには、不動産SHOPナカジツへぜひご相談下さい。