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固定資産税とは土地・家屋・償却資産(これらを固定資産といいます。)に対して課税される市町村民税です。毎年1月1日現在、市町村に固定資産を有している方が固定資産税を納める義務があります。毎年3月から4月に該当する市町村から課税通知が届き、4月、7月、12月、翌年2月の4回に分けて税金を納めます。
もし、この固定資産税の納付ができず、滞納になってしまった場合どうなるでしょう?
今回は固定資産税の滞納について細かく解説をしていくことにいたします。なお、今から見ていく内容については、基本的には名古屋市での取扱いを中心に確認をしていきます。市町村によって、多少異なる部分があるかもしれませんので、詳しくは保有する固定資産が所在する市町村のホームページ等で確認いただくか、直接お問い合わせいただくようにお願いいたします。
滞納金の計算方法
それぞれの納付期限までに納付できずに滞納になってしまった場合、納付期限の翌日から納付の日までの日数に応じて、税額に一定の割合を乗じた金額が延滞税として課税されます。
滞納した日数が1ヶ月を超えるか、超えないかにより、割合が変わりますので、注意が必要になりますが、細かい計算は後ほど詳しく解説いたします。
納付できないときは
減免の相談
固定資産が災害により一定以上の被害を受けたときや固定資産をお持ちの方が、生活扶助を受けた時などは、固定資産税等の減免(税額の全部または一部を軽減させること)を受けることができる場合があります。減免を受けようとする方は、減免申請書を、減免申請期限までに固定資産が所在する市区町村を担当する部署へ提出する必要があります。
なお、減免申請期限は、原則として次の1又は2のいずれか遅い方の日です。
- 1.減免事由に該当することとなった日の翌日から起算して30日を経過する日
- 2.減免事由に該当することとなった日以後最初に到来する納期限
減免を受けるための要件について詳しくは、固定資産が所在する市町村の担当課で確認をしてください。
分割の相談
一定の要件に該当し、一時に納付することが困難であると認められる場合には、納税を猶予する制度があります。
災害、病気、事業の休廃業などによって一時に納付することができないと認められる場合や、本来の期限から1年以上たって納付すべき税額が確定したものを一時に納付することができない理由があると認められる場合には納税が猶予される制度です。
以下のいずれかの要件に該当し、一時に納付することができないと認められる場合には、納税者の申請に基づき、1年以内の期間に限り、「徴収の猶予」ができるようされることがあります。
- ●財産について災害を受けたこと、または盗難にあったこと。
- ●納税者又はその生計を一にする親族などが病気にかかったこと、または負傷したこと。
- ●事業を廃止したこと、または休止したこと。
- ●事業について著しい損失を受けたこと。
- ●本来の納付期限から1年以上経過したのちに、納付すべき税額が確定したこと。
また、昨今の新型コロナウィルス感染症の影響で、賃料等の減額があり、固定資産税の納付が困難になった場合には、別途、特例制度がありますので、詳しくは各市町村でご確認をお願いいたします。
延滞金はいつから発生するか
延滞翌日から
固定資産税の納付期限は令和2年度の名古屋市の場合は以下の通りです。
期別 | 納期 | 納付期限 |
第1期 | 4月 | 令和2年4月30日 |
第2期 | 7月 | 令和2年7月31日 |
第3期 | 12月 | 令和3年1月4日 |
第4期 | 翌年2月 | 令和3年3月1日 |
上記の納付期限を1日でも遅れると、延滞金が発生します。
延滞金の税率
延滞金の税率は、納付期限の翌日から1ヵ月を経過するまでと1ヵ月を経過した日以後で税率が異なります。
〇納付期限の翌日から1ヶ月を経過する日まで
原則として「年7.3%」
平成26年1月1日以後の期間は、「年7.3%と「特例基準割合(注)+1%」のいずれか低い割合となります。
令和2年は「年2.6%」になります。
〇納付期限の翌日から1ヵ月を経過した日以後
原則として「年14.6%」
平成26年1月1日以後の期間は、「年14.6%と「特例基準割合(注)+7.3%」のいずれか低い割合となります。
令和2年は「年8.9%」になります。
(注)特例基準割合
特例基準割合とは、各年の前年の租税特別措置法第93条上第2項の規定により財務大臣が公示した割合に年1%の割合を加算した割合をいいます。令和2年の特例基準割合は年1.6%です。
計算例
令和元年度 固定資産税・都市計画税第4期分(納期限令和2年3月2日)305,400円を令和2年4月26日に納付した場合
(計算)
納付期限から1ヶ月を経過するまでの日と1ヶ月を経過する日以後では、上記で示しましたように税率が異なりますので、分けて計算をします。
①納付期限から1ヶ月を経過する日までの期間 (3月3日から4月2日まで→31日間)
305,000円(千円未満切捨)×2.6%×31日/365日=673円(円未満切捨)
②それ以後の期間(4月3日から4月26日まで→24日)
305,000円(千円未満切捨)×8.9%×24日×365日=1,784円(円未満切捨)
合計 ①+②=2,457円→2,400円(百円未満切捨)
※端数処理について
- ・延滞金の計算の基礎となる未納税額千円未満切捨 (税額の全額が2千円未満の場合は、全額切捨)
- ・延滞金の計算で特例基準割合を適用する場合 計算過程でおける円未満は切捨
- ・延滞金の確定金額 百円未満切捨(その確定金額が千円未満の場合は全額切捨)
滞納してしまったときに起きること
建物や土地の差し押さえ
支払いが滞ると催促状が送られてきます。この催促状には固定資産税が未納ですから、いついつまでに支払いをしてください。もし支払いがないと家屋、土地を差し押さえますよとの記載がされています。この催促状を無視していると本当に差し押さえられることになりかねませんの注意が必要です。
延滞金の請求
滞納をした場合、前述でご説明しましたように延滞金が発生します。通常の預金利息はもちろん、金融機関の借入金の利息と比べても年利率が高く、大きな負担となります。
給与や預金の差し押さえ
滞納していると家屋や土地の差し押さえが1番にされるわけではなく、比較的差し押さえをしやすい預貯金や給与の差し押さえがまず、行われます。給与の差し押さえとなると当然勤務先に連絡が入りますので、滞納の事実が勤務先に分かってしまうことになります。
自己破産の免責がなくなる
固定資産税等の税金は、非免責債権になりますので、自己破産してもその支払いが免除されることはありません。
資産が売却されるまでの流れ
督促状が届く
固定資産税は、前述したようにその年1月1日における所有者に対して課税がされ、春ごろにその所有者に対して納税通知書を通知します。
その後市町村は、納付期限までに納付が行われていない納税義務者に対して、納付期日から20日以内に催促状を送付しなければいけません。
これは地方税法に規定がされており、納税義務者からの相談がない場合には、滞納の事実が確認されると速やかに通知が行われます。
財産調査
固定資産税を滞納し始めてから放置をしていると、日々延滞金が課税されます。
そして、催促状を送付しても、催告書送付しても納税がされず、何も相談をせずにそれらの書類を送った日から10日以上を経過した場合には、法律上では滞納者の財産を差し押さえなければならないという法律があるので、その法律に基づき差し押さえの対象となる財産等はないか、財産調査や身辺調査を行いことになります。
財産調査では、金融機関の預貯金や給与の収入状況等も調査の対象となります。
財産差し押さえ
回収が比較的簡単に行うことができる預貯金や給与等の差し押さえがまず行われます。預貯金や給与等で滞納が解消されない場合やほかに押さえる財産がない場合には、動産の差し押さえを行う場合もあります。宝石や絵画、時計など生活に支障がない贅沢品が主な差し押さえ対象となります。また、場合によっては家屋自体が差し押さえの対象になることもあります。
競売にかけられる
差し押さえられた動産等は、競売にかけられ現金化し滞納分の支払いに充てられます。
滞納を防ぐために
支払方法についての確認、日程・金額
固定資産税等の税金は事前に通知が来るので、その金額、期日、支払い方法をしっかりと確認をしておきましょう。特に固定資産税については毎年のことなので、忘れずに確認をしておきたいものです。名古屋市では振り込みによる納税のほか、以下の納税方法もあるので、一度自身にあった納税方法を検討されてみてはいかがでしょうか。
- ①口座振替→銀行やゆうちょ銀行などの自身の預貯金口座から自動的に振り替えて納める。
- ②クレジットカード納税→「名古屋市税納付サイト」からクレジットカード納税の手続きをすることができます。システム利用料が掛かりますが、ポイントの対象となるものもあるようです。
- ③モバイルレジ→納付書のバーコードをスマトフォンのカメラで読み取り、インターネットバンキングを利用して、市税を納めることができます。30万円までの納付書で期限内のものであれば、金融機関やコンビニエンスストアに行かなくても「いつでも、どこでも」納付が可能です。
収入を減らさない
固定資産税は毎年のことですし、住宅ローンの支払や、毎月の固定費等が必要になってくると思います。あらかじめ資金計画を検討のうえ、収入が減った場合の対処方法も検討しておくことも必要です。
相続放棄した財産の固定資産税を手続する
家屋や土地を相続すると所有者が変更になり、当然固定資産税の支払義務も家屋や土地を相続した人に発生します。そして相続の前に滞納していた固定資産税がある場合には、家屋や土地等を相続した人に支払い義務も相続されます。
しかし、相続を知った時点で相続の放棄を行うと滞納している固定資産税は支払う必要がありません。ただし、相続の放棄の手続きがされているかどうかは、市町村ではわからないため、何も手続きをしないとそのまま催促状が届きます。相続の放棄をした場合には、市町村への手続きを忘れずに行う必要があります。
早い段階で役所に相談
固定資産税は滞納すると、家屋や土地が差し押さえられ競売にかけられたり、預貯金や給与が差し押さえられたりしますので、期日までの支払いが難しいようでしたら、早めに市町村役場に相談に行くことが大切です。
滞納を解消した場合
債務整理をしても納税責任はある
固定資産税や都市計画税、所得税、住民税等の税金は、前述した通り非減免債権であり、被免責債権でもあるので、債務整理を行っても、減額されることもありませんし、免除されることもありません。
そして、延滞金が発生している場合には、その延滞金もなくなることはありませんので、税金のすべてを支払い終えるまでは、滞納は解消しません。
任意売却をしても完済を
固定資産税の支払いが滞るほど、生活が逼迫している場合には、住宅ローン等の支払いも難しくなることが考えられます。
このようなときは、不動産を維持することも難しいと考えられますので、任意売却という方法で売却して滞納している税金や延滞金を支払う方法があります。
基本的には差し押さえ登記がされている物件を売却する場合には、差し押さえ登記の解除が条件となるので、必然的に税金の完済が条件となります。
また、住宅ローンの残債がある場合には、売却代金で残債も返済する必要があります。
固定資産税の滞納がある物件の売却については、いろいろなことを加味して進めなければなりませんので、その道に詳しい専門家のアドバイスを受けながら進めるほうがよいでしょう。
減免の申し立て
固定資産税はその不動産の価値によって金額が決められます。
その不動産の価値である固定資産税評価額は3年に一度見直しが行われ、税金の徴収しすぎを防止するため、実勢価格のおよそ70%程度の価格に設定されています。
もし、その価格に納得できない場合には、減免の申し立てをすることができます。
しかし、この手続きをしている間に納付期限が到来をした場合、手続き中だからといって、支払わずにおくと、滞納扱いとなり、催促状が届いたり、延滞金がかかったりしますので、減免の申し立てをする場合であっても、いったん納付期限までに納付をしてください。
もし減免の申し立てが通れば、差額について後日返金されます。
まとめ
固定資産税の滞納についてご説明させていただきましたが、ある日突然に差し押さえられ、競売されるといったことはありません。必ず、催促状や催促の電話等があって次の段階に進みます。大切なのはそれらの通知が来る前に、支払いが困難であれば早めに市町村役場等へ相談にいく、もしも通知が来てしまったとしても、その時から早めに相談に行くことが重要です。
税理士法人コスモス 栗木 博史
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