太陽光発電の設置には、大きな費用が必要です。そこで気になることの一つが、補助金はもらえるのかということ。ニュースなどで国からの補助金が廃止されたと耳にすることがありますが、実際にはどうなっているのでしょうか。今回は、2020年現在太陽光発電関連の補助金について解説します。
太陽光発電に関する国からの補助金は廃止された!?
まずは、太陽光発電に対する、国からの補助金の有無について見ていきましょう。
国からの補助金はなくなった
2020年10月現在、太陽光発電システム単独の導入に対する、国からの補助金はありません。
1994~2005年度 | 新エネルギー財団(NEF)の補助金交付 |
2006~2008年度 | 補助金なし |
2008~2013年度 | 太陽光発電普及拡大センター(J-PEC)の補助金交付 |
2014年度~現在 | 補助金なし |
補助金制度は、太陽光発電の普及を目的として1993年からスタート。2005年に一旦停止したのち、2008年度に再開されました。
当時は設置費用が非常に高額だったため、補助金による負担軽減が必要でした。しかし普及が進んで設置費用が下がったことにより、補助金は2013年度までで終了しています。
しかし現在も、太陽光発電関連の支援がすべて終わったわけではありません。
各自治体によっては補助金がある
国からの補助金は終了しましたが、お住まいの地域によっては自治体の補助金制度に申し込めます。
次の表は、戸建住宅の太陽光発電システム設置に対する、自治体の補助金の一例です。
自治体 | 補助金 | 申請期間 |
東京都港区 | 1kWあたり10万円 (最大40万円) |
2020年4月1日~2021年2月26日 |
東京都江東区 | 1kWあたり5万円 (最大20万円) |
2020年4月1日~2021年3月15日 |
愛知県名古屋市 | 築10年超1kWあたり3万円(最大5kW) 築10年以下1kWあたり2万円(最大5kW) |
2020年4月20日~2021年2月26日 |
愛知県岡崎市 | 1kWあたり1万円 (最大4万円) |
2020年4月1日~2021年3月31日 |
大阪府豊中市 | 1kWあたり1.5万円 (最大6万円) |
2020年5月18日~2021年2月26日 |
ほとんどの自治体で先着順の受付、予算上限に達し次第終了するとアナウンスされています。
補助金額や条件、申請方法など自治体によって異なるため、一度お住まいの地域の制度について確認してみましょう。
太陽光発電における蓄電池への補助金は期間限定で存在
太陽光発電単独での補助金が終了した後、国では蓄電池への補助を実施していました。家庭用蓄電システム1kWhあたり2万円、最大60万円が受け取れるという、非常に大きな金額の補助金です。
参考/一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)/災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金
こちらは一旦締め切られた後、追加公募もありましたが、2020年7月に予算額が超過したため受付を終了しています。蓄電池についても、お住まいの地域によっては自治体独自の補助金制度があるため、一度調べてみると良いでしょう。
次表に、自治体による蓄電池の補助金制度の一例を示します。
自治体 | 補助金 | 申請期間 |
東京都港区 | 1kWhあたり4万円 (最大20万円) | 2020年4月1日~2021年2月26日 |
東京都江東区 | 設置経費×5% (最大10万円) | 2020年4月1日~2021年3月15日 |
愛知県名古屋市 | 1kWhあたり1.5万円 (最大6kWh) | 2020年4月20日~2021年2月26日 |
愛知県岡崎市 | 1kWhあたり1万円 (最大7万円) | 2020年4月1日~2021年3月31日 |
大阪府高槻市 (太陽光発電システムと蓄電池の同時設置) | 設置経費の3分の1 (最大10万円) | 2020年5月18日~2021年2月26日 |
こちらも市区町村によって、受給条件や金額などさまざまです。予算次第で申し込みを締め切られるため、早めに確認されることをおすすめします。
ZEHの補助金
現在、国が推し進めているのが住宅のZEH化。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、ZEHとは「使うエネルギーと創るエネルギーの収支をゼロ以下にする住宅」のことです。
■ZEHの3要素
- 高断熱:住宅の高断熱化で、冷暖房効率を上げる
- 省エネ:LEDや高効率の給湯システムなどで、消費エネルギーを減らす
- 創エネ:太陽光発電などの再生可能エネルギーシステムを導入し、消費エネルギーを上回るエネルギーを創る
ZEHに関しては、2020年現在も国からの補助金が継続されています。住宅に太陽光発電を設置するなら、高断熱化や省エネとあわせて考えると良いでしょう。
ZEHの種類 | 概要 | 補助金額 |
ZEH | 通常のZEHの定義を満たす住宅 | 60万円/戸 |
ZEH+ | 通常のZEHよりハイレベルな省エネ性能をもつ住宅 | 105万円/戸 |
ZEH+R | ZEHの基準+災害時の停電に備えた住宅 | 115万円/戸 |
それぞれ定額の補助金に加え、蓄電池や燃料電池、V2H充電設備などに対する加算額も設定されています。詳しくは、下記のZEHに関する記事をご覧ください。
【関連記事】住む人にも環境にも優しい“ZEH”の家とは
太陽光発電の設置は今からでも遅くないのか
これまで見てきたように、国が太陽光発電単体の設置に補助金を支給していた時期に比べると、太陽光発電設置のメリットが薄いと感じる方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、今だからこそ太陽光発電を設置したほうが良いという見方もあります。以下に理由を述べていきます。
太陽光発電のメリット
初期費用が安くなっている
次のグラフを見てわかるように、太陽光発電システムの初期費用は年々下がっています。
新築における設置費用を、補助金が支給されていた2013年と、補助金のない2019年とで比べてみましょう。
平均設置費用(新築) | 容量5kWの場合 | |
2013年(補助金あり) | 39.1万円/kW | 195.5万円 |
2019年(補助金なし | 30.6万円/kW | 153万円 |
容量5kWの太陽光発電システムの場合、2019年の方が約43万円も安くなる計算です。
「補助金があるときに設置しておけばよかった」と後悔された方もいるかもしれませんが、初期費用に関していえば、むしろ今の方が導入のハードルが低くなっていることがわかります。
初期費用が低価格化した理由としては「①太陽光発電が普及してパネル等が安く生産できるようになった、②工事の技術が向上して設置コストが安くなった」という2点が挙げられるでしょう。
発電効率が上がっている
太陽光発電の技術向上により、発電システムの効率もアップしています。つまり「少ないパネルでも、多くの電力を生み出せるようになった」ということです。
屋根に載せられるパネルが少ない住宅でも、最新のパネルであれば十分な電力を生み出せる可能性があります。都心部や狭小地にお住まいの方でも、今なら太陽光発電によるメリットが受けられるのです。
電気代が高くなってきている
さらに太陽光発電の導入を後押ししているのが、電気料金の高騰です。
引用:2.電気料金はどのように変化していますか? | 日本のエネルギー2018 「エネルギーの今を知る10の質問」 |広報パンフレット|資源エネルギー庁
2010年度に1kWhあたり平均20.4円だった家庭向け電気料金は、2018年度には25円に。東日本大震災などをきっかけに、約23%も上昇しています。
太陽光発電で生み出した電力を自宅で使用すれば、電気代が節約できます。電気代が高くなっている今だからこそ、自家消費によるメリットは大きいです。
災害時への備えになる
さらに太陽光発電は、非常用電源としても活用できます。台風や地震といった災害で長時間の停電があったとき、スマートフォンが充電できたり、照明や冷蔵庫が使えたりと、私たちを助けてくれるでしょう。
ただし太陽光発電だけでは、昼間の電気しか確保できません。夜間も電気を使いたい場合は、蓄電池も合わせて導入する必要があります。
太陽光発電の注意点
初期投資が必要
太陽光発電を導入するためには、100万円を超える設置費用がかかります。
2020年度の家庭用太陽光発電の初期費用相場は1kWあたり29万円。容量5kWの設備を導入する場合、約145万円の費用がかかる計算です。
初期費用が下がっているとはいえ、出費としては決して小さくはありません。本当にメリットが得られるのか、しっかり検討する必要はあるでしょう。
メンテナンスが必要
従来、住宅用太陽光発電(10kW未満)では、設置時の安全基準さえ満たしていれば、その後の点検は義務ではありませんでした。しかし2017年の改正FIT法で、10kW未満であっても定期的なメンテナンスが義務化されています。
2020年度の住宅用太陽光発電の運転維持費の相場は、1kWあたり年間0.3万円。5kWの太陽光発電であれば、年間1.5万円の維持費を積み立てることで、定期点検やパワコンの交換費用が捻出できるという計算です。
メンテナンスは義務であるのはもちろん、発電量維持や安全のためにも重要です。太陽光発電の導入を検討するときには「初期費用+メンテナンス費用」でシミュレーションしましょう。
売電価格が下がってきている
太陽光発電を導入すると、日々の電気代を削減しつつ、余った分は売電して収入を得ることができます。この売電価格に関して、「固定価格買取制度(FIT制度)」に基づき10年間は同じ価格での買い取りを保証されている点が、日本における太陽光発電の大きな魅力の一つです。
しかし、次のグラフを見るとわかるように、売電価格は年々下がってきています。
参照:「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案」2020年9月 資源エネルギー庁
これを見て「いくら初期費用が下がっているとはいえ、ちゃんと回収できるの?」と心配される方もいますよね。
しかしFIT制度における売電価格は「初期費用を回収できる価格」に設定されています。
これまでは高額の初期費用を回収するために、補助金や高い売電価格の保証が必要でしたが、今ではこれらのサポートがなくても元が取りやすくなってきたということです。
また、国からの補助金が支給されていた頃は、「国の補助金+地方自治体の補助金」を考慮して売電価格が設定されていました。しかし国の補助金が廃止されてからは、自治体の補助金については考慮しない形で売電価格が設定されています。
つまり、自治体からの補助金が受給できる方は、その分が丸々お得になるということです。
太陽光発電関連の補助金に期待
太陽光発電単体の設置に対する、国からの補助金は打ち切られました。しかし補助金が終了したからといって、「太陽光発電を今から設置するのは遅い」というわけではありません。
補助金の終了は、これまで大きな障壁であった高額な初期費用の負担が軽減され、太陽光発電を取り巻く状況が一歩進んだことを意味します。
ZEHのような新しい補助金制度も設けられており、太陽光発電市場は今後の発展も期待される分野です。これから導入を検討される方は、必ず最新情報をチェックしてくださいね。
まとめ
これまで、太陽光発電設置における最大のハードルが、初期費用の高さでした。補助金の廃止と売電価格の低下は残念なことのように感じるかもしれませんが、ある意味これは大チャンス。初期費用が高すぎて諦めていたご家庭でも、太陽光発電を設置できるようになったということを意味します。
なお、国からの補助金は終わってしまいましたが、県や市町村によっては独自の補助金制度を行っているケースもあります。太陽光発電を検討される際には、ぜひお住まいの自治体の補助金情報をご確認ください。
■執筆:住宅ライター 村田日菜子さん
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