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日常生活においてあまり意識することはありませんが、実は住環境を左右するほど重要なポイントとなる『用途地域』。
住居系用途地域と商業系用途地域、工業系用途地域の3つに分かれていて、住居や商業、工業をエリア別に整備することで住環境を守る、とても大切な制度です。
今回のタイトルでもある『第一種・第二種中高層住居専用地域』は、その用途地域のうち、住居系用途地域に分類されています。
中高層の住宅とは、一般的に3階以上のマンションのような集合住宅や、高さのある住居用の建物のことを指しており、第一種・第二種中高層住居専用地域は、そのマンションなどの共同住宅を中心に、良好な住居の環境を保護する目的を持つ用途地域となります。
第一種・第二種中高住居専用地域の特色を明らかにするとともに、各地域の暮らしやすさについて見ていきましょう。
目次
第一種中高層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域は住環境を守るために、中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための用途地域で、主に3階以上のマンションをはじめとする、中高層の集合住宅を建築していく動きが見られます。
建設できる建物に制限が多く、活気を求めるというよりも、落ち着いた暮らしを提供するエリアであると言えます。
第一種中高層住居専用地域で建てられるもの
第一種中高層住居専用地域は、住居としての環境を保つことが目的のため、中高層マンションや戸建住宅、住環境を損なわない図書館や学校などは建設することができます。
ただし、完全に住居のみの建物だけではなく、店舗兼住宅や、業種によって2階以下、かつ150㎡以内や500㎡以下の店舗も建築が可能となります。
【建てることができるもの】
・大学、高等専門学校、専修学校
・病院
・老人福祉センター、児童厚生施設
・店舗、飲食店(規模500㎡以内、地下含め2階以下のみの物品販売店か飲食店に限る)
・自動車車庫(床面積合計300㎡以内、3階以下)
・銀行の支店、損害保険代理店、不動産会社の店舗、税務署、警察署、保健所、消防署
【建てることができないもの】
・規模の大きい店舗
・住環境を損なうパチンコ店やボーリング場などの遊戯施設
・工場
・危険物を取り扱う施設
・事務所(50㎡以下の住居兼用事務所のみ可)
大学などは建設することが可能であるものの、オフィスビルは建てることができないため、大きな会社が建築されることはありません。
より詳しい内容はこちら…用途地域とは?土地探しに役立つ用途地域の一覧とその応用
第二種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域は、住宅と公共施設や小中規模の店舗が混在し、それなりに面積が大きめの店舗や飲食街が並ぶなど、第一種中高層住居専用地域よりも制限が緩和されています。
建物はそこまで密集せず、道幅もゆとりがあって、景観を保っています。
第二種中高層住居専用地域内にレジャー施設や娯楽施設こそないものの、生活に必要な施設は整っているため、不都合は感じにくいでしょう。
都市部の駅前にはあまり設定されず、少し駅から離れた立地に多いことが特徴ですが、郊外の場合は駅周辺や幹線道路沿いに設定されている場合もあるため、公共交通機関を不自由なく利用できる立地も多く存在しています。
中高層住居専用と言うだけあってマンションやアパート経営に適しており、物件も多数みられます。また、幼稚園や小・中学校、高校も近くにある場合が多く、ファミリー層に人気がある地域です。
そして、日常での買い物ができる店舗なども周辺に点在しているので、賃貸を探す家族世帯にもおすすめです。
第二種中高層住居専用地域で建てられるもの
第二種中高層住居専用地域は第一種中高層住居専用地域より比較的制限が緩くなり、建築できる施設が多くなります。第一種中高層住居専用地域に建築可能なものに加えて、床面積1500㎡以内で2階以下の店舗や飲食店、事務所などの施設が建てられるようになります。
しかし、第二種中高層住居専用地域でも遊戯施設や工場の建設が禁じられています。
極端に賑わうことや、騒音で悩まされる心配はないと考えても良いでしょう。
【建築ができないもの】
・パチンコ屋、カラオケボックス、劇場、映画館、ボーリング場、プールなどの遊戯施設
・300㎡を超える駐車場
・倉庫業の倉庫など
・工場
・ホテル又は旅館
・自動車教習所
・15㎡以上の畜舎
・3階以上の階への店舗や飲食店の建設
・2階以上、かつ床面積が1,500㎡を超える事務所等
※いくつかの店舗や事務所が混在している場合、制限面積はそれぞれの床面積を合算した面積
より詳しい内容はこちら…用途地域とは?土地探しに役立つ用途地域の一覧とその応用
第一種・第二種中高層住居専用地域を比較
第二種中高層住居専用地域の方が第一種中高層住居専用地域よりも、用途制限が緩和されていることがお分かりいただけたことと思います。
以上の内容を踏まえ、次の段落では実際の暮らしを想定しながら、住みやすさを検証していきましょう。
静かに暮らしやすい地域はどっち?
暮らしやすさを比較するのであれば、第一種中高層住居専用地域が暮らしやすいと言えます。
第一種中高層住居専用地域は建設可能な建物の用途や建物自体に厳しい制限があり、住居専用地域として環境が保たれています。
人が集まるような大型のショッピングモールや娯楽施設はありませんが、規模の小さい店舗は点在しているため、静かな環境が保たれながらも不便を感じることなく、落ち着いた生活が送れる地域となります。
マンションが多く、賃貸物件を探すにしても選択肢が多いため、条件に合った物件を探しやすいエリアと言えるでしょう。
生活に便利な地域はどっち?
生活の便利さで考えるならば、便利な可能性が高いのは第二種中高層住居専用地域といえるでしょう。
第一種中高層住居専用地域に比べると規制が緩和されており、1500㎡以内の店舗や飲食店、ガソリンスタンドなども建設することができます。幼稚園や学校なども建てることができるため、育児や通学を想定した場合は、非常に便利な地域であると考えられます。
第一種・第二種中高層住居専用地域の各制限
第一種・第二種中高層住居専用地域には建物自体への制限があり、基準をクリア出来なければ建てることすらできません。住環境を守るために、環境面に配慮された制限もいくつか設けられています。
次からは代表的な制限である『建蔽率』『容積率』『日影制限』について解説いたします。
建蔽率(建ぺい率)
建物を建設する際に必ず考慮する、建蔽率。
建蔽率とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことを言います。第一種・第二種中高層住居専用地域は住居専用地域となるため、商業系などの用途地域に比べて、建蔽率は少なめに設定されているのが特徴です。
第一種・第二種中高層住居専用地域では、都市計画によって30%~60%の範囲で決定します。土地によって建ぺい率が何パーセントになるか異なるため、同じ中高層住居専用地域でも建築できる建物の面積は変化しますので、都度確認することが大切です。
第一種・第二種中高層住居専用地域は、30%~60%の選択肢がありますが、全国的にみると多くは60%で指定されていることが多いでしょう。
容積率
容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合のことです。容積率の高い方が、その分延べ床面積を広くとれるため、高い建物を建てられるようになります。
第一種・第二種中高層住居専用地域は、100%~500%の範囲内で建ぺい率と同様に都市計画で決定します。
2階建てかせいぜい3階建てしか建てられない第一種低層住居専用地域の容積率は50~200%以内となっている一方で、第一種・第二種中高層住居専用地域では最大500%まで可能に!
第一種・第二種中高層住居専用地域は中高層建物を許容している用途地域となり、極端な高層建築物を許容している商業地域を除く、他の用途地域と同じくらいの容積率となっています。
日影制限
日影規制は建築物周辺の日照を確保するために、一定時間以上日影にならないようにする制限です。第一種・第二種中高層住居専用地域では高層建築物を一部許容していますが、住環境に配慮する観点から、この制限が設けられています。
最も日照時間が短い12月22日頃の冬至の日を基準とし、隣地に対し所有する建物による日影が一定時間以上作られないよう、建物の高さを制限します。
日影制限は用途地域に加えて、指定容積率によって制限内容が異なりますので、事前に調べておくと良いでしょう。
まとめ
第一種・第二種中高層住居専用地域は、ある程度の高さを有したマンションを容認しながらも、このエリアに住む人々が日常生活を支障なく快適に過ごせる環境を守り、整備することを目的としている用途地域ということが分かりました。
大きなショッピングセンターがなくても、日常での買い物に困らない店舗が点在しており、比較的住みやすい環境で生活が可能な地域であると言えるでしょう。
地域によってアクセスに不便さを感じる場所もあるため、事前に周辺環境のチェックをしておくことがおすすめです。
このような用途地域を知ることで、どのような建物が建っていてどのような街並みかをある程度想像することが可能になります。
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<その他の用途地域についてはこちら>・・・『用途地域』記事一覧
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