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家を建てる際にしっかりと確認しなければならないことは沢山あると思いますが、その中でも大事なものに建築基準法というものがあります。ルールを知らずに勝手に進めてしまい、いざ建てられない、思っていたようにならなかったということがないよう、細かな部分は専門家にまかせるとしても、大まかなルールはご自身で知っておいたほうが良いと思います。
目次
建築基準法とは
建築基準法とは、国民の生命や財産を守るため、建物を建築、維持する際に一定のルールを定めたものです。この法律の下に施行令、施行規則、関係告示が定められ、これらのルールによって建物を安全に維持し、人々の暮らしを守るものとなっています。この建築基準法には大きく分けて集団規定と単体規定があり、集団規定はその地域における守るべきルール、単体規定はその建物において守るべきルールが定められています。自分の土地だから好きに建物を建てていいというわけではなく、その地域の環境を守るため、また倒壊や火災によって周りに被害を及ぼさないため、その建物を使う人が健康に暮らせるために細かなルールが定められています。
また、建築基準法も制定されたままずっと同じではなく、時代の変化に合わせ改正されています。構造的な部分は多くの災害を経て強化されてきており、より安全に安心して暮らせるようになってきています。また以前にはなかったルールも追加され、例えばシックハウスに関するもの、省エネルギーに関するものなどが加わって、日々変化していく様々な問題に対応してきています。
一戸建てと建築基準法
例えば、皆さんがある土地に自分の家を建てようとした際にどのような制約があるのでしょうか。まず、良い住環境を得るために土地の選定は重要なポイントだと思いますが、どこにでも住宅が建てられるわけではなく、建てられない地域もあります。まず都市計画区域内なのか、外なのかという点、都市計画区域内でも市街化区域なのか、市街化調整区域なのかと細分化され、市街化区域であれば用途地域というルールによって建てられる建物の種類や大きさ等に制限があります。市街化調整区域なら用途の制限がないというわけではなく、建物を建てるためには厳しい制約があり、一定の条件を満たさなければ建物は建てられません。また都市計画区域外では建築に対する条件は緩くなりますが、インフラが整っていない、買い物や仕事への移動に不便であるといったことがあり、安易に土地の価格が安いからといって飛びつくのではなく、しっかりと調べる必要があります。
●用途地域
住宅であればほとんどの地域に建てることができますが、工業専用地域には住宅は建てられません。また用途地域には住居系地域があり、住宅を建てるのに適した地域を定めています。商業系の地域に住宅を建てることは可能ですが、様々な要因により購入価格が高くなったります。また遅い時間まで賑やかだったり、不特定多数の多くの人が訪れたりと、落ち着いた生活には不向きな部分もあります。工業系の地域についても同様に騒音や振動などによって静かな暮らしとはならない部分もあります。まわりに住宅が多いからといって商業系や工業系の地域に家を建てても、しばらくすると隣に商業施設や工場が建ってしまうことも考えられます。
●建ぺい率、容積率、高さ制限
用途地域によって、建ぺい率や容積率、高さ制限といった建物の規模に関する制約が決められています。建築基準法だけではなく、その他にも景観上のルールや、地区計画等で制約を受ける場合もありますので行政への確認が必要です。建ぺい率とは、建物を建てようとする土地の面積に対して、上空から見て何%までなら建物を建てられるというルールです。例えば土地が100平方メートル、建ぺい率が60%であれば、その土地には上空から見て60平方メートルまで建てられます。軒の庇等には緩和もありますが、概ねこのようなルールです。また容積率が200%であれば、延べ床面積で200平方メートルまで建てられます。高さの制限については、10m、12mといった絶対高さの制限や道路斜線、北側斜線などの少し複雑なルールもあります。その他にも日影規制によって制限を受ける場合もありますので詳しくは専門家に相談してください。
●接道義務
建築するための土地は道路に面していなければいけません。これはどのような道路でも良いわけではなく、法的に認められた道路でなければいけません。原則として幅員4m以上の道路に2m以上接していなければ建物を建てることができませんが、敷地の形状によっては(旗竿状の敷地)2.5m、3m以上の制限がある場合もあります。道路のような形状をしていても実は個人の所有地で道路として認められないものもあります。ただし個人の所有であっても行政に認定されているものもありますので、しっかりと確認する必要があります。
●防火地域と準防火地域
建物が密集するエリアに指定され、火災が発生した際に広く燃え広がらないよう、防火上の措置をとることが義務付けられた地域です。例えば外壁や軒裏、窓等の部分に一定時間火熱にさらされても燃焼しない材料や構造にする。また、建物全体を耐火建築物、準耐火建築物にしなければならない場合もあります。当然その他の地域と比べて建築コストは増加します。
●地震などへの対策
近年、地震や台風などの災害に対し関心が高まっています。安心して生活するためには建物の構造は非常に大事なポイントです。建築基準法でも当然構造に関するルールがありますが、ここでで定められているのは最低基準です。より大きな安心を得るためにはさらに地震に強い建物にすることになりますが、いたずらに強度を上げていってもコストも上がり、使い勝手が悪くなっては日々の生活に支障が出てしまいます。バランスよく強度を上げ、使いやすい家となるように考えなければいけません。また耐震等級という言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、これは建築基準法ではなく、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)で定められたものです。耐震等級1は建築基準法をクリアしたもの、等級2はその1.25倍、等級3は1.5倍となり、より地震に対して安全な構造となります。
その他、健康な暮らしを守るために部屋に対する窓の大きさについても制限があります。原則として住宅の居室(継続的に使用する室)にはその部屋の面積に対して1/7以上の光を採るための窓が必要です。この窓もあれば良いというわけではなく、境界からの離れや高さによって光の入り方がかわりますので、注意が必要です。敷地いっぱいに建ててしまうと、窓から光が採れず、居室として使用できない場合もあります。また省エネルギー性についても重要になってきており、しっかりと断熱についても確認していく必要があります。
建築基準法に違反するとどうなる?
建築基準法に違反するとどうなるのか。建物を建築する際には建築確認申請という申請をし、建築しようとする建物が法令に適合しているのかどうか行政や指定確認検査機関によってチェックされます。そこで申請したものと異なるものが建てられた場合、是正し再度確認を受け、検査に合格しないと使用禁止等の制限や罰則を受けることになりますので、ルールを守りしっかりと建てることが必要です。また中古物件で違反建物を購入すると、再建築不可であったり増改築できない場合もあります。このあたりは専門家に確認し、間違いのないようにしてください。
まとめ
建築基準法について大まかに説明しましたが、実際に建物を建てる際には、さらに細かく、多岐にわたり様々なルールが設定されています。家を建てる際には、安心して任せられる専門家に相談してマイホームの夢を叶えてください。
■執筆:一級建築士 日比谷 啓太 先生