800万戸以上あるという空き家。国もその対策に本格的に乗り出すなど、社会問題ともなっています。この空き家、利用する予定があるならともかく、利用予定がないのなら売却も選択肢です。空き家はこれまで利用されておらず、維持管理も万全とはいえません。そんな空き家の売却方法やそれに係る費用について考えていきましょう。
目次
空き家の売却方法① 家を解体せずに売却
空き家の売却方法として、まず家を解体せずに売却する方法の特徴をみていきましょう。
この方法は、売主の手間もかからない上、高く売れる可能性もあります。その反面、建物の状態次第では逆に売れにくくなるものなのです。建物付きで売却する際の特色を確認していきます。
高く売れる
まずは売却金額についてです。建物の状態にもよりますが、建物付きの方が高く売れる可能性があります。木造住宅では概ね築20年までであれば中古戸建として建物価格を加算して売却可能です。ただ、新築時の建物価格から考えると、中古住宅の建物価格はかなり割安となります。ちなみに20年超であれば、カテゴリーは古家付き土地とされるケースが多くなります。
手間があまりかからず、解体費のお金の持ち出しもない
建物付きで売却すれば売主は手間がかかりません。更地にしようとすると建物を解体する必要があります。これにはお金も手間もかかるもの。特に解体費は、右肩上がりで上昇しています。時間や手間を考えると建物付きで売却した方が楽なのです。
家によっては買主が見つかりにくい
建物によっては買主が見つかりにくいこともあります。特に日本人は新築好きです。古い建物では設備も劣化している可能性があります。その建物が広すぎたり、狭すぎたりして買主の希望と合わない可能性もあるのです。建物付きで売却しようとすると需要とのミスマッチが起きやすくなります。
空き家の売却方法② 家を解体し更地にして売却
空き家を売却するもう一つの方法は、家を解体して更地として売却することです。更地にすることでは自由に建物を設計することができます。場合によっては、建物付きよりも高く売ることだってできるのです。その一方で、更地化するのに時間や手間がかかります。更地売却の特色について確認してみましょう。
買主が見つかりやすい
家を探している人の中には、注文住宅を建てようとしている人もいます。こうした人たちは建物付きよりも更地での購入を希望するもの。この他建売業者(建売住宅を建てて販売する会社。ハウスメーカーなどとも)も買主候補となります。日本では更地の方が買主を見つけやすいのです。不動産業者に相談しても、更地化をすすめる場合もあります。
古家付き土地より高く売れる
古家付き土地は買主が建物を解体する必要があります。このため、解体費用を差し引いて価格を設定することが必要です。建物を解体することは買主にとっても負担になります。この点からも手間賃を引いて価格設定をする必要があるのです。売主の手で更地にしておけばこうした心配はありません。すぐに建物が建てられる土地として価値も上がります。
解体の時間や費用を負うことになる
更地にするということは、建物の解体を売主が行います。当然ながら解体費用は売主負担です。解体費用は建物にもよるものの、100万円を超えることも。お金だけでなく、時間や手間もかかります。解体業者を知っているということはあまり多くありませんので、不動産業者に紹介してもらうとよいでしょう。
空き家を早く売却した方がよい理由
利用しない空き家は早く売却するに限ります。持っていても費用がかかり、管理が行き届かないからです。管理がしにくい空き家は隣家や近所に迷惑をかけることもあります。これらは空き家であることの弊害なのです。一方で税負担を考えると早く売却するメリットがあります。空き家を早く売却したほうがよい理由をみていきましょう。
維持費にお金がかかる
まずはお金の話です。空き家に限らずですが、家を維持するにはお金がかかります。固定資産税は毎年必ず課税されるもの。このほか、都市計画税が課税される場所もあります。家は放置しておくとどんどん劣化が進むものです。メンテナンスのための費用もかかります。マンションの場合は管理費や共益費が利用の有無にかかわらず徴収されてしまうのです。空き家は持っているだけでお金がかかってしまいます。
早く売ると3,000万円特別控除を受けられる可能性がある
こちらは税金の話です。居住しなくなってから3年を過ぎる年末までに売却すると、売却益から3,000万円を控除することができます。古くから所有している不動産は取得額がとても安いもの。このため、売却益が発生することがあります。その売却益を差し引いて税金を少なくすることができるのです。これならば早く売却しようという動機が働きます。
放置すると近所に迷惑をかける可能性がある
空き家はなかなか管理や監視が行き届かないものです。一戸建であれば、樹木の越境などで隣家に迷惑をかける可能性があります。また、安全上も空き家は問題です。不審者や浮浪者が居付いてしまう可能性もあります。不審火が発生しても空き家では気づきません。空き家を放置しておくと隣家や近所に迷惑をかける可能性があるのです。
負の遺産になってしまう可能性がある
不動産は資産ではあるものの、利用価値のない不動産は負の遺産になる可能性もあります。「負動産」や「腐動産」のような造語もあるくらいです。こうした利用価値のない不動産は活用することもできず、お荷物扱いとなってしまいます。家族間でも押し付け合いが発生してしまうのです。
空き家を売却する手順
空き家を売却する手順は居住中の家を売却する場合とほとんど変わりません。ただ、使用していなかった部分が利用できるか、建物自体に不具合はないか、といった点を見ることは重要です。こうした空き家売却の手順は多くの不動産会社は心得ています。空き家を売却する手順をみていきましょう。
複数の不動産会社で査定
売却に先立って、不動産会社に査定を依頼します。空き家が自宅から離れた場所にある場合もあるでしょう。その際は、空き家の近くの不動産会社に依頼をします。自宅から近くの不動産会社のほうがやり取りが楽だと思われるかもしれませんが、空き家の近くの現地の不動産会社に任せた方が販売活動がスムーズに行えます。
査定依頼は必ず複数の不動産会社に依頼しましょう。一社だけだとその査定額が高いのか安いのか、わからないからです。また、不動産会社の中には高い査定額を出して媒介契約を結び、その後売却価格を引き下げさせる不動産会社もいます。こうしたことに引っかからないためにも、複数の不動産会社に査定を依頼することが必要です。
不動産会社を決める
査定額が出揃ったら不動産会社を決定します。他の査定額とあまりにかけ離れた査定額を出してくる不動産会社は敬遠しましょう。自分が相場だと思う金額か、それより少し高いくらいの査定額を出してきた不動産会社が最適です。この他、不動産会社で迷った場合は担当者の人となりで決めてもよいでしょう。
価格の決定
不動産会社と売却価格を決定します。基本的には査定額とほぼ同額となるはずです。最初の売り出しでは、少々高めの価格で売り出してもよいでしょう。値下げをすることはできますが、売却中に値上げをすることはできないからです。
買主と交渉
買主が現れたら交渉に入ります。交渉は主に価格についてです。価格以外には条件交渉があります。引渡しの時期、引き渡す設備の範囲など内容は様々です。人気の物件であれば売主が強気に出られますが、そうでない場合は買主の方が強くなるケースもあります。
契約成立
無事に条件が合意に達し、双方に問題がなければ売買契約を締結します。売買契約の前に不動産会社は重要事項説明を買主に対してする必要があるのです。不動産会社が重要事項説明書を作成してくれるので売主はこの作成に協力しましょう。売買契約は調印のみであっさりと終了です。買主はこの後住宅ローンの本審査に入ります。ローン審査に合格したら晴れて物件の引き渡しです。物件の引渡しと所有権移転登記で不動産の売買は全て終了します。
空き家の売却費用と税金
空き家を売却する際にもそれなりのお金と税金がかかります。相続も絡むとさらに相続登記の費用も必要です。空き家の状態によっては解体費用がかかる場合もあります。空き家を売却した結果、売却益が出た場合、所得税までかかる可能性があるのです。空き家の売却費用と税金についてみていきましょう。
相続登記費用
相続登記は財産がどれくらいあるかによって金額が変わってきます。不動産の場合は登録免許税が不動産の評価額×0.4%。例えば評価額2,000万円の不動産を持っていれば、8万円となります。これに司法書士手数料が6万円から10万円程度。さらに実費が加算されます。
2000万円×0.4%=8万円 さらに司法書士手数料6~10万円+実費
仲介手数料
仲介手数料は売買が成立した際に不動産会社に支払う手数料です。仲介手数料は空き家であっても居住中の家であっても等しくかかります。その割合は物件価格の約3%。仮に2,000万円で売却ができたとするとその仲介手数料は消費税込みで72.6万円となります。
(2000万円×3%+6万円)×110%(1+消費税)=72.6万円
解体費用
更地にして売却する場合には空き家を解体する必要があります。その解体費用は建物の規模、地域などによって大きく変動するものです。特に近年はゴミの分別、リサイクル等が厳しくなっています。このため手間がかかるようになり解体費用はずっと右肩上がりです。戸建て住宅であっても100万円以上かかる場合もあります。
譲渡所得税
空き家を売却して売却益が出た場合、所得税などがかかる場合があります。譲渡所得税というのは通称で所得税(譲渡所得)、住民税、復興特別所得税の総称です。この譲渡所得税には多くの特例や特別控除があります。国も生活の基盤である不動産から必要以上の税金を取ることは考えていません。仮に売却益が出たとしても、特例や特別控除で課税を免れることも多いのです。
空き家の売却費用と税金を抑えるポイント
空き家の売却にあたって、それにかかる費用や税金はなるべく抑えたいのが人情です。仲介手数料や登記費用などどうしてもかかる費用もあります。その一方で費用や税金を抑える方法もあるのです。税金には特例や特別控除などの優遇措置があります。この他空き家に対して補助金や助成金を出す市町村も現れ始めました。空き家の売却費用や税金を抑えるポイントをみていきましょう。
特例、控除
相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までに空き家を売却すると譲渡所得から3,000万円の特別控除を受けることができます。(空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例)空き家とはいえ、古くに取得した土地は当時の経済価値が変わっていることもあり、思わぬ売却益が出ることもあります。こうした場合の課税を防ぐために、このような特別控除があるのです。
補助金、助成金
長野県の中野市には「空き家活用等事業補助金」として、空き家バンクに登録された空き家を、一定の改修工事に対して経費の1/2以内または40万円を補助する制度があります。こうした制度を持っている市町村はまだ決して多くはありません。それでも、このような動きは徐々に広がりつつあります。
売却のためのリフォームをしない
「空き家を売却するためにはリフォームをした方がよいのだろうか」と考えることもあります。ですが一般の人が売却の為にリフォームをすることはおすすめできません。ひとつの理由はリフォーム代が割高になってしまうことです。買取再販業者は安くリフォームする術を知っています。だからリフォームをしても儲かるのです。もうひとつの理由は、リフォームを自分で行う人が増えてきたから。買主が自分好みのリフォームをするためにも売主がリフォームすべきではないのです。
空き家売却前の確認事項
空き家は管理が行き届いていない物件が多く、確認すべきことも多くあります。売主として「空き家だからよくわかりません」では通用しないのです。確認事項は、空き家の状態はもちろんですが、法律的な状態も確認しなければなりません。ここでは空き家を売却する前に確認すべき事項について考えていきます。
名義が誰になっているか
まずは空き家の所有者の名義です。古い建物だと思わぬ人が所有者になっていることもあります。単独所有だと思っていたものが、実は共有だったということもあり得るのです。所有者については、法務局で全部事項証明書を取得すると判明します。これは数百円で取得することができるので売却前には必ず確認するようにしましょう。
空き家の状態
そして空き家の状態です。空き家ということは人が住んでいなかったということ。どこが傷んでいるかわかりません。特に水回りは要チェックです。水道管などは使っていないと腐食が早まってしまいます。風を通しておかなければ湿気が溜まりますし、戸建住宅ではシロアリを始めネズミやハクビシンなど動物の侵入にも注意が必要です。
設定価格を高めにしておく
最後は価格の問題です。先ほども少しお話ししたように一度決めた売却価格を値上げすることは非常に困難です。このため売却設定価格は少々高めにしておくことをおすすめします。この高めの価格で売却できればラッキーです。高めの価格で売却できなくても少し値下げをして売却活動を継続することができます。
空き家は早めの対応が肝心!
空き家は物件によって状態がまちまちです。空き家とはいえすぐに使えるものもあれば、大幅にリフォームしないと利用できない物件もあります。このため所有者の名義や順法性(物件が建築基準法に適合しているか。していない場合、再建築ができないことがある)など、法律的な状態も含めて空き家全体の状態を確認すべきです。物件の状態さえ把握できれば、売買自体は居住中の物件と変わるところはありません。状態を把握し、早めに空き家を売却しましょう。
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