「なぜ仲介手数料を支払わなくてはならないの?」
「仲介手数料無料って本当にありえるの?」
不動産売却の仲介手数料について、そのような疑問はありませんか。
取引額が大きな不動産売却では、仲介手数料も高額になるため、仲介手数料を払う意味や計算方法などは、あらかじめ理解しておくことが大切です。
この記事では不動産売却における仲介手数料をテーマに、支払う意味や計算方法、相場など網羅的に解説していきます。
また、仲介手数料以外にも売却時に支払う可能性のある費用を紹介します。
この記事を読むことで、仲介手数料を払う意味や不動産会社の役割が理解でき、スムーズかつじょうずに売却活動を進められるでしょう。
目次
不動産売却の仲介手数料とは
不動産を売却する方法には個人間売買や買取などもありますが、多くの人が不動産会社に間に入ってもらう売買仲介を選択します。
仲介手数料は、不動産会社の仲介により不動産の売却が成立した際に、不動産会社に支払う手数料です。
仲介手数料を払う意味
そもそも、なぜ仲介手数料を払う必要があるのでしょうか。
その理由は、以下のような仲介手数料の費用としての性質にあります。
- 不動産会社への成功報酬
- 売却までの活動にかかる必要経費
売買仲介の場合、媒介契約を結んだ不動産会社は、対象の不動産を売るために以下のような活動を行います。
- 広告活動
- 問い合わせ対応
- 内覧案内
- 買主との交渉
- 各種契約のサポート
実際に売却活動を行うには多くの費用がかかります。
例えば、広告宣伝を行うにもチラシの作成費や印刷代、ポータルサイトへの掲載料などが必要でしょう。また、営業担当者の人件費も発生します。
仲介手数料は、その活動の成果として、売却できたことに対する報酬です。
宅建業法により、不動産会社は仲介手数料以外の費用は請求できません。そのため、仲介手数料を得ることで不動産会社は利益を確保でき、それまでの活動も報われるというわけです。
仲介手数料は、売主と不動産会社がお互いに気持ちよく取引を進めるうえで、重要な費用だと考えるとよいでしょう。
仲介手数料の上限
仲介手数料は、上限なしで請求できるわけではありません。高額な仲介手数料の請求を防ぐため、法律によってその上限額が決められています。
計算式については後ほど詳しく解説しますが、上限を超えた仲介手数料を請求することは違法です。
ただし、法律で定められているのは上限額のみであり下限額は決まっていません。
つまり、不動産会社は上限の範囲内であれば自由に金額を設定できます。とはいえ、仲介手数料は不動産会社の貴重な収入源なので、上限ギリギリで設定しているケースが一般的だといえるでしょう。
仲介手数料は売買成立時のみ発生する
仲介手数料は売買契約完了に対する成功報酬なので、売買契約が成立しなければ発生しません。不動産会社と媒介契約を結んだ後でも、対象の不動産を売却できなければ仲介手数料を支払う必要はありません。
また、仲介手数料の支払い先は売買契約を成立させた不動産会社のみです。
複数の不動産会社と契約している場合や複数社で査定を受けたとしても、支払うのは売買契約を成立させた1社だけと覚えておきましょう。
なお、仲介手数料は「売買仲介」での売却時に発生するものです。不動産会社の買取による売却や個人間売買のように、売買仲介でない場合、手数料は発生しません。
不動産売却の仲介手数料は誰が払う?
不動産売却における仲介手数料は、買主と売主がそれぞれ負担して不動産会社に支払います。
仲介会社が買主側と売主側で別、つまり四者が取引に関わる場合では、買主は買主側の仲介会社へ、売主は売主側の仲介会社へ支払います。
このように、仲介会社が買主か売主のどちらか一方から仲介手数料を受け取ることを片手取引といいます。
一方、仲介会社が同一で買主と売主の両者から仲介手数料を受け取ることを両手取引といいます。
両手仲介、片手仲介どちらであっても、売買仲介で売却した場合は売主買主ともに仲介手数料が発生する、ということは覚えておきましょう。
不動産売却の仲介手数料の計算
前述の通り、仲介手数料は上限額が法律によって定められています。
ここでは、仲介手数料の計算方法についてみていきましょう。
仲介手数料の計算式
仲介手数料の上限額を計算するためには以下の計算式を用います。
売買価格 | 仲介手数料の計算式 |
200万円以下の部分 | 売買価格 × 5% + 消費税 |
200万円を超えて400万円以下の部分 | 売買価格 × 4% + 消費税 |
400万円を超えた部分 | 売買価格 × 3% + 消費税 |
つまり、400万円以上の売買価格の物件は以下の計算式で仲介手数料を算出します。
{ 200万円 × 5% + 200万円 × 4% + ( 売買価格 – 400万円 ) × 3% } + 消費税
これが正しい計算式です。しかし実務では、以下のような簡単な速算式を使います。
売買価格 | 仲介手数料の計算式 |
200万円以下 | 売買価格 × 5% + 消費税 |
200万円超〜400万円以下 | 売買価格 × 4% + 2万円 + 消費税 |
400万円超 | 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税 |
200万円の2%は4万円、200万円の1%は2万円、合計6万円です。
つまり計算式は、以下のようになります。
( 売買価格 × 3% + 6万円 ) + 消費税
なお、令和6年7月1日からは法改正により、低廉な空き家等について売却額が800万円以下の場合に一律で33万円(税込)の仲介手数料を請求できるようになっています。
「低廉な空き家」とは、売買価格が800万円未満の空き家のことです。
参照:空き家等に係る媒介報酬規制の見直し|国土交通省
実例を参考に仲介手数料をシミュレーションしてみよう
それでは、実際の取引例を参考に、仲介手数料をシミュレーションしてみましょう。
例1:3,880万円での中古戸建売却の仲介手数料
物件価格が400万円を超えているので、速算式に当てはめることができます。なお、消費税込の金額については計算式を見やすくするため、110%をかけて計算します。
( 3,880万円 × 3% + 6万円 ) × 110% = 1,346,400円
例2:250万円での空き家売却の仲介手数料
不動産にしては少額の取引ですが、このようなケースも少なくありません。
まずは、通常の計算式で仲介手数料を算出します。
{ ( 200万円 × 5% ) + ( 50万円 × 4% ) } × 110% =132,000円
先述の通り、低廉な空き家等については、不動産会社に33万円まで請求できる権利があります。このようなケースでは、計算式よりも仲介手数料が高くなる場合が多いことを覚えておきましょう。
不動産を売る場合の仲介手数料の相場
仲介手数料の金額は、上限までの範囲内で不動産会社が自由に決めます。しかし、特別の事情がなければ上限いっぱいで設定されることが多いです。
以下では、売却額ごとの仲介手数料の上限を早見表としてまとめています。
売却額ごとの仲介手数料の上限
売却額 | 仲介手数料の上限(税込) |
200万円 | 11万円(または33万円) |
400万円 | 19.8万円(または33万円) |
800万円 | 33万円 |
1,000万円 | 39.6万円 |
1,500万円 | 56.1万円 |
2,000万円 | 72.6万円 |
3,000万円 | 105.6万円 |
4,000万円 | 138.6万円 |
5,000万円 | 171.6万円 |
8,000万円 | 270.6万円 |
1億円 | 336.6万円 |
仲介手数料を無料、安くできる理由
仲介手数料には下限額の決まりがないため、無料のケースもあります。
しかし、先述した通り、仲介手数料は不動産会社の活動費や必要経費をまかなうための費用ともいえるので、無料では赤字になってしまうのでは?と感じますよね。
ここでは、仲介手数料を無料、または安くできる理由について解説します。
仲介手数料無料のからくり
仲介手数料を無料にできるのは、両手取引により、売主・買主のどちらかから仲介手数料をもらっているからです。単なる減額であれば仲介会社のキャンペーンなども考えられますが、無料であれば、基本的には両手取引によるものと考えられます。
売主とも買主とも媒介契約を交わしていれば、取引成立により、不動産会社は両者から仲介手数料を得られます。
仲介会社は仲介手数料をどちらか一方からもらう、または両方を減額しても、利益を確保できることが多いのです。
なお、両手取引の場合、仲介会社は安く買いたい人と高く売りたい人の間に立って取引を成立させます。片方の利益がもう片方の不利益になるため、相場を重視した取引になることが多い点には注意しましょう。
違法な「囲い込み」を行う不動産会社には注意
囲い込みとは、売却の依頼を受けた仲介会社が物件情報を秘匿し、ほかの不動産会社や買い手に対して適切に物件を紹介しない状態のことをいいます。
囲い込みをする不動産会社には、利益優先のねらいがあります。
例えば、ほかの不動産会社からの問い合わせに対して「現在、その物件は売り止めになっている」などと嘘の状況を教え、検討させないようにします。
その後、自社で買い手をみつけ、両手取引により多くの利益を得ようとしているわけです。
売主にとっては、囲い込みされてしまうと買い手が見つかりにくくなり、相場より値下げされる、買主の値下げ交渉を優先されるなど不利になる可能性があります。
不動産売却の仲介手数料はいつ払う?
仲介手数料は不動産取引が成立したことによる成功報酬ですが、いつ支払うのでしょうか。
一般的には2パターンの支払いタイミングと方法があります。
- 不動産取引が完了し、引き渡ししたタイミングに全額支払うケース
- 不動産売買契約が成立したところで仲介手数料の半額を、引き渡しが完了したところで残りの半額を支払うケース
これらは不動産会社によって異なりますが、不動産の売却を依頼する際に締結する「不動産媒介契約」時に必ず支払時期が伝えられます。
資金の準備にも影響があるため、確認するようにしましょう。
不動産売却の仲介手数料にかかる税金について
ここでは、不動産売却の仲介手数料にかかる税金について解説します。
仲介手数料には消費税がかかる
仲介手数料は消費税10%の対象です。
税込表示義務があるため、事前説明などでは税込で価格が提示されるはずです。しかし、一部事業者は曖昧にすることがあるようなので、自身でも確認しておきましょう。
仲介手数料は確定申告で経費計上できる
不動産を売却して利益が出た場合、利益に対して譲渡所得税が課せられます。譲渡所得税の対象となる譲渡所得は以下の計算式で求めます。
譲渡所得 = 譲渡価額 – ( 取得費 + 譲渡費用 )
これらのうち、物件を購入した際の費用である取得費と売却する際の費用である譲渡費用には、それぞれ仲介手数料が含まれます。
仲介手数料を経費として正しく計上することで、節税につながります。
ただし、仲介手数料を経費に計上するためには領収書などの証明書類が必要です。領収書や契約書は大切に保管しておくようにしましょう。
仲介手数料に関するよくあるトラブルとその対処法
不動産売却における仲介手数料に関しては、お金のトラブルが起きやすいといえます。
特に多いトラブルのきっかけとして、以下のようなケースがあります。
- 説明せずに上限額を請求された
- 仲介手数料以外の費用を請求された
- 仲介手数料の値引きを要求したら担当者の態度が悪くなった
説明せずに上限額を請求された
法律によって定められているのはあくまで仲介手数料の上限額です。上限の範囲内で、不動産会社と売主とが納得した金額で決まります。
そのため実際の金額は両者で話し合うのが筋ですが、「法律で決まっている」とだけ言い、十分な説明をせずに上限額を請求するケースがあるようです。
あとから揉めないよう、仲介手数料の支払時期や金額、計算方法について確認したうえで媒介契約を締結しましょう。
仲介手数料以外の費用を請求された
不動産会社は仲介手数料以外では一部の例外を除いた費用は請求できません。一部の例外となるのは、特別な広告や遠方への出張費用など、通常の業務外の活動費が発生した場合のみです。
前金や着手金・コンサルティング料などと言って、仲介手数料以外の費用を要求される場合は違法な可能性が高いので注意しましょう。
仲介手数料の値引きを要求したら担当者の態度が悪くなった
仲介手数料は、不動産会社にとって重要な利益でもあります。過度に値下げ交渉をすると不動産会社との関係性が悪化する原因になりかねません。
これらのトラブルは、仲介手数料の性質や計算方法などを理解しておけば、防ぎやすくなります。
加えて、不動産会社から仲介手数料の説明があった際、疑問点があれば納得できるまで確認することも大切です。
【FAQ】不動産売却の仲介手数料に関するよくある質問
最後に、不動産売却の仲介手数料に関して、疑問になりやすいポイントを解説します。
土地や一戸建て、マンションで仲介手数料のルールは違う?
仲介手数料は、不動産の種類を問わず同じルールが適用されます。土地も一戸建ても、マンションも、収益物件も同じです。
ただし、前述の「低廉な空き家」については、例外的に計算上の上限を超えて33万円までの請求がなされることがあります。
不動産売却で仲介手数料以外にかかる費用は?
不動産売却では、仲介手数料以外にも以下のような費用がかかる場合があります。
- 印紙代
- 抵当権抹消費用
- 住民票、印鑑証明書、不動産の評価証明書の取得費用
ほかにも、解体工事が必要であれば解体工事費、土地の測量が必要であれば測量費用、引越しが必要であれば引越し費用など、状況によって異なる費用がかかります。
不動産売却では事前に、いつ、いくらの金額が必要になるのか把握することが重要なので、しっかりとシミュレーションしておきましょう。
解約になってしまった場合は仲介手数料がかかるの?
売買契約を締結したものの、何らかの理由で破談になることもあるでしょう。
解約時の仲介手数料の取り扱いは、「合意解約」か「白紙解約」かで変わってきます。
例えば、買主が手付金を放棄して解約する「手付解除」による解約の場合、一度は契約が成立したので仲介手数料が発生します。
ほかにも契約の債務不履行による解約や、売主、買主の双方による合意解約などは、契約が成立していると判断されているため、仲介手数料が発生するのが一般的です。
一方、買主の住宅ローンが通らず、融資を受けられないことで解約になる「住宅ローン特約」による解約の場合、白紙解約になるために仲介手数料は発生しません。
これらは契約における特殊な事情ですが、絶対に起きないことではありません。
まとめ
売買仲介で不動産を売却した場合、不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。
仲介手数料は、不動産会社にとっても重要な収入源です。仲介手数料を削ることにこだわるあまり、仲介会社との関係性を悪化させたり信用できないような会社と契約したりすると、高値での売却に影響が出てしまうおそれがあります。
仲介手数料の金額にこだわるより、仲介会社と信頼関係を築き、高く売るために動いてもらったほうが、結果的に手元に残るお金を多くすることにつながるはずですよ。