「不動産が高く売れたら、税金も高くなる?」
「物件の種類によって税金は違う?」
不動産の売却益にどれくらいの税金がかかるのか、気になりますよね。
不動産は、居住用や投資用、マンション、戸建て、土地など、目的や種類によって課せられる税金に違いがあります。
そこで今回は、不動産の目的や種類に応じた税金の計算方法を、具体的なシミュレーションを交えて解説します。また、節税につながる特例もあわせて紹介します。
目次
不動産売却時の税金(譲渡所得税)の計算方法
税金計算における不動産の売却益とは、「譲渡所得」のことを指します。譲渡所得とは、譲渡価額(売れた金額)を指すのではなく、経費(不動産の購入時と売却時にかかった費用)を差し引いた利益のことを指します。
そして、譲渡所得にかかる税金(譲渡所得税)は分離課税なので、給与所得などとは分けて計算します。
ここで、基本的な譲渡所得税の計算の方法を紹介します。
基本の計算式
譲渡所得 = 譲渡価額 – ( 取得費 + 譲渡費用 )
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率
もし譲渡所得がマイナスになったら譲渡所得税はかかりません。
経費の内訳は以下のとおりです。
費用 | 主な項目 |
取得費 | ・不動産の購入額 ・仲介手数料 ・登録免許税 ・不動産取得税 ・印紙税 ・立退料 ・造成費用 ・測量費 |
譲渡費用 | ・仲介手数料 ・印紙税 ・立退料 ・取壊費用 ・名義書換料 |
また、物件の購入価額はそのまま取得費の一部として計算に含めません。経年劣化などによって下がった建物の価値を合理的に数値化した「減価償却費相当額」を差し引きます。
建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 = 減価償却費相当額
非業務用建物の償却率
区分 | 木造 | 木骨モルタル造 | (鉄骨)鉄筋コンクリート造 | 金属造① | 金属造② |
償却率 | 0.031 | 0.034 | 0.015 | 0.036 | 0.025 |
※軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が、3ミリメートル以下の建物を金属造①、3ミリメートル超4ミリメートル以下の建物を金属造②
譲渡所得税の税率
売却した不動産の所有期間が、売却した年の1月1日時点で5年以上の場合は長期譲渡所得、5年未満の場合は短期譲渡所得として扱い、それぞれで税率が異なります。
それぞれの税率は以下のとおりです。
税率
区分 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 |
長期譲渡所得(5年超) | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
短期譲渡所得(5年以下) | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
活用できる税金の控除・特例
不動産の売却益が発生すると税金がかかります。しかし、要件を満たし控除・特例を受けることができれば、節税できます。
以下、主な特例を5つ紹介します。
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 特定の居住用財産の買換えの特例
- 事業用資産の買換えの特例
- 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
居住用財産(マイホーム)を売却した場合には、一定の要件を満たすことで譲渡所得から最大で3,000万円の控除を受けられます。
個人が住んでいる家を売却した場合、譲渡所得が3,000万円を超えることは稀なので、適用できれば譲渡所得税が0になるケースも非常に多いです。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売却する場合で、上記の3,000万円の特別控除を適用しても更に譲渡所得が生じる際には、一定の要件を満たすことで軽減税率の適用を受けられます。
軽減税率は以下の2段階で構成されています。
売却益が6,000万円以下の部分 | 税率14.21% |
売却益が6,000万円以上の部分 | 税率20.315% |
参照:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁
特定の居住用財産の買換えの特例
マイホームを買い替える場合で、売却する家と新たに購入する家が一定の要件を満たすときに、譲渡所得税の納付を繰り延べることができます。
ただし、この特例は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」や「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」、「マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例」との併用ができません。
参照:No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁
事業用資産の買換えの特例
個人が、事業用の土地や建物を売却して代わりに別の事業用資産を購入した場合に、一定の要件を満たすと、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べられます。
譲渡益の一部に対する繰り延べである点や地域に関する要件がある点が、「特定の居住用財産の買換えの特例」との主な違いです。
参照:No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例|国税庁
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
相続によって取得した不動産を売却する場合に、一定の要件を満たすと譲渡所得から3,000万円(相続人が3名以上の場合には2,000万円)が控除されます。
参照:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
相続については、以下の記事で詳しく解説しています。
確定申告のポイント
不動産売却後に確定申告する際は、下記項目の注意するべきポイントがあります。
- 譲渡所得がなくても申告が必要な場合がある
- 通常の確定申告より提出書類が多い
- 住民税は後で納付する
売却益がでなかった場合は原則確定申告は不要です。しかし、譲渡所得に関する特例を利用する際は申請が求められます。
また、一般的な確定申告より提出する書類が多く、申告書の記入方法も少し複雑です。
更に、住民税の支払いは、自治体が5月以降に確定申告の内容をもとに算出していくため、確定申告の2〜3ヶ月後に納付が求められます。
不動産売却の確定申告については以下の記事でも解説しています。
居住用不動産の売却にかかる税金計算シミュレーション
実際に支払う税金を計算する際は、不動産の取得事由や所有目的、種類などを考慮する必要があります。
具体的なケースを例に税金計算のシミュレーションを行い、税額の目安を紹介します。
前提として譲渡価額が購入時にかかった費用を下回ると税金は発生しないため、ここでは購入価格より高く売れているケースでシミュレーションしています。
まずは、居住用不動産の売却について、物件の種類による違いをみていきましょう。
マンションを売却したとき
居住用マンションを売却した場合について、下記の条件で譲渡所得税を計算してみましょう。
前提条件
物件種別 | マンション(鉄筋コンクリート造) |
売却不動産の所有期間 | 6年 |
譲渡価額 | 5,000万円 |
譲渡費用 | 300万円 |
購入価額 | 4,000万円(土地 2,000万円、建物 2,000万円) |
減価償却費相当額 | 162万円(償却率:0.015) |
購入費用 | 300万円 |
適用する特例 | 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例 |
マンションであっても、土地と建物に分けて減価償却費相当額を計算します。
取得費
4,000万円 – 162万円 + 300万円 = 4,138万円
譲渡所得
5,000万円 – ( 4,138万円 + 300万円 ) = 562万円
譲渡所得税
0円
この計算シミュレーションでは、562万円 < 3,000万円 のため特別控除の特例により課税所得はありません。もし特例を適用しなければ、譲渡所得税は 562万円 × 20.315% = 114万1,703円 になります。
一戸建てを売却したとき
基本的にはマンションと同じなので、少し条件を変えて、ここでは売却した不動産の所有期間が短い場合を想定して譲渡所得税を計算してみましょう。
前提条件
物件種別 | 一戸建て(木造) |
売却不動産の所有期間 | 3年 |
譲渡価額 | 5,000万円 |
譲渡費用 | 300万円 |
購入価額 | 4,000万円(土地 2,000万円、建物 2,000万円) |
減価償却費相当額 | 251万1,000円(償却率:0.031) |
購入費用 | 300万円 |
適用する特例 | 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例 |
取得費
4,000万円 – 251万1,000円 + 300万円 = 4,048万9,000円
譲渡所得
5,000万円 – ( 4,048万9,000円 + 300万円 ) = 651万1,000円
譲渡所得税
0円
特例の適用に関して、居住を目的としていれば所有期間の長短は関係ありません。したがって、譲渡所得が3,000万円以下なので税額は0円です。
また、税率をかける前の譲渡所得に対して特別控除の特例が適用されるため、短期譲渡所得であっても関係ありません。
ちなみに、特例がなければ譲渡所得税は 651万1,000円 × 39.63% = 258万309円 となります。
土地を売却したとき
土地を売却する場合は、減価償却費相当分を考慮しません。土地には経年劣化がないものと考えるためです。
次の条件で土地を売却した場合の譲渡所得税を計算してみましょう。
前提条件
物件種別 | 土地 |
売却不動産の所有期間 | 4年 |
譲渡価額 | 1,000万円 |
譲渡費用 | 100万円 |
購入価額 | 600万円 |
購入費用 | 100万円 |
適用する特例 | なし |
取得費
600万円 + 100万円 = 700万円
譲渡所得
1,000万円 – ( 700万円 + 100万円 ) = 200万円
譲渡所得税
200万円 × 39.63% = 79万2600円
なお、その土地に「居住用財産」が建っていた土地であれば、更地の場合でも「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が適用できる可能性があります。
投資用不動産の売却にかかる税金計算シミュレーション
基本的に、居住用不動産の税金計算と同じです。
違いを挙げるとすれば、売主が課税事業者であるなら、譲渡所得税のほかに消費税がかかります。課税事業者かどうかは、前々年の課税売上高によって判定されます。そのため、個人の売却に関しては多くの場合、消費税はかかりません。
参照:令和5年分 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き|国税庁
また、適用できる特例にも違いがあります。
ここでは賃貸マンションを例に、「事業用資産の買換えの特例」を適用できるものとして譲渡所得税の計算シミュレーションをしてみましょう。
前提条件
物件種別 | 賃貸マンション(鉄筋コンクリート造) |
売却不動産の所有期間 | 6年 |
譲渡価額 | 5,000万円 |
譲渡費用 | 300万円 |
購入価額 | 4,000万円(土地 2,000万円、建物 2,000万円) |
減価償却費相当額 | 162万円(償却率:0.015) |
購入費用 | 300万円 |
適用する特例 | 事業用資産の買換えの特例 |
「事業用資産の買換えの特例」を適用する場合、譲渡価額と買換不動産の取得価額を比較して、どちらが大きいかによって計算が違います。以下、課税割合は20%と仮定してシミュレーションします。
取得費
4,000万円 – 162万円 + 300万円 = 4,138万円
買換資産が6,000万円の場合
譲渡所得
収入:5,000万円 × 20% = 1,000万円
経費:( 4,138万円 + 300万円 ) × 20% = 887万6,000円
1,000万円 – 887万6,000円 = 112万4,000円
譲渡所得税
112万4,000円 × 20.315% = 22万8,341円
買換資産が4,000万円の場合
譲渡所得
収入:( 5,000万円 – 4,000万円 ) + ( 4,000万円 × 20% ) = 1,800万円
経費: ( 4,138万円 + 300万円 ) × ( 1,800万円 / 5,000万円 ) = 1,597万6,800円
1,800万円 – 1,597万6,800円 = 202万3,200円
譲渡所得税
202万3,200円 × 20.315% = 41万1,013円
もちろん、居住用でないため3,000万円の特別控除の特例は適用できません。
相続不動産の売却にかかる税金計算シミュレーション
相続不動産の売却に限り適用できる特例もあるため、それを交えて譲渡所得税の計算シミュレーションをしてみましょう。
マンションを売却したとき
基本的な計算は前述の居住用マンションの計算と同じなので、取得費の特例を適用するケースを紹介します。
前提条件①
物件種別 | マンション(鉄筋コンクリート造) |
売却不動産の所有期間 | 20年 |
譲渡価額 | 5,000万円 |
譲渡費用 | 300万円 |
購入価額 | 不明 |
減価償却費相当額 | 不明 |
購入費用 | 不明 |
適用する特例 | 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 |
前提条件②
支払った相続税額 | 1,000万円 |
譲渡財産の相続税評価額 | 4,000万円 |
その他財産 | 4,000万円 |
債務控除 | なし |
購入価額が不明な場合、譲渡価額の5%を概算取得費として扱います。
取得費
加算できる金額:1,000万円 × 4,000万円 / ( 8,000万円 + 0円 ) = 500万円
5,000万円 × 5% = 250万円
250万円 + 500万円 = 750万円
譲渡所得
5,000万円 – ( 750万円 + 300万円 ) = 3,950万円
譲渡所得税
3,950万円 × 20.315% = 802万4,425円
相続不動産の場合、被相続人の取得時期を引き継ぐため、今回は長期譲渡所得の税率が適用されます。
参照:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁
一戸建てを売却したとき
基本的に、相続したマンションを売却したときと同じです。ここでは、空き家に関する特例を適用したケースでシミュレーションしてみましょう。
前提条件
物件種別 | 一戸建て(木造) |
売却不動産の所有期間 | 20年 |
譲渡価額 | 5,000万円 |
譲渡費用 | 300万円 |
購入価額 | 不明 |
減価償却費相当額 | 不明 |
購入費用 | 不明 |
適用する特例 | 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例 |
取得費
5,000万円 × 5% = 250万円
譲渡所得
5,000万円 – ( 250万円 + 300万円 ) = 4,450万円
譲渡所得税
4,450万円 – 3,000万円 = 1,450万円
1,450万円 × 20.315% = 294万5,675円
この特例の主な適用要件は、被相続人が一人暮らしをしていた場合で、死亡した日から3年経過した日の属する年の12月末までに売却することなどがあります。
また、相続人が3名以上いる場合は2,000万円までしか控除されないため、居住用不動産の3,000万円特別控除の特例よりも適用されにくい特例です。
土地を売却したとき
相続した土地を売却した際の税金計算は、居住用の土地を売却した場合と同じです。
特例に関しては、要件を満たせば前述した「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」の特例を適用できます。
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」については、土地と建物の両方を相続したのちに建物を取り壊した場合においては、対象になりえます。
便利な不動産売却時の税金計算ツール4選
不動産を売却する前に税金や経費を試算しておけば、売却後に「思っていたより手元にお金が残らない……」とならずに済むはずです。
ここで、便利な計算ツールを4つ紹介します。
居住用不動産の譲渡所得税を計算するツール | 不動産の譲渡所得税額(マイホーム用)|高精度計算サイト |
不動産に関するあらゆる税金を計算するツール集 | 不動産に関する税金などを瞬時に計算・シミュレーション|リアルタイムシミュレーター|smlt.jp |
居住用不動産の譲渡所得税を計算するツール・減価償却計算対応 | 不動産売却(譲渡所得)税金計算シミュレーション|ZEIMO |
不動産取得税を計算するツール | 不動産取得税計算ツール|東京都主税局 |
ただし、これから不動産を売却する方は税金のことを考えることも大切ですが、高く売ることが手元に多くのお金を残すためには重要です。
まずは不動産会社に無料の査定依頼をして、売却金額の目安を確認してみましょう。
【FAQ】不動産売却時の税金計算に関してよくある質問
不動産売却における税金計算に関して、よくある質問にお答えします。
税金計算は確定申告のタイミングに行うの?
不動産の売却に関する税金の計算は、確定申告のタイミングに行うのが一般的です。
しかし、不動産を売却する際、手取り額を事前に把握できていないと「思ったよりお金が残らない」と感じる可能性もあります。譲渡所得税も早めに試算しておくとよいでしょう。
不動産の売却に消費税はかかるの?
個人が不動産の売買をする場合には消費税は課税されません。
一方で、課税事業者が売買する場合には消費税がかかります。
ただし、土地に関しては課税事業者であっても非課税です。例外として、駐車場用地など営利目的で使用している土地の売買には、消費税が課税されます。
譲渡所得で年収が増えて所得税の税率が上がる?
上がりません。分離課税なので、給与所得と、不動産売却などによる譲渡所得とは別々に計算します。
なお、課税譲渡所得がある場合、所得税は確定申告の時期に納めますが、住民税は翌年6月以降に届く納付通知書に基づいて納税します。そのため、住民税は上がります。
まとめ
不動産売却にかかる税金の額は、不動産の種類や売却の目的、特例の適用有無などによってさまざまです。あらかじめ計算をしておくことで、無用なトラブルを防ぐことができるでしょう。
税金の計算も必要ですが、不動産を納得のいくかたちで売却するためには、仲介会社選びがとても重要です。会社によって販売力やサポート体制に差があるので、まずは無料査定を依頼し、どこの会社に頼めば信頼してまかせることができるか見極めましょう。
不動産SHOPナカジツは、愛知や福岡、千葉、埼玉を中心に多数の仲介実績をもつ不動産会社です。売却に関するさまざまな疑問やご相談にお答えしておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。