この記事のポイント
- 農地を売却するには、「農地法」に基づいた許可が必要であり、農地のまま売れる相手やケースは限られる
- 農地が売れない・売りにくい場合は、「農地転用」によって宅地や事業用地として売る選択肢があるが、自治体の許可と手続きが必要になる
- 公的機関(農業委員会・農地バンク)や専門の不動産会社に相談することで、手続きの煩雑さを軽減し、農地売却の可能性を高めることができる
「農地を売ることはできるのだろうか?」
「農地を売りたいとき、どこに相談すればいいのか分からない……」
農地の売却は、一般的な不動産とは異なり、法律や許可の壁がある特殊な手続きです。そのため、「売りたい」と思っても、何から手をつければよいのか分からず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、農地を売却する際に必要な許可や、具体的な手続きの流れ、価格の調べ方、税金の取り扱いまで、初めての方にも分かりやすく解説します。読むことで、農地売却の全体像をつかみ、自分のケースに合った売却方法を判断できるようになるはずです。
スムーズに農地を手放すための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
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地方銀行、住宅会社勤務を経て住宅や不動産を中心としたライターとして活動。現場で多くのお客様の対応で経験させていただいたことをもとに、専門知識に基づいた分かりやすい記事執筆に取り組んでいます。
記事の構成
農地は売ることができる
「農地は売れない」と思われがちですが、正しい手続きを踏めば売却できます。ただし、農地にはほかの不動産とは異なる制限があり、誰にでも自由に売れるわけではありません。
ここでは、農地を売却する際に関わる法律や、農地のまま売れるケース、反対にそのままでは売却が難しいケースについて紹介します。
農地売却に関わる法律や必要な許可
農地の売却には、「農地法」に基づく手続きが必要です。農地を農地として売る場合でも、宅地などに転用して売る場合でも、それぞれ異なる許可が求められます。
| 農地法第3条の許可 | 農地として売却(農業を続ける人に売る)場合 |
|---|---|
| 農地法第5条の許可 | 農地を宅地や事業用地などに転用して売る場合 |
| 農業委員会との事前相談 | 地域により運用が異なるため、事前確認の窓口として |
法律や制度が複雑に見えるかもしれませんが、ポイントを押さえれば問題ありません。いずれにしても、実際の手続きや許可の取得には、地域の特性や個別の事情が大きく影響します。そのため、具体的な売却の際は、管轄の農業委員会や行政書士、不動産会社の担当者など専門家への相談をおすすめします。
農地が売れる主なケース
農地が「農地のまま」売れるケースは限られています。以下に該当する場合は、比較的スムーズに売却できる可能性があります。
- 買主が農家(農業従事者)であり、営農目的で購入する
- 同じ地域内の農地を所有する農家に売る(農地集約の一環)
- 地元の農業法人や生産組合が購入を希望している
- 市街化区域内の農地で、農業継続が可能なエリアにある
このようなケースでは、農地法第3条の許可を得られれば農地として売却できるので、「売りやすい」と考えてよいでしょう。
ただし、実際には買い手を探すのが難しいこともあります。農地の売却には地域性や条件が大きく影響するため、個人での判断は難しいかもしれません。
「農地として売れるか分からない」といった初期段階でも、まずは不動産会社などに相談をすることも検討しましょう。
売却が難しいケース
以下のような場合は、農地のままでは売却が難しくなります。
- 買い手となる農家が周辺にいない、または需要がない
- 耕作放棄地となっており、農地としての価値が低下している
- 権利関係が複雑(共有名義、登記の問題など)
こうしたケースでは、「農地転用」を検討することで、売却の可能性が広がる場合があります。たとえば宅地や駐車場、事業用地などに用途変更することで、買い手の対象が農業従事者に限られなくなり、市場も大きくなります。
ただし、農地転用には市町村や都道府県の許可が必要で、手続きには時間や費用がかかります。事前に転用の可否や手続きの流れを確認し、計画的に進める必要があります。
なお、以下のようなケースでは、転用自体が難しいため、別の方向から売却の検討が必要です。
- 接道義務を満たしておらず、そもそも宅地等への転用が認められない土地
このような土地は法的に用途が限定されるため、転用による価値向上が見込めません。売却を希望する場合は、隣接地との一体利用や権利関係の整理を含めた個別対応が求められます。
農地を売る方法・相談先
農地を売るには、適切な相談先を見つけ、ルールに沿った手続きを踏むことが重要です。
以下に、主な売却ルートと相談先を紹介します。
地元の農業委員会に相談する
農地の売買や転用において、最初に相談すべきなのが市区町村の農業委員会です。
農業委員会は、農地法に基づく許可・届出を審査する行政機関であり、地域の農地に関する情報や手続きの流れに精通しています。
こんな方におすすめ
- 農地のまま売却を検討している
- 転用許可が必要か判断できない
- 地域の農業政策や制限について知りたい
農業委員会では、売却の可能性や転用の可否、必要な書類や手続きの順序など、初期段階で必要な情報を網羅的に把握できます。
手続きが煩雑に感じる場合でも、ここでしっかり相談しておくことで、後のトラブルを防げるでしょう。
農地バンク(農地中間管理機構)を活用する
農地バンク(農地中間管理機構)は、国の制度に基づき設立された公的機関で、農地の貸し手と借り手・買い手をマッチングする役割を担っています。
主な特徴は以下のとおりです。
- 利用希望者(農業者)に農地を紹介できる
- 一時的に農地を預けて管理してもらえる
- 地域によっては売却の斡旋も可能
農地バンクは売買よりも賃貸を前提とした制度ですが、最終的に農地の引き取り手が現れるケースもあります。
「今すぐ売却は難しいが、将来的に手放したい」「耕作できる人に使ってもらいたい」といった場合に適した選択肢です。
不動産会社や専門業者に相談する
農地売却の実務をスムーズに進めたい場合は、不動産会社や行政書士など農地売買に詳しい専門業者に相談する方法もあります。
個人では見つけにくい買い手を探してもらえたり、煩雑な手続きを代行してもらえるのが大きなメリットです。
こんな方におすすめ
- 忙しくて自分で調べる時間がない
- 転用も視野に入れている
- 相続や登記の手続きもまとめて相談したい
不動産SHOPナカジツでは、個別の事情に応じた最適な進め方をご提案しています。農地の査定や手続きに関するご相談も可能ですので、専門家の視点を取り入れてスムーズに売却を進めたい方は、選択肢として検討してみてください。
農地が売れない/売りにくい場合の対処法
前述のとおり、農地は、立地や条件によって「売りたくても売れない」という状況に陥ることがあります。
そんなときには、農地としてではなく、転用して売るなどの選択肢を検討することが重要です。ここでは、実際に取られている対処法を紹介します。
転用して売る
農地のままでは売却が難しい場合、宅地や事業用地などへの転用を行うことで、買い手の幅を大きく広げることができます。
農地のままでは、農業を行う人にしか売ることができません。しかし、農地を宅地や事業用地に転用できれば、不動産市場における一般的な「土地」として売却できるようになります。
| 転用先の用途 | 売却対象 | 補足 |
|---|---|---|
| 宅地 | 住宅地として個人や不動産会社へ | 市街地に近い農地や道路に面した土地に多い |
| 太陽光発電用地 | 発電事業者、ファンドなど | 日当たりや送電線の位置がカギ |
| 事業用地(駐車場等) | 地元企業、小規模事業者など | 柔軟な活用が見込まれる土地が有利 |
転用の一般的な流れは、以下のとおりです。
- 農地法第5条に基づく転用許可申請を行う
- 市街化調整区域の場合は、都市計画法上の制限の確認が必要
- 許可が下りたら、宅地造成や用途変更の手続きを進める
- 売却活動開始(不動産会社と連携)
転用には手間も費用もかかりますが、買い手の選択肢が格段に増え、売却価格も上がる可能性があります。たとえば住宅用地の場合、立地によっては農地としてよりも高い価格で売れることもあります。
転用の可否や具体的なステップについては、不動産会社などの専門家と連携して進めることが現実的です。
一時的に貸し出す
すぐに売却が難しい場合には、農地を一時的に貸し出す(賃貸)という選択肢もあります。買い手が現れるまでのつなぎとして有効で、以下のようなメリットがあります。
- 利用希望者に貸すことで土地の荒廃を防げる
- 一定の賃料収入が得られる
- 将来的な売却や転用の準備がしやすくなる
この場合は、農地バンク(農地中間管理機構)などの公的機関を通じて、貸し手と借り手をマッチングしてもらうのが一般的です。
売却以外の活用方法を考える
農地としての売却が難しく、転用も困難な場合は、売ることにこだわらず、「自分で活用する」方法も検討に値します。
たとえば、果樹や野菜などの作物を植えて収穫物を販売したり、市民農園や貸し農園として活用したりできます。
または、一部だけでも農地バンクに登録し、部分的に貸すという選択もあるでしょう。
農地は地域性や地形など、条件に応じて多様な活用法があります。将来的に売却しやすくするためにも、まずは土地を荒らさず、使える状態で維持することが重要です。
農地の売却価格の調べ方
農地の価格は、宅地のようにインターネットで相場を調べて簡単に比較できるものではありません。
地目・立地・接道条件・用途地域・営農継続の可否など、個別の事情が価格に大きく影響するため、判断が難しいのが実情です。
とはいえ、おおよその目安を知る方法はあり、公的なデータの活用や専門家への相談を組み合わせることで、精度の高い価格感をつかむことが可能です。
自分で調べる場合
農地の価格を自力で把握したい場合、まずは以下のような公的データや制度を活用するのが有効です。
- 公示地価・基準地価を見る
- 固定資産税評価額・相続税路線価を確認
専門家に相談して価格を把握する場合
より正確な価格を知りたい場合や、売却を視野に入れている場合は、専門家への相談が不可欠です。
地元の不動産会社に査定を依頼する
農地のある地域で営業している不動産会社に相談すれば、近隣の過去の取引事例や需要動向を踏まえた査定が受けられます。
特に「農地も扱っている会社」「農業委員会とのやり取りに慣れている会社」だと、実務面でも安心です。
農地専門の売買サイトを活用する
近年では、農地や山林などを扱うマッチングサイトも登場しており、簡易査定や相場情報の閲覧ができるサービスも登場しています。
こうしたサイトを通じて、複数の業者から査定を受けたり、問い合わせ前に市場感を把握することも可能です。
農地売却の流れ・手順
農地の売却は、一般的な土地と比べて関係者や手続きが多く、計画的に進めることが求められます。ここでは、売却のスタートから税務処理まで、基本的な流れを7つのステップで紹介します。

1)農地の現状を確認する
最初に行うべきは、売却対象となる農地の現況の把握です。以下のような点を確認しましょう。
- 登記上の地目が「田」や「畑」など農地かどうか
- 土地の面積・形状・接道状況
- 市街化区域か市街化調整区域か
- 所有者や相続の状況(名義人の確認)
特に「地目」が農地であるかどうかは、転用の可否や売却条件に大きく影響します。不動産会社や役所に相談しながら、正確な情報を集めましょう。
2)売却方法・相談先を決める
農地の状態や希望条件に応じて、売却方法を検討します。主な選択肢とその相談先は、前述のとおりです。
3)買主を探す
売却方法が決まったら、次は買主を探します。
農地として売る場合は、地域の農業従事者や農業法人などが対象でしょう。転用後に売る場合であれば、住宅購入者や企業、太陽光発電事業者なども対象になってきます。
個人で買主を探すのは難しいため、多くの場合は不動産会社や農地バンクなどを通じて買主候補を紹介してもらう形になります。条件の良い農地や立地であれば、早期売却も期待できます。
4)売買の条件を調整する
買主が決まったら、売買に関する具体的な条件をすり合わせます。
不動産会社が間に入る場合は、条件調整を仲介してもらえるため、トラブルのないスムーズなやりとりが可能になります。
5)農業委員会に許可申請を出す
市街化調整区域内の農地を売るには、農業委員会への許可申請が必要です。
申請には、売主・買主双方の書類や、土地の位置図、登記簿謄本などが必要です。審査には数週間~数カ月かかる場合もあるため、早めの準備が大切です。
なお、市街化区域内の農地を売却する場合には、農業委員会に届出を提出するだけで事足ります。
6)売買契約を締結・代金の授受
許可が下りたら、正式な売買契約を結び、代金の授受を行います。
手続きには不動産会社や司法書士が関与することが一般的です。トラブル防止のためにも、契約内容は事前にしっかり確認しましょう。
7)確定申告・税務処理を行う
農地を売却して利益が出た場合は、譲渡所得として課税対象になります。詳しい内容は後述します。
不動産会社や税理士に相談しながら、控除や軽減措置を活用することで、納税額を抑えることも可能です。
農地売却でかかる税金
農地を売却して利益が出た場合、その利益には税金がかかります。不動産の売却で発生する税金には複数の種類があり、手続きも必要です。ここでは、農地売却に関する主な税金の種類と計算方法、節税に使える特例について解説します。
| 名目 | 概要 |
|---|---|
| 譲渡所得税 | 売却によって得た利益(譲渡所得)に対して課されます。 |
| 登録免許税 | 所有権移転登記の際にかかる税金です。登記面積や評価額に応じて課税されます。 |
| 印紙税 | 売買契約書に貼付する印紙にかかる税金です。契約金額に応じて課税額が決まっています。 |
税金の計算方法
譲渡所得は、以下の計算により求められます。
譲渡所得 = 売却価格 – ( 取得費 + 譲渡費用 )
取得費は、農地を取得したときの金額(土地購入費、相続評価額など)です。譲渡費用は、売却にかかった費用(仲介手数料、測量費、登記費用など)です。

特別控除
農地売却で利益が出た場合でも、一定の条件を満たすと税負担を軽減できる「特別控除」が適用されることがあります。
| 収用等による特別控除 | 公共事業による収用・買収の場合、一定額まで非課税になることも |
|---|---|
| 買換え特例 | 売却益を元に別の不動産を取得した場合に、課税を繰り延べできる制度 |
ちなみに、自宅の売却などで知られる3,000万円控除については、農地をそのまま売却するケースでは適用されないと考えてよいでしょう。
これらの特例は、「農地の用途」「売却の背景」「売却後の活用」などによって適用の可否が異なります。適用条件が細かく決められているため、確定申告の際には税務署や税理士への相談をおすすめします。
確定申告
売却後、一定以上の譲渡所得がある場合や控除の対象となるケースでは確定申告が必要です。確定申告のタイミングは、売却した翌年の2月16日〜3月15日前後が申告期間です。
確定申告に必要な主な書類
- 売買契約書の写し
- 登記簿謄本(全部事項証明書)
- 仲介手数料などの領収書
- 農地の取得費に関する資料(売買契約書、相続時の評価明細など)
農地売却の注意点
農地の売却は、想定外のトラブルが起こることもあります。以下に、特に注意すべきポイントをまとめました。
農地売却のチェックリスト

農地売却では、「売りたい」という意思だけでは前に進めず、法的な制約や行政手続きをクリアする必要があります。特に農業委員会の許可が必要な点や、市街化調整区域に該当している土地の扱いには注意が必要です。
また、名義の整理や境界の確認など、書類上・物理的な準備も事前に整えておくことで、売却時のトラブルを防ぐことができます。農地を宅地や事業用地に転用する場合は、転用許可が下りなければ契約そのものが無効になるリスクもあるため、「許可取得を前提とした契約」などの特約を設ける対応が求められます。
手続きが煩雑であっても、専門家のサポートを受けることで、負担を軽減しながら進められます。法律・税金・許可など、ひとつでも不安な点がある場合は、早めに専門家へ相談しましょう。
まとめ
農地の売却は、一般的な不動産とは異なり、法律や行政手続き、地域の事情など多くの要素が関係します。
売却しやすいケースもあれば、転用が必要なケース、更にはそれ以外を検討すべき場合もあります。どの道を選ぶにしても、まずは現状を正しく把握し、信頼できる相談先を見つけることが、スムーズな売却のために必要です。
不動産SHOPナカジツでは、農地に関するご相談もお受けしています。丁寧にサポートいたしますので、「農地が売れるか分からない」「転用すべきか迷っている」といった段階からでも、お気軽にご相談くださいね。






































逆瀬川勇造さん からのコメント
宅建士・2級FP技能士(AFP)・相続管理士
農地を転用して売却する際、農業委員会への届出や許可が必要になりますが、許可申請の場合、許可が得られるかどうかは地域の事情なども考慮されます。農地のある地域や特性次第ではそもそも転用できないというケースも多く、最終的には農業委員会の判断次第となります。このため、農地を転用して売却したいと考えている場合は、該当のエリアで豊富な農地の転用実績のある行政書士や、売却実績のある不動産会社に早い段階で相談するのがおすすめです。