雨漏りしにくい屋根はある?屋根の形状と雨漏りの関係

雨漏りしにくい屋根はある?屋根の形状と雨漏りの関係

掲載日:2020.09.30

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雨漏りって、よっぽど古い家屋でない限り起こらないでしょ、なんて思っていませんか?
新築住宅には売主(ハウスメーカーや工務店など)による瑕疵(隠れたキズ)の10年間保証がありますが、その瑕疵の第1位が「雨漏り」なのはあまり知られていない事実です。国交省資料を引用しますと、防水部分が8割となっていることがわかります。

住宅瑕疵担保責任保険の保険事故の発生状況

出展:国土交通省 「住宅瑕疵担保履行制度のあり方に関する検討委員会報告書 資料集 平成27年3月」

「雨漏り」が発生すると、どこから雨水が侵入しどんな道筋をたどっているのかを調査しますが、横殴りの雨や近年あるようなゲリラ豪雨といった条件が重なるなど再現性の難しいケースもあります。さらに、雨漏りの怖さは放置すると雨水に濡れた箇所が朽ち、住宅の強度に影響してしまうという点です。

修繕には長い期間を要する場合もあり、せっかく購入した住まいなのに雨漏りによって心身ともに消耗してしまう、ということもあるのです。雨漏りが起こりにくい住宅にするためには、どんなことに気を付けたらよいのでしょうか。

そもそも雨漏りの原因になるものは

建物で雨漏りは以下の三つの条件がすべて揃ったときに発生すると言われています。

  • 雨水が通り抜ける孔(隙間)が存在すること
  • 孔のまわりに雨水が存在すること
  • 孔を通して雨水が移動するための力が働くこと

このうちの一つが起こっただけでは雨漏りは発生しません。隙間があってもその周りに雨水が無く、移動しなければ雨漏りにはならないのです。

次に木造住宅において具体的に雨漏りが起こりやすい箇所を見ていきましょう。

屋根

一つ屋根の下というくらい、雨風や雪、日差しなど色々なものから守ってくれる存在が屋根です。屋根が大きければ壁や軒下に雨が掛かることを防いでくれます。しかし、取り合い(つなぎ目)が多い、勾配が緩いなどの要因によって屋根自体から雨漏りが発生してしまうことがあります。

外壁

雨漏りは屋根からするものとお思いの方も多いかもしれませんが、実は外壁からの雨漏りも多いのです。外壁は一枚板でできているわけではありません。外壁と外壁の間や、屋根と壁の間に隙間はあるのです。風を伴う雨は上からだけではなく横からも叩きつけたり、家の形によっては吹き上げる気流が発生するなどで、壁や軒裏にも雨掛かりが起こります。

外壁の雨漏りが深刻化するのは通気工法がとられていない、外壁を直貼りしている住宅です。1970年代頃のモルタル塗りは直貼りが主でした。現在は通気工法の割合が増え、外壁から雨漏りした場合も雨水を長時間留めることなく排出することができるようになりました。もともとは結露対策として考案されましたが、このように副次的利点があったのです。

窓サッシ

窓サッシと壁の防水シートの取り合いの不連続によって壁内に雨水が侵入してしまうことがあります。この場合、施工不良が原因です。また、雨に当たった雨水が壁内に侵入しないようにする水切りがない場合、雨漏りのリスクが高くなります。

ベランダ

ベランダ内に溜まった雨水が居室内に侵入してしまうという事例があります。排水の穴(ドレイン)がきちんと機能しているかをチェックするようにしましょう。とくに、ベランダに植木などを置いていると枯葉などが詰まってしまうことがあります。このように居室に侵入してしまうと「家の中が濡れちゃうわ」だけではなく構造内を伝って1階の壁内に雨水が侵入し腐ってしまう可能性があります。

いくつか紹介しましたが、一番代表的な屋根について引き続き解説します。

雨漏りと屋根の関係

このページを訪れた方は軒0(のきゼロ)の屋根や、片流れ屋根は雨漏りしやすい、とお思いの方も多いかもしれません。しかし、雨漏りが起きる原因は屋根ばかりにあるわけではないのです。

雨漏りを起こしやすい屋根の特徴

どんな屋根が雨漏りのリスクを高めてしまうのでしょうか。

屋根の勾配がゆるやか

屋根の勾配が緩やかな場合、雨水の流れが遅いため雨水が屋根と接する時間が長く雨漏りのリスクが上昇します。しかし、構造や屋根材によっても適切な勾配はありますから急な勾配が良いというわけではありません。

接合部の多い屋根

接合部の多い屋根は雨水の侵入を許してしまう隙間が発生するリスクが高まります。複雑な形をした屋根ほど接合部は多くなります。また、屋根の谷になっている箇所は雨が集まり大量に流れ落ちるためさらにリスクが高まります。屋根自体の雨漏りを防ぐにはシンプルな方がよいといえるかもしれません。

太陽光発電を設置した

太陽光発電を設置すると雨漏りするというわけではありませんが、設置の際の施工で、留め具などが刺さることで雨水が侵入してしまう隙間を作ってしまう可能性があります。設置の際は施工の確認をすると安心ですね。

雨漏りしにくい屋根にするには形状にこだわる

つづいて、屋根の形状ごとに特徴をご紹介します。

  特徴 雨漏れしやすさ
切妻屋根 頂上部から左右に2面が伸びた形の屋根です。
シンプルな形のため初期費用、メンテナンスも安価に済ませることができます。
シンプルな形のため屋根の頂上の部分が主な雨漏りの箇所となります。
片流れ屋根 一方向にだけ傾斜面がある形の屋根です。シンプルな形のため工事費用が安く済む傾向にあります。 一方向だけに向いた屋根のため、降った雨が集中し雨どいが溢れるリスクがあります。
また、屋根の傾斜が高くなっている方の軒下は雨が掛かりやすくなってしまいます。
寄棟屋根 4方向に傾斜した面を持つ屋根です。頂上部は2面が合わさり直線となります。 片流れに比べ雨が流れ落ちる距離が短くなりますが、棟(面が接する山になっている箇所)が接合部となり雨漏りのリスクが発生します。
しかし、軒を大きくとることで壁への雨掛かりを減らすことができます。
方形屋根 寄棟と同じく4方向に傾斜した面を持つ屋根です。頂上部は4面の頂点が集まっています。 形が似ている寄棟屋根と同様です。
陸屋根 屋根が平らになっており、ビルなどに多く利用されています。また、落屑防止のため雪国で多く見かけられる屋根です。 勾配がきちんととれていない、排水溝にゴミが溜まってしまいといった状態で排水がうまくいかず、雨漏りのリスクが高まります。
招き屋根 切妻屋根の2面を高さを違えて配置した形をしています。
差しかけ屋根ともいい、室内空間を大きくとることができます。
高い方の屋根の下の壁と低い屋根の接合部で雨漏りをするリスクが高くなります。
入母屋屋根 寄棟屋根の上に切妻屋根を乗せた形をしています。 形が複雑なため接合部が多く、その分雨漏りのリスクが高まります。

さらに詳しい屋根の形状や価格、メリット、デメリットは関連記事よりご覧ください。

<関連記事>一戸建ての屋根の形と屋根材の種類や選び方

屋根から考える雨漏り対策のポイント

屋根自体の防水と、屋根の持つ「雨がかりを防ぐ」という二つの視点から考えます。

気候に適した形状の屋根にする

日本はほとんどの地域が温暖湿潤気候に属します。弊社(ナカジツ)の店舗がある愛知、福岡は太平洋側の気候となり、台風の影響を受け、降水量は多い地域です。その場合、やはり一時的に多く降る雨に対する備えのある家でなくてはなりません。防水技術が進化したことで、雨の少ないような他の気候地域の住宅の特徴を取り入れた外観デザインも可能になっています。しかし地域に適した屋根の形や建物の特性を抜きにして防水技術のみに頼ったとして、もしも施工に不完全な箇所があった場合、雨漏りのリスクは格段に上がってしまうことでしょう。

避けたほうがいい屋根

こんな屋根は雨漏りのリスクが高まる、というご紹介します。紹介した箇所で必ずしも雨漏りが起こるわけではありませんが、しっかりとした防水施工技術や納まりの設計が必要となります。

谷樋板金がある屋根

屋根に谷になった箇所があれば、そこに自然と雨が集まります。取り合いのある箇所で、流れる水の量が増えれば雨漏りのリスクは高まります。

下屋根と外壁の取り合い部がある屋根

下屋(げや)と言ったりもする、上階の壁に差し掛かる下階の屋根です。構造が複雑になり取り合いが多くなるため雨漏りのリスクが上がります。また、下屋の屋根裏では通気を十分にとることが難しかったため、結露の問題もありました。現在は換気のための部品も開発され、改善されています。

軒先の出、ケラバの出がない(短い)屋根

昭和中期頃まで日本の住宅の屋根は軒が90cmあるものが主流でした。しかし、防水技術の進化によって「屋根で雨を避ける」という役割は薄まり、徐々に軒先の出は短くなりました。近年では軒先の出が15cm程度のものから、全くないものも増えています。これにはデザイン性の他にも宅地の狭小化のなかで敷地面積を確保するため軒先の出が少なくなったと考えられます。

しかし、このように軒先の出が無い家の場合、壁や軒裏に雨が当たってしまい、劣化を促進したり、防水の不備があれば雨漏りを起こしてしまう可能性が高くなります。

以下に軒の出の長さによる壁面への雨がかりの違いをご紹介します。一番左が軒が90cmのもの、一番右の図が軒の出が左右15cmのもので、軒が短いことで多く雨が掛かることが分かります。

軒の出による雨掛かりの違い

軒の出寸法による雨がかり分布の相違
(東京2004年,北壁面,寄棟屋根,屋根勾配20°)
k:壁面に直角の軒の出、p1,p2:壁面の左右方向の軒の出

出展:国土交通省 国土技術政策総合研究所 雨掛かりと防水 – 長持ち住宅の選び方

また、軒先の出が少ない住宅は夏の日差しを取り込みすぎてしまうなどの問題点が上がっています。

塗装

屋根材にもよりますが、屋根は約10年おきに表面塗装のメンテナンスが必要と言われており、費用は40~80万円程度です。塗装剤によってメンテナンスの間隔や費用が異なります。塗装を定期的に行うことで劣化を防ぐことができ、葺き替えによる大きい出費を先延ばしすることができます。

葺き替え

劣化が激しい場合は葺き替えが必要となります。一般的に使用されているスレート屋根の葺き替えは60~180万円程度必要となります。面積や足場を組むかどうか、使用する屋根材など、状況によって価格は変わります。屋根の下時まで傷んでしまっていると、さらに高額の費用が必要です。

初期コストとランニングコストを考えて屋根を選ぶとよいでしょう。比較的費用の抑えられる重ね葺きという工法もあります。

壁面や屋根などいろいろな場面で使用されているコーキング(目地部分を埋める樹脂)は劣化しやすい箇所の一つです。長くて10年程度、早くて5年ほどで劣化してしまいます。また、日射、風の影響が大きい屋根のパーツには屋根の接合部を覆う板金、破風などがあります。雨漏りを起こさないためにも定期的な点検、メンテナンスを行いましょう。

関連記事では住宅のメンテナンスとしてどんなことをするのか、相場はどれくらいかをご紹介しています。ぜひご覧ください。

<関連記事>一戸建ての維持費はいくらになる?知っておきたい維持費について

参照図書:石川 廣三(2018)「雨仕舞のはなし」

雨漏りしにくい、耐久性に優れた家をご検討中の方はナカジツにご相談ください

家を傷める雨水を避けるために先人たちは雨を避ける方法を工夫してきました。近年はゲリラ豪雨というように激しい雨が多くなってきたように思います。このような厳しい天候に耐える家を建てる、保つにはぜひご紹介した知識を気に留めてみてください。

また、どんな形の屋根、外壁にするにしても施工レベルが低ければ雨漏りのリスクは高まってしまいます。加えて、外部から雨水が侵入してしまったとしても、各箇所において通気が考慮された住宅であれば家が傷むリスクは軽減されますし、定期的なメンテナンスを行うことで早期の対処が可能になります。注文住宅を検討する際、新築・中古住宅を購入する際にもぜひ気に留めて、購入後は定期的なメンテナンスを行いましょう。

不動産SHOPナカジツは不動産仲介、新築住宅、リフォームといった住まいの総合サービスを展開しております。分譲住宅事業では、施工レベルにおいて外部検査機関による高い評価を獲得しております。お客様以上にお客様のことを考えるをモットーとする不動産SHOPナカジツに、どうぞご相談ください。

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