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相続税における配偶者控除とは?控除を受けるための条件や具体的な計算式を解説

相続税における配偶者控除とは?控除を受けるための条件や具体的な計算式を解説

掲載日:2020.03.26

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 「配偶者が遺産を相続した際、1億6,000万円までなら相続税はかからない!」という話を聞かれたことがあるのではないでしょうか。
 これは、『配偶者の相続税額の軽減』という特例(いわゆる相続税の配偶者控除)があるからなのですが、それだけを聞くと「そんな特例があるならできる限り使った方がいい!」とつい考えてしまいがちです。

 しかし、この伝家の宝刀のような特例にもデメリットや注意しなければならない点があります。
 今回は相続税における配偶者控除について、そのメリット・デメリットから適用要件や具体的な計算方法まで詳しく解説します。

配偶者控除とは

1.相続税における配偶者控除とは

(1)配偶者控除で相続財産が1億6,000万円までなら無税

 相続税に限らず、税金を計算する際に配偶者控除という優遇措置が設けられていることが多いですが、もちろんそれには理由があります。

相続税の場合は、

  • ●配偶者は被相続人の相続財産の形成に一定の貢献をしていると考えられること や
  • ●被相続人亡き後の配偶者の生活をある程度保障する必要があること

などの理由で、配偶者にはある一定の金額まで相続税がかからないよう特別な配慮がなされています。

 その一定の金額とは「遺産のうち配偶者の法定相続分、もしくは1億6,000万円のいずれか多い金額で、実際に配偶者が相続等により取得した財産の課税価額まで」ということが相続税法で定められており、計算式で表すと次のようになります。

配偶者控除額 = 相続税の総額 × ①と②のいずれか少ない額 / 課税価格の合計額

  • ①“課税価格の合計額×配偶者の法定相続分”と“1億6,000万円”のいずれか多い額
  • ②課税価格の合計額のうち、配偶者が取得した財産の課税価額

 これによって、「配偶者が相続した財産が、課税価格の合計額(遺産総額)の法定相続分か1億6,000万円以下であれば相続税はかからない」ということになるわけです。

(2)法定相続人の順位と配偶者の法定相続分

 配偶者の法定相続分は、相続人が誰なのかによって異なります。
 民法において被相続人の配偶者は常に法定相続人となりますが、その他の親族で法定相続人となる者には次のような順序が決められています。

  1. 【第一順位】 被相続人の子や孫(直系卑属)
  2. 【第二順位】 被相続人の親や祖父母(直系尊属)
  3. 【第三順位】 被相続人の兄弟姉妹

 そして、この順位に応じて配偶者の法定相続分も、第一順位の場合は1/2第二順位の場合は2/3第三順位の場合は3/4と定められています。

2.配偶者控除のメリットとデメリット

配偶者控除のメリットとデメリット

(1)メリット

 この特例を使うと、配偶者が相続等により取得した財産価額が1億6,000万円までであれば配偶者の相続税額をゼロにできるということが最大のメリットです。
 また、被相続人の遺産が高額で、仮に配偶者の取得分が1億6,000万円を超えてしまったとしても、法定相続分までであればやはり配偶者の相続税額をゼロにできます。
 相続税の他に贈与税や所得税でも配偶者控除はありますが、それを活用することによる控除額(節税効果)は、他のものとは比較にならないほど大きいといえるでしょう。

(2)デメリット

 一方で、配偶者控除はその名称からも明らかな通り、配偶者のみに認められている優遇措置です。
 そのため、一次相続で遺された配偶者が次に亡くなった際、つまり二次相続においてこの特例は使えなくなります。
 一次相続で多くの遺産を配偶者が取得し、特例を使って配偶者の相続税額をゼロにできたとしても、配偶者が取得した遺産を子ども等が相続することになる二次相続では特例が使えず、結果的に子ども等が多額の相続税を負担することになってしまうことも少なくありません。
 一次相続で配偶者控除を最大限活用することが、必ずしも相続税の負担を最小化できるとは限らないということに注意しておかなければなりません。

3.配偶者控除を受けるための条件

 相続税の配偶者控除の適用を受けるためには、次のような条件を満たす必要があります。

(1)戸籍上の配偶者であること

 この特例に限ったことではありませんが、民法や相続税法において配偶者とは『被相続人と正式な婚姻関係にあった者』をいいます。
 従って、この特例を受ける資格がある配偶者は、相続開始以前に市役所等に婚姻届を提出している被相続人の戸籍上の配偶者ということになります。
 言い換えると、事実婚などの内縁関係にある者は配偶者に該当しないため、この特例の適用を受けることはできません。

(2)遺産分割が確定していること <相続税法19条の2 ②項>

 先の計算式からも分かる通り、配偶者控除額を算出するには、配偶者が実際に取得した財産の課税価額が決まっていなければなりません。
 そのためには、相続税の申告期限までに相続人間で遺産分割が確定している必要があります。
 万一、申告期限までに相続により取得した財産の全部又は一部が相続人間で分割されていない場合には、分割が確定している財産に対してしかこの特例を適用することはできません。

(3)相続税申告書を税務署に提出すること <相続税法19条の2 ③項>

 この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に所定の書類を添付して提出することが要件になっています。
 従って、特例を使った結果、相続人の納付する税額が仮にゼロになったとしても、申告書は必ず提出しておかなければなりません。

(4)財産を隠していないこと <相続税法19条の2 ⑤項・⑥項>

 当たり前のことですが、相続税の申告においてある特定の財産を隠していた事実が税務調査によって発覚したような場合には、その財産に対してまでこの特例の適用を受けることはできません。
 また、調査によって仮装隠蔽行為が発覚した場合に限らず、仮装隠蔽行為が調査により発覚することを納税者が予知して修正申告又は期限後申告を提出した場合であっても同様です。

4.配偶者控除の具体的な計算方法

配偶者と子ども二人が相続人の場合

 では、具体的な例を用いて、配偶者控除を適用した場合の控除額と相続人が納付する税額を計算してみましょう。前提は以下の通りです。

  • ●課税価格の合計額(遺産総額)は3億円
  • ●相続人は配偶者と子ども2人の計3人
  • ●遺産は均等(配偶者・子どもが各1/3)に分割する
  • ●配偶者控除の他に適用できる税額控除はない

相続税の計算方法、基礎控除については過去記事をご覧ください。
相続税の計算方法は?具体的な計算例と、控除額について知りたい!
相続税の基礎控除とは?計算方法や増やす方法は?

A.基礎控除額 3,000万円+600万円×3人=4,800万円
B.課税遺産総額 3億円-4,800万円=2億5,200万円
C.法定相続分に応じた相続人毎の各取得金額
【配偶者】・・・ 2億5,200万円×1/2=1億2,600万円
【子ども】・・・ 2億5,200万円×1/4=6,300万円/人
D.相続税の総額
【配偶者】・・・  1億2,600万円×40%-1,700万円=3,340万円
【子ども】・・・ 6,300万円×30%-700万円=1,190万円/人
相続税の総額 3,340万円+1,190万円×2人=5,720万円
E.相続人毎の相続税額
【配偶者・子ども】 5,720万円×1/3=約1,907万円/人
F.配偶者控除額 ☚今回のトピックス

配偶者控除額 =相続税の総額 × ①と②のいずれか少ない額 / 課税価格の合計額

  • ①“課税価格の合計額×配偶者の法定相続分”と“1億6,000万円”のいずれか多い額
  • ②課税価格の合計額のうち、配偶者が取得した財産の課税価額
①配偶者の法定相続分 3億円×1/2=1億5,000万円 < 1億6,000万円 
∴1億6,000万円
②配偶者の取得財産価額 3億円×1/3=1億円 <① 
∴1億円
配偶者控除額 5,720万円×1億円/3億円=約1,907万円
G.相続人毎の納付税額(E-F)
【配偶者】 1,907万円-1,907万円=0円
【子ども】 1,907万円/人
納付税額合計 0円+1,907万円×2人=3,814万円

 このケースでは、配偶者は特例を使うことで相続税がかかりませんが、子どもには各1,907万円の相続税がかかり、合計3,814万円の相続税を納付する計算になります。

5.配偶者控除の注意すべきポイントは

相続の注意点

(1)修正申告や期限を過ぎた申告の場合

 相続税の申告書は申告期限、すなわち相続開始日(通常は被相続人が亡くなられた日)の翌日から10か月以内に提出すること(期限内申告)が原則ですが、納税義務があることを知らずに期限を過ぎてから申告するケース(期限後申告)や、期限内に申告した内容に何らか誤りがあって修正すること(修正申告)があります。
 配偶者控除は期限内申告に限られたものではありませんので、そのような場合であっても先の条件を満たしていれば適用を受けることはできます。

(2)遺産分割する前に配偶者が亡くなった場合

 遺産分割を行っている最中に、被相続人に続いて配偶者まで亡くなってしまうこともあり得ます。
 その場合、遺された相続人(子ども等)で一次相続における配偶者の取得分も含めて分割方法を協議して決めることになりますが、そこで合意した配偶者の取得分については配偶者控除の適用を受けることができます。

 尚、二次相続においては配偶者が存在しませんから、当然ながら配偶者控除の適用はありません。

(3)申告期限までに遺産分割がまとまらない場合

  先の条件に述べた通り、配偶者控除の適用を受けるためには、申告期限までに遺産分割が確定している必要があります。
 しかし、相続人間で分割協議が難航して申告期限までにまとまらないということが実際にはあります。

 その場合、誰が相続するかまだ決まっていない財産(未分割財産)については配偶者控除の適用を受けることができませんが、未分割財産は相続人が法定相続分に応じて相続したものとして一旦相続税の申告を行うことになります。
 その際、『申告期限後3年以内の分割見込書』を申告書に添付しておけば、申告期限から3年以内に遺産分割がまとまった場合は、未分割であった財産についても特例の適用を受けることができます。

(4)申告期限から3年経過しても遺産分割がまとまらない場合

 また、最悪の場合、分割協議がもめて相続人間の訴訟にまで発展するといったことも考えられます。
 そのように申告期限後3年以内に分割されなかったことについてやむを得ない事由がある場合には、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月以内に、税務署に『遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書』を提出し、承認を受ける必要があります。
 そして、判決が確定するなど分割できない事由が解消した場合には、その翌日から4か月以内に遺産分割を確定させ、既に提出している申告内容に修正があれば修正申告を行い、配偶者控除を適用することによって納め過ぎた税金があれば必要な手続(更正の請求)を行うことで還付を受けることができます。

(5)二次相続について

 配偶者控除で最も注意すべき点は、デメリットでも触れたように二次相続でこの特例は使えなくなるということです。
 それにより、一次相続での遺産分割の仕方によって、一次相続と二次相続のトータルの相続税額にも大きな差が生じてきます。

 例えば、先の例で一次相続の納付税額は約3,814万円になりましが、配偶者が相続した遺産(1億円)をそのまま二次相続で子ども2人が均等に相続したとすると、二次相続の納付税額は合計で770万円となり、一次相続と二次相続のトータルの相続税額は約4,584万円になります。

 仮に、この特例を最大限活用するために、一次相続で配偶者が1億6,000万円を取得したとします。
 すると、確かに一次相続の納付税額は約2,669万円に減りますが、同じ条件で計算した二次相続の納付税額は2,140万円に増え、一次相続と二次相続のトータルの相続税額は約4,809万円になります。
 その結果、同じように計算しても両者で納付する税額には約225万円もの差が生じてしまいます。

 このように、一次相続に限れば配偶者控除をできるだけ活用した方が得策であることは明らかですが、二次相続まで考え合わせると、「一次相続で配偶者が多くの財産を相続することが必ずしも最善の結果に繋がるとは限らない」ということを十分に理解しておく必要があります。

まとめ

相続税 家族会議

 相続税の配偶者控除は、相続税の負担を軽減するためには欠かせない手段の一つですが、この特例を適用する際は必ず二次相続まで含めて相続税額を試算し、一次相続と二次相続のトータルで最も相続税額が少なくなるような財産配分を考えることがとても重要です。

 もし、相続税額の試算が煩雑でご自身で行うことが難しければ、相続に詳しい税理士に相談されることをお勧めします。

■執筆:公認会計士、税理士 松井 信行 先生

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