この記事は1年以上更新されていません。内容が古くなっている可能性がありますのでご注意下さい。
あなたが万が一住宅ローンの支払いに頭を悩ませるようになってしまったとしたら、真っ先に誰に相談するでしょう。ただでさえデリケートな金銭問題に関して、近しい誰かであってもちょっと相談しづらいと感じる方が多いのではないでしょうか。
こうした気後れから足踏みしてしまい、気付いたら大切な住まいを失っていた……こんな一大事を回避するためにも、今回は住宅の【任意売却】について学んでいきましょう。
任意売却とは
任意売却とは、その名の通り、不動産を『自分の意思で』売却する方法のこと。【任売】と略されることもあります。
基本的に、不動産を売却したくなっても、住宅ローンを完済できなければそれは叶いません。
住宅ローンが返済できなくなり、担保となっている不動産を売却してもローンが残ってしまう状況を『オーバーローン』と言います。
任意売却は、こういった状況に陥った際、借入先の金融機関に合意を得ることで不動産を売却できるようにする手段なのです。
他の売却方法との違いを見ていきましょう。
通常の売却との違い
先ほども少し触れましたが、不動産を売却するためには、住宅ローンを全額返済する必要があります。
任意売却は、不動産がオーバーローンで売却できない状態を脱却できる代わりに、通常売却と異なる下記の手順を取る必要があります。
①借入先の債権者(金融機関) の同意を得る必要がある
②売却金額は債権者の許可を取得
任意売却を選択しなければならない状況下において、残債より売却価格が上回るといったケースは少ないのが現状です。債権者としては、任意売却で少しでも早急に、より多くの金額を返済してもらいたいという意図があります。
住宅ローンの回収金額が変わるため、買い手が付いた場合であっても債務者に購入申込書と売買代金配分票を提出してもらい、売却価格を精査する必要があります。
競売との違い
【競売】とは、債権者が裁判所に申し立てることで行われる、まさに『住宅のたたき売り』と言ってもおかしくない売却方法となります。
債務者の意思に関係なく、裁判所が不動産を差し押さえ、インターネットや新聞を経由して、短期間開催のオークション形式で不動産の購入者を決定します。
売却価格を相談する余地がある任意売却とは異なり、競売中に提示された最高額がその不動産の売却価格となります。
また、競売にかけられている不動産は内覧ができません。購入者にとってもハイリスクであることから、通常売却・任意売却と比べると不動産価格が相場の7割~と、非常にお買い得な価格で不動産を手放すことになってしまうのです。
そして、競売開始から購入者決定までの期間で発生した遅延損害金などの諸経費が残債に上乗せされるという、全く嬉しくないサプライズイベントが発生することもあり、買う側・売る側双方にメリットが見出せない売却方法と言えるでしょう。
滞納したまま何もせずずっと放置しておけば、ゆくゆくは競売にかけられてしまう未来が待っています。
任意売却ができるのはどんなとき?いつからいつまでできるか
任意売却をしたいと思っても、実際にどのような流れで進んでいくのでしょうか。まずは任意売却が可能な期間を確認していきましょう。
任意売却への道のりは、まず初めに【期限の利益】を喪失するところからスタートします。
【期限の利益】とは、住宅ローンなど債権者からまとまった金額を借りた場合の返済に関して、決まった返済期日まで猶予をもらえることです。
借りたお金を今すぐ返さなければならないことよりも、この日までに返してね、と支払いを待ってもらえることにより生まれる余裕が、債務者にとってはメリット(利益)であると考えられているのです。
その期限の利益を『喪失する』ということは、将来的に支払う予定だったものを今すぐ払わなくてはならない状態を言います。
一般的に、住宅ローンの場合支払を滞納したまま3~6ヶ月経過 してしまったり、任意整理や自己破産を行ったりした場合に、期限の利益を失ってしまいます。
期限の利益喪失を予告する書類が送られてきますので、確認次第すぐ行動に移しましょう。
住宅金融支援機構以外の任意売却が認められている金融機関であれば、任意売却での手続きを開始することができます。
任意売却の手続きと競売の手続きは、同時進行で行われていきます。
極端に言ってしまえば、競売開札日の前日までならば任意売却が可能です。しかし、任意売却を行うためには、話し合いをして全ての債権者の承認を得た上で、競売の申立を取り下げてもらわなければなりません。
債権者との交渉期間は、最低でも1か月以上は見ておいた方が良いと考えると、早めの行動が良い結果に結びつく可能性は高くなると言えるでしょう。
債務者が任意売却に応じなかった場合は任意売却自体ができなくなってしまいますので、交渉は任意売却の専門業者に依頼することをおすすめします。
また、開札日もしっかりとチェックしておく必要があります。
開札とは、投函された入札書の封を切って落札者を決定することです。この落札者が決定する前に競売の申立を取り下げることができれば、競売を回避することができます。少しでも早く専門業者を見つけ、相談しましょう。
任意売却の流れ
1.不動産会社を決定
専門知識を必須とする任意売却の手続きは、実務経験が豊富な不動産会社にお願いしましょう。依頼前の不動産会社リサーチが大切です。
金融機関によって名称が異なるため、確認してみましょう。債務者全員分の証明書が必要となります。金融機関から送付されてきた際は無くさないよう大切に保管しておく必要があります。
2.【住宅ローン残高証明書】の取得
金融機関によって名称が異なるため、確認してみましょう。債務者全員分の証明書が必要となります。金融機関から送付されてきた際は無くさないよう大切に保管しておく必要があります。
3.不動産の査定
不動産査定を行い、売却価格を決定していきます。固定資産税や管理費、修繕積立金などの滞納の有無も査定項目に含まれており、関係者が異なってくるため正直にお伝えしましょう。任意売却は通常の売却よりも手続きに時間を要するため、一般的な市場価格の80%くらいで売却価格を決定する場合が多い傾向にあります。
4.任意売却手続きの開始
任意売却スタートです。窓口を一つに絞るため 、不動産会社と専任媒介契約もしくは専属専任媒介契約にて契約し仲介を依頼します。内覧の準備や訪問対応を行うなど、何かと忙しくなる時期となりますが落ち着いてクリアしていきましょう。
任意売却しようとする不動産を担保 として複数のローンを組んでいる、さらにはその中の一つで差し押さえされている場合もあるでしょう。そのように複数の抵当権が設定された不動産を売却する場合は債権者全員分の合意を必要としますので注意しておきましょう。
5.売買契約
買受人との価格交渉が終わると、売買契約の締結のために債権者と話し合いが行われます。購入申込書、売買代金配分票を提出する必要があります。
オーバーローンにより残債が出る場合の返済方法も交渉となり、債権者の許可を得て売買契約を締結します。
6.決済・引き渡し
円滑に家を引渡せるよう、引渡しの準備をしましょう。契約締結後1か月~1か月半後に引き渡しとなるケースが多いようです。
任意売却の後、住宅ローンの残債がある場合は?
任意売却の場合、売却代金をもってしても残ってしまった借入金のことを【残債(残債務)】と呼んでいます。
通常、残債を全返済できなければ抵当権の解除はされませんが、任意売却の場合は残債があっても抵当権が解除され、担保から不動産が外れた状態の債権となります。
そして、この残債は債権者との話し合いを行い、債務者の生活状況を考慮した金額範囲での分割返済が可能となります。
その分割返済すら難しく、日常生活すらままならないといった場合には、自己破産や生活保護申請を検討してみる必要もあるでしょう。
また任意売却後、債権譲渡によって債権者が債権回収業者に変更となる場合もあります。
債権“譲渡”と言っても、実際は債権回収業者が実際のローン残債より低価格で債権の買い取りが行われます。
この債権回収業者は通称【サービサー】と呼ばれていて、債権譲渡の通知が来た後は、今後サービサーと返済計画の話し合いを行っていくこととなります。
任意売却の費用は?
任意売却の手続きに関して、一般的な売買と同じように様々な費用が発生します。
・抵当権抹消登記の費用
・抵当権解除のための書類作成費用
・売買契約書に貼る印紙代(売却金による)
・不動産会社への仲介手数料(成功報酬)
また、管理費や修繕積立金、固定資産税、住民税などを滞納している場合はその費用も支払いが必要となります。
そして、必要に応じ解体費、測量費などが発生することがある他、売却金額に利益が出た場合には譲渡所得税が発生する場合がありますので、覚えておくと良いでしょう。 しかし、任意売却の場合、諸経費について売却金からの支払いが容認されているため、自己資金を捻出することなく手続きを終えることが可能となります。
金銭的な面をもう少しお話するならば、弁護士および司法書士を通しての任意売却は、一回の相談ごとに相談費用が発生してしまいます。
そのため、任意売却に関して知識が豊富な専門の不動産会社を頼って相談した方が良い結果に繋がる可能性が高いと言えるでしょう。
関連記事:抵当権とは?相続したときに抹消手続きをしないと損をするってホント?
:固定資産税とは?支払いのタイミングはいつ?
任意売却のメリット・デメリット
これまで見てきたように、競売と比較して、任意売却は債務者にメリットが大きい不動産取引と言われています。改めてメリット、デメリットをまとめていきます。
メリット
不動産のバーゲンセールのような仕組みとなる【競売】。それと比較すると、任意売却は良い面が目白押しとなっています。確認していきましょう。
通常の販売方法で市場価格で売却ができる
開札日の関係で、通常よりは早めの行動が必要となりますが、市場価格で販売ができることは今後の生活のことも踏まえるとかなり大きな強みとなるでしょう。
競売では難しい内覧も任意売却では可能となります。物件写真だけ見る場合と実際に見る場合では、印象が大きく異なることも考えられるため、購入希望者として内覧は欠かせない工程のひとつ。
売却の決め手にもなり得ますので、売り出し中の内覧希望は積極的にお受けし、出来るだけ多くの方に不動産の情報を知ってもらう事が早期売却につながるはずです。
残債をまとめ、無理のない範囲で返済することができる
先程も少し触れさせて頂きましたが、任意売却後の残債は協議のうえ、分割で返済していくことが可能になります。
任意売却を行うと、勤務先や家族環境、世帯収入などを記入して提出する【生活状況確認票】に基づき、生活状況を考慮して毎月の現実的な返済額を決定します。
生活状況確認票は金融機関によって名称が異なりますので、ローン借入先に確認してみると良いでしょう。
月額5,000円~30,000円にて返済額を決定する場合が多いようです。
周囲にローン滞納を知られずに売却できる(競売は公告されてしまう)
競売は新聞やインターネットなど、多くの人目につくような広告方法が取られてしまうだけでなく、購入希望者(主に不動産会社)が近隣住人および自宅へ聞き取り調査に訪れることも少なくないようです。
室内状況の報告資料に添付される写真は、家具などもそのまま、現在の生活状況が伺える写真が掲載されます。
ホームページ上で誰でもダウンロードできてしまうため、ご近所の方にも競売であることが分かってしまうのです。
任意売却の販売方法は、あくまで一般的な売却と同じ方法で売り出されます。プライバシーが保護されるため、経済事情が公になることなく不動産の販売が可能です。
引っ越しに余裕ができる
任意売却の場合は、契約日や明け渡し日の希望をお伝えし、買い手に相談することができます。そして、話し合いが必要となりますが、諸費用として売却費用で引っ越しにかかる料金を出せる可能性もあるのです。
全額は負担できないことももちろん考えられますが、これからの生活を考えると、金銭的な負担が少なくなるだけでも、経済的な部分では大きな助けとなるでしょう。
任意売却は、心理的・経済的に余裕を持たせてくれる売却方法なのです。
デメリット
これまで、任意売却の良い面をご紹介してまいりました。
続いて、デメリットと言われている部分に関して、一緒にチェックしていきましょう。
任意売却にデメリットが無いことはないが、基本的に競売になるよりは良い条件で売却が可能になる。
滞納をすることでブラックリストに載ってしまう
これは住宅ローンに限らず、クレジットカード、キャッシングなどの支払いを滞納すると、個人信用情報に傷がつく(ブラックリストに載る)と言われています。
任意売却は滞納してから3~6ヶ月経過し、期限の利益を喪失することで行えるようになりますが、この際ブラックリストに載ってしまう可能性は大いにあると言えます。
信用情報に傷がついてしまうと、一定の期間クレジットカードの新規発行ができなくなったり、金融機関からの借り入れができなくなってしまったりといったことが発生します。
掲載期間は最短で5年、長くて7年と言われています。大きな買い物がしづらくなってしまうので、掲載されないに越したことはありません。
また、税金を滞納した場合ブラックリストには載りませんが、ローン審査の際に提出する納税証明書に未納の記載がされてしまいます。
ローンの審査に影響を及ぼす可能性があるため、ローン申し込みをする前に納税を行っておくとよいでしょう。
任意売却で買手が付かないと競売になってしまう
任意売却において、販売開始してから6ヶ月を過ぎても買い手が見つからない場合、競売と並行しながら任意売却も進めていく流れとなります。
競売にて買い手が見つかった場合は、残念ながら任意売却での販売は諦めざるを得ません。
どんなに時間が迫っていたとしても、開札日の1か月くらい前までには買主を見つけなければ、必要書類の手続きや抵当権抹消のために必要な時間を確保することができないのです。
こうならないためにも、任意売却に特化した専門業者選びは、特に力を入れることが重要となってきます。
任意売却に関する悪徳業者がいる
任意売却を行うためには、専門知識や交渉力を必要とします。残念ながらこうした任意売却の専門知識を悪用する悪徳業者が存在します。
残された時間を意識しすぎて必死になっているときほど視野が狭くなり、見極めることが難しくなりがちなので、より一層注意が必要です。
悪徳業者の見極めポイントはズバリ、【仲介手数料】と【引っ越し代】。
任意売却業者に支払う報酬(仲介手数料)は、上限が取引価格の3%+6万円(税別)と法律で決まっています。
支払いのタイミングも売買が成立した後となるため、不動産会社への事前支払を求められることはありませんし、支払う必要もありません。
また、【引っ越し代が全額もらえる】とうたっている業者も要注意です。任意売却が成立すれば、引っ越し代を売上から捻出できる場合もあります。
しかしこれはあくまで債権者との協議の上金額が決定するため、契約前に引っ越し代を全額カバーできると言ったような打ち出し方は問題があると言えるでしょう。
また、売上から控除される引っ越し代も、30万円という上限が決まっています。こうした業者に依頼した場合、手数料を支払ったにもかかわらず一向に売却が進まない、とにかく自己破産をオススメされる、など貴重な時間がどんどん失われてしまいかねません。
業者選定の際は実際に電話して任意売却の実績があるかを確認することが必要です。地域に密着した販売に強い会社に焦点を当ててみると良いでしょう。
関連記事:不動産売却時の仲介手数料の相場は?上限金額と計算方法を解説
任意売却によくある質問
任意売却を行うにあたり、よく寄せられる疑問にお答えします。
マンションの管理費を滞納しているのですが
マンションの管理費を滞納していたとしても、任意売却は可能ですし、清算しなければならないという決まりも実はないのです。
しかし、管理費や修繕積立金を滞納したまま売却すると、次の買主が滞納分を清算しなければならなくなってしまうため、諸経費として売り上げから控除してもらうよう協議した方が良いでしょう。
任意売却ができない場合もある?
金融機関によっては、競売での回収しか受領しないといった企業も一部ですが存在しています。市場価格と残債に大きな差が出てしまう場合にも金融機関からの同意が得られないことがあるようです。
任意売却をすると、連帯保証人に迷惑がかかるのでは?
また、任意売却はすべての債権者はもちろんのこと、連帯保証人など債務を共にする人が要る場合はその人の同意が必要となります。
連帯保証人に連絡が取れないため同意が得られないなどと言った場合にも、任意売却を行うことができませんのでご注意下さい。
債務者が返済を滞納した時点で、連帯保証人にも返済の督促状が送られていますので、経済状況が厳しいということは図らずも伝わってしまっています。
任意売却ができず競売での落札となってしまった場合で、残債の一括返済もできず自己破産すると、連帯保証人に残債返済の債務が移ります。
連帯保証人の給与差し押さえといったことにもなりかねませんので、迷惑度合いを少しでも緩和するために任意売却を行い、少しでも残債を減らすことが得策と言えるでしょう。
離婚するときも任意売却は可能?
家が財産分与の対象であったとしても、物理的に分けることは非常に難しいと思われます。そのため、離婚の際は売却してお金に換えてから財産分与を行うか、どちらか一方が評価額の半額で買い取り、残りの半分をもう一方が支払うといった方法をとるのが無難な方法と言えます。
しかし、任意売却の場合残債が評価額を上回る【オーバーローン】の状態となることが珍しくなく、その場合は家の資産価値は0となり、財産分与の対象からは外れてしまいます。
離婚後に家をスムーズに引き払いたい場合は、任意売却がおすすめです。気を付けなければならないのは、離婚後に債務者のどちらか一方と連絡が取れなくなってしまったときのことを想定しておくこと。
こういったケースは良くあるパターンとなるため、離婚時に離婚協議書を含めて公正証書にしておき、連帯保証人を解除できない場合にどうするかきちんと取り決めておくと安心です。
公正証書作成には【公証人手数料】が発生し、公正証書が役割を果たした場合に得られる利益が、大きい時ほど手数料も高くなる傾向にあります。
しかし、公正証書には高い証明力があるので、相手の支払いが滞った際に、裁判をしなくても強制執行できる可能性が生まれ、財産回収が容易となることが最大のメリットと言えるでしょう。
また、離婚後も子供の生活環境を変えたくない、家にそのまま住み続けたい場合は、家族間売買やリースバックといった方法も視野に入れ検討してみましょう。
スムーズに手続きを行って、新生活へ備えましょう。
関連記事:リースバックの基本|リースバックの仕組みやメリット・デメリットなど解説
任意売却について、いかがでしたでしょうか。今回のポイントをまとめてみましょう。
・任意売却は時間との勝負!早めの相談を
・業者選びには力を入れよう
・公正証書は作っておくのが吉
・競売は最終手段。できるだけ避けよう
可能であるならば、ローンを滞納される前の段階から任意売却の相談を行っておくと、余裕を持った取引が行えるはずです。
いつから行動に移すかが、円滑なお手続きを行うための鍵となります。
生活状況も目まぐるしく変化していきます。今後支払いの雲行きが怪しくなりそうと感じた場合は、すぐに然るべき期間にご相談することをおすすめします。
不動産の売却相談なら、地域密着でワンストップサービスの不動産SHOPナカジツへ!
ナカジツで住宅を探す▼
↓物件検索はこちらからどうぞ。