
この記事のポイント
- 相続税評価額と実際の売却価格には差があり、それぞれ異なる基準で税金計算が行われるため、両方を正確に把握しておく必要がある
- 相続税の納税資金を確保するために土地を売却するケースも多く、そのタイミングによって適用できる節税特例が異なる
- 相続後の土地売却では「取得費加算の特例」などを活用することで、譲渡所得税を大幅に軽減できる可能性がある
「相続した土地、どうすればいいの?」
「売却したら相続税ってどうなるの?」
土地を相続した場合、その後の売却には相続税・譲渡所得税・確定申告など、さまざまな税金や手続きが関わってきます。間違った判断をしてしまうと、不要な税金を支払ってしまったり、申告漏れによるペナルティを受けたりするリスクもあります。
そこで今回は、相続と不動産売却という複雑なテーマで、税金を抑えてスムーズに手続きを進めるためのコツをまとめています。読み進めることで、あなたの状況に合った土地の売却判断と、損しないためのポイントがきっと見えてきます。
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地方銀行、住宅会社勤務を経て住宅や不動産を中心としたライターとして活動。現場で多くのお客様の対応で経験させていただいたことをもとに、専門知識に基づいた分かりやすい記事執筆に取り組んでいます。
記事の構成
土地売却と相続税の関係を考えるときの3つのポイント
まずは、相続した土地の売却と相続税に関する3つのポイントを、わかりやすく整理して解説します。全体像を理解し、正しい判断につなげるための知識を身につけていきましょう。
相続税評価額と実際の売却価格は違う
相続した土地の価値を考えるとき、最初に知っておきたいのが「相続税評価額」と「実際の売却価格」は必ずしも一致しないという点です。
相続税評価額とは、相続税を計算する際に用いられる金額で、市場で売却した場合の価格(実勢価格)とは異なることがほとんどです。
| 相続税評価額 | 国税庁が定める「路線価」や「固定資産税評価額」などを基準に算出。相続税評価額は1年に1回しか公表されないことから、1年間の地価の変動を考慮し、納税者間の公平を図るために時価の80%程度を目安に定められます。 |
|---|---|
| 売却価格 | 実際の市場で売ったときに成立する金額。不動産市況や地域の需要、土地の形状・状態などによって大きく変動します。 |
例えば、相続税評価額が2,000万円の土地でも、実際に不動産会社を通じて売却したら2,800万円で売れることもあります。逆に、評価額が2,000万円でも、立地や土地の状態によっては1,500万円程度でしか売れないこともあります。
相続税の申告や納付は「相続税評価額」に基づきますが、その後の土地売却で得た金額との差額が「譲渡所得税」の計算に影響します。売却を検討している場合、まずは評価額と市場価格の両方を把握しましょう。
相続税を払うために土地売却するケースも考慮する
相続税は原則として「現金」で納める必要があります。しかし、相続した土地や不動産は、現金化しない限り納税資金に充てられません。
一定数の方が、相続税の納付資金を捻出するために土地を売却しています。
参考までに、2024年のリクルート社の調査によれば、「不動産売却の主な動機」のうち、21%が「相続・贈与」と回答しており、そのうち16.1%が「まとまったお金を手に入れるため」と回答しています。また、「相続・贈与」と回答した方の売却物件の内訳をみると、約37%が「土地」となっています。
参照:2024年『住まいの売却検討者&実施者』調査(首都圏)|株式会社リクルート
特例により相続税が譲渡所得税の節税になることがある
相続した土地を売却した場合、譲渡所得税(不動産の売却益に対する税金)が発生します。
しかし、「相続税」を支払っている場合には、特例(取得費加算の特例)を活用することで、譲渡所得税を軽減できる場合があります。
詳しくは後述しますが、例えば、土地を相続して、その土地にかかる300万円納付したBさんが、相続した土地を相続開始から2年後に売却したケース。特例の要件を満たしていれば売却益の計算時に、この300万円を取得費(税金計算における経費のようなもの)に加算できるため、譲渡所得が減り、その分だけ譲渡所得税が軽減されます。
1)土地の相続税評価額と売買価格の違い
相続で取得した土地を売却しようと考えている方にとって、「相続税評価額」と「売買価格(時価)」の違いを理解することは重要です。
この章では、両者の違いをわかりやすく解説し、実際に相続や売却を進める際に役立つアドバイスや注意点も紹介します。
相続税評価額は「路線価方式」または「倍率方式」で計算
相続税評価額とは、相続税を計算するために国税庁が定めた基準で算出される土地の価値です。
実際の市場価格(売買価格)とは異なり、「路線価方式」または「倍率方式」という特別な方法で計算されます。
| 路線価方式 | 市街地などの道路ごとに定められた「路線価」に土地の面積を掛けて評価額を算出します。路線価は毎年7月に国税庁から発表されます。 |
|---|---|
| 倍率方式 | 路線価が定められていない地域の場合、固定資産税評価額に一定の倍率(地域ごとに決まっている)を掛けて評価します。 |
ある市街地の土地(100㎡)で、接している道路の路線価が「20万円 / ㎡」だった場合、20万円 × 100㎡ = 2,000万円 これが相続税評価額となります。
路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」サイトで誰でも調べることができます。相続予定の土地について事前に調べておくと安心です。
参照:財産評価基準書|国税庁
売買価格は「市場価格(時価)」
一方、売買価格とは実際に土地を売却する際に、買主との間で決まる価格です。これは「市場価格(時価)」と呼ばれ、立地や周辺環境、取引事例などによって大きく変動します。
相続税評価額よりも高くなることもあれば、低くなることもあります。
先ほどの相続税評価額2,000万円の土地が、実際の不動産会社の査定や近隣の売買事例をもとに、2,500万円で売却できたとします。
この場合、2,500万円が売買価格(時価)となります。
ただし、市場価格は時期や景気、土地の形状、周辺施設などさまざまな要素で決まるため、相続税評価額と必ずしも一致しません。売却前には複数の不動産会社に査定を依頼し、市場価格の相場感をしっかり把握しましょう。
遺産分割ではこの価格差に注意
例えば、兄弟3人で土地を相続し、売却して現金で分ける場合、「相続税評価額」で分けるのか、実際に売却して得た「売買価格」を分けるのかで、分配額に差が出る場合があります。
遺産分割協議書を作成する際は、相続した土地の今後の売却方針や、税金負担についてもしっかり合意しておくとトラブル防止につながります。
2)相続税対策としての土地売却
「相続前に売却するか」「相続してから売却するか」で、税負担や手続きの複雑さが変わるため、自分にとってどちらが適しているのかを把握しておくことが大切です。ここでは2つのパターンを紹介します。
相続前に土地を売却して現金化しておく
被相続人(たとえば親)が生前に土地を売却し、相続人に現金として残すケースです。
この方法のメリットは、子どもが2人以上いるようなケースに、土地として相続するより現金を相続した方が相続人間で公平に分けやすいといったことが挙げられるでしょう。
ただし、土地売却時には被相続人に譲渡所得税がかかります。また、売却益の金額によっては「居住用財産の3,000万円特別控除」などの特例が使えるかどうかも判断材料になります。
▼向いている人▼
- 相続人が複数おり、公平な分割が必要
- 相続税の納税に不安があり、現金で残しておきたい
- 土地が遠方・活用予定がない・将来的に売れにくい懸念がある
相続してから土地を売却する
土地を一旦相続し、その後で売却するケースです。この場合、相続時点では相続税評価額で課税されます。相続税評価額は時価の80%程度を目安に設定されるため、現金で遺すより相続税を安く抑えやすいというメリットがあります。なお、相続後に売却すれば譲渡所得税がかかる点に注意が必要です。
一見すると「二重課税」のように見えますが、取得費加算の特例などを使えば、相続税を支払った分を譲渡所得から差し引ける仕組みもあります。
また、一定の条件を満たせば「相続した空き家の3,000万円特別控除」などの節税策も使えるため、節税スキームを活用した売却戦略が立てやすい点が特徴です。
▼向いている人▼
- 相続人が単独または少人数で、処分方法の意思統一が取りやすい
- 相続税の納付資金に困らない
- 節税特例を活用して高値で売却を狙いたい
この2つのパターンを比較表にすると、以下のとおりです。
| 比較項目 | 生前売却 | 相続後売却 |
|---|---|---|
| 納税資金の準備 | ◎(現金で確保できる) | △(土地が売れるまで不透明) |
| 節税対策 | ◯(譲渡益控除が使える場合あり) | ◯(空き家控除などの特例活用) |
| 分割のしやすさ | ◎(現金で公平に分けやすい) | △(土地を分けるのは難しい) |
| 譲渡時の税率 | △(所得に応じて課税) | △(評価額より高く売ると課税) |
3)相続税で土地売却における課税所得を圧縮できる特例
この章では、相続した土地を売却する際に知っておくべき特例制度について、わかりやすく解説します。
「取得費加算の特例」の概要
相続した土地の売却時に節税できる代表的な制度が「取得費加算の特例」です。これは、相続税の一部を土地の取得費に加算できるという制度です。取得費が増えると譲渡所得(売却益)が下がり、結果として譲渡所得税・住民税も安くなります。
たとえば、相続で土地を取得し、相続税として1,000万円を納付した場合、その一部を売却時の「取得費」に加算できるのが特徴です。特例の適用条件は以下の通りです。
- 相続や遺贈により取得した土地・建物であること
- 相続税を実際に納付していること
- 相続税の申告期限(被相続人が亡くなった翌日から10カ月)翌日から3年以内( = 亡くなってから約3年10カ月以内)に売却すること
なお、複数の特例を併用できないケースもあるので、個別に確認しておくと安心です。
適用には相続後に土地を売るタイミングが重要
「取得費加算の特例」を活用するには、売却のタイミングが非常に重要です。適用される期間は、相続税の申告期限(亡くなってから10カ月)を過ぎた翌日から3年以内、つまり亡くなってから約3年10カ月以内に売却手続きを完了させなければなりません。
この期間を過ぎてしまうと、特例の適用を受けることができず、取得費に相続税を加算できなくなります。結果として、課税所得が高くなり、多くの譲渡所得税を支払うことになってしまいます。
したがって、相続した土地の売却を検討している場合、早めに売却計画を立てることが大切です。特に相続税の納税が発生したケースでは、特例の期限を見据え、売却の段取りや買主探しに余裕を持って取り組みましょう。
節税効果のシミュレーション
では実際に、「取得費加算の特例」を使った場合と使わなかった場合で、どれくらい税額が変わるのか、具体的な数値例で見てみましょう。
| 相続税納付額 | 1,000万円 |
|---|---|
| 相続財産のうち売却土地の評価額 | 4,000万円 |
| その他の財産 | 4,000万円(現金など) |
| 売却価格 | 5,000万円 |
| 譲渡費用 | 300万円 |
| 購入価格 | 土地2,000万円 + 建物2,000万円 |
| 減価償却費相当額 | 558万円 |
| 購入時の諸費用 | 400万円 |
| 所有期間 | 10年(長期譲渡所得の税率適用) |
このケースでの「取得費加算の特例」適用額は、以下の計算で求められます。
取得費加算額
= 相続税納付額 × 売却した財産の評価額 ÷ 相続財産の総額
= 1,000万円 × 4,000万円 ÷ ( 4,000万円 + 4,000万円 )
= 500万円
特例を適用した場合
- 取得費:2,000万円 + 2,000万円 – 558万円 + 400万円 + 500万円 = 4,342万円
- 譲渡所得:5,000万円 – (4,342万円 + 300万円) = 358万円
- 譲渡所得税:358万円 × 20.315% = 約73万円
特例を適用しない場合
- 取得費:2,000万円 + 2,000万円 – 558万円 + 400万円 = 3,842万円
- 譲渡所得:5,000万円 – ( 3,842万円 + 300万円 ) = 858万円
- 譲渡所得税:858万円 × 20.315% = 約174万円
このように、特例を適用するだけで約100万円も税金を軽減できることが分かります。特に相続税を多く納付した場合や、相続財産中で土地が大きな割合を占めている場合は、節税効果が高くなります。
相続税と土地売却にかかる税金の確定申告・納税について
ここでは、相続税と土地売却にかかる税金の確定申告・納税について、基礎から実践的なアドバイスまで詳しく解説します。
土地売却と相続税は別々に申告が必要
まず押さえておきたいのは、相続税の申告・納税と土地売却時の税金(譲渡所得税等)の申告・納税は、全く別の手続きであることです。
両者は「いつ」「誰が」「何を」申告・納税すべきかが異なります。それぞれのスケジュールを手帳やカレンダーにメモしておくと安心でしょう。
例)
2024年1月に父親が亡くなり、土地を相続。
2024年7月にその土地を売却。
この場合、相続税の申告は2024年11月までに必要ですが、土地売却の税金申告は翌年(2025年)の確定申告期間(2月15日頃〜3月15日頃)に行います。
相続税申告は「相続開始から10カ月以内」
相続税の申告・納税は、被相続人が亡くなられた日(相続開始日)から10カ月以内に行う必要があります。
この期間内に、相続財産(現金・株式・不動産など)の評価額を算出し、基礎控除額を超える場合は申告・納税が必要です。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
不動産の評価額は「相続税評価額」で計算されます。これは実際の売買価格より低くなることが一般的です。
例)法定相続人が2人の場合
基礎控除額は3,000万円 + 600万円 × 2 = 4,200万円。
相続した土地の評価額が3,000万円、その他の財産が1,500万円の場合、合計4,500万円となり、基礎控除を超えるため相続税の納税が必要です。
相続財産の分割方法や納税方法によって納税額が変わることがあります。相続税申告前に家族とよく話し合いましょう。
土地売却の税金申告は「2月16日頃〜3月15日」
相続した土地を売却した場合、その売却益(譲渡所得)に対し、所得税・住民税が課税されます。
この申告は、売却した年の翌年2月16日頃〜3月15日(該当日が土日の場合は翌日)の確定申告期間に行います。
確定申告時には、売買契約書・領収書・登記簿謄本・被相続人の購入時資料など、多くの書類が必要です。早めに書類を揃え、税理士に相談することで、控除漏れや申告ミスを防げます。
【FAQ】土地売却と相続税に関するよくある質問
この章では、土地売却と相続税に関してよくある質問とその回答を、実例やポイントを交えて分かりやすく解説します。
生前贈与された場合はどうなる?
生前贈与を受けて土地を取得した場合、贈与を受けた人が、相続税評価額に応じた贈与税を納める必要があり、また贈与を受けた土地を売却すると、売却した人に譲渡所得税がかかります。
ふるさと納税が相続した土地の売却にかかる税金に与える影響は?
ふるさと納税で控除を受けられる税金も、土地を売却したときに納める税金も「所得税」と「住民税」ですが、この2つは直接の影響が及びません。
ふるさと納税で控除を受けられるのは給与所得などの所得を計算する総合課税であるのに対し、土地を売却したときにかかる税金は分離課税で計算するからです。
つまり、ふるさと納税をしていても、土地売却で発生する税金の額が減るわけではありません。
相続した土地をすぐ売却した場合の税金は?
相続した土地を売却するタイミングによって、譲渡所得税の計算方法や特例の適用が変わる場合があります。
例えば、3年10ヶ月以内に売却することで取得費加算の特例の適用を受けられたり、所有期間5年超(被相続人の所有期間を含む)になることで譲渡所得税の税率が安くなったりといったものです。
売却を検討する際は税理士や専門家に相談し、特例の適用可否や必要書類を早めに確認することをおすすめします。
まとめ
相続した土地の売却を検討する際には、「相続税評価額と市場価格の違い」「納税資金としての売却」「節税特例の有無」など、複数の視点から冷静に判断する必要があります。
また、相続前に土地を売却する方法と、相続後に売却する方法では、それぞれメリット・デメリットが異なります。どちらが適しているかは、家族構成や納税見込み、土地の資産価値によって変わってくるため、専門家への早めの相談が重要です。
私たち不動産SHOPナカジツでは、相続不動産の売却サポートにも多数の実績があります。土地の評価や売却戦略はもちろん、相続税や特例の活用に関するご相談も承っております。相続や土地売却でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。








































逆瀬川勇造さん からのコメント
宅建士・2級FP技能士(AFP)・相続管理士
相続財産に土地がある場合でも、基礎控除額内で収まれば相続税を納付する必要はありません。実際に、令和5年のデータ(財務省)では相続税を納めた割合は全体の9.9%となっています。一方で、不動産を複数持っていたり、地価の高いエリアに不動産を持っていたりするケースでは、納めなければならない相続税の額も大きくなりやすいです。また、相続人が複数人いる場合には土地を複数人で公平に分けることが難しいといった問題もあります。相続税がかかることが見込まれるようであれば、生前に売却して納税資金に充てるといった対策が必要になることもあるでしょう。不安に感じるようであれば、早い段階で税理士や不動産会社など専門家に相談することをおすすめします。