相続などで住宅を取得することがあります。自分で住むなら管理できますが、遠方にある住宅を、定期的に管理するのは難しいでしょう。管理不十分の住宅は倒壊の危険性があり、衛生上の有害を発生させる可能性があることから、自治体による指導などがなされています。
2023年12月から新たに「管理不全空き家」が設けられることから、空き家を放置した場合の影響や対策について解説します。
目次
管理不全空き家はいつから開始される?
2023年6月14日に「空家等対策の推進に関する特別措置法」の一部を改正する法律が公布されました。法律の施行日、つまり有効となるのは2023年12月13日からです。
空き家にかかる税金は『固定資産税・都市計画税』
不動産(土地や建物)を所有している場合、資産価値に応じた固定資産税や都市計画税の課税対象となります。空き家に限らず、不動産の所有者に課せられる税金です。基本的な固定資産税と都市計画税の仕組みを確認していきましょう。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日時点に固定資産課税台帳に登録されている土地や建物などの所有者が、市町村(東京都23区は都)に納める税金です。不動産の固定資産税評価額に対して課税されますが、一般的に取引価格の7割程度の評価となります。
固定資産税額の計算式は次のとおりです。
固定資産税額 = 課税標準額 × 税率(標準税率1.4%)
なお固定資産税評価額は、3年ごとに評価替えが行われます。
都市計画税
都市計画税は、都市計画事業などの実施のために課税される税金で、課税されるかどうかは自治体によって異なります。基本的に市街化区域内にある土地と建物が課税対象となります。納税義務者は固定資産税と同様、1月1日時点の不動産所有者で、固定資産税と一緒に納税します。都市計画税の計算式は次のとおりです。
都市計画税額 = 課税標準額 × 税率(上限0.3%)
なお税率は、0.3%を上限として自治体が決定します。
住宅用地なら特例で減税できる
固定資産税と都市計画税については、特に居住用の土地について負担を軽減する措置がとられています。たとえば住宅用地には次のような課税標準の特例があります。
区分 | 面積 | 固定資産税 | 都市計画税 |
小規模宅地 | 200㎡以下の部分 | 価格×1/6 | 価格×1/3 |
一般宅地 | 200㎡超の部分 | 価格×1/3 | 価格×2/3 |
たとえば住宅用地200㎡の土地(小規模宅地)の価格が2400万円の場合、各税額は次のようになります。
標準 | 特例適用 | |
固定資産税額 | 33.6万円(2400万円×14%) | 5.6万円(2400万円×1/6×14%) |
都市計画税額 | 7.2万円(2400万円×0.3%) | 2.4万円(2400万円×1/3×0.3%) |
税額合計 | 40.8万円 | 8万円 |
※課税標準の特例のみを適用した場合
ここまでが、基本的な固定資産税と都市計画税の仕組みです。空き家ではどのように影響するか、次章で詳しく解説していきます。
「特定空家等」認定で固定資産税が6倍?
「特定空家等」に認定されると固定資産税や都市計画税の税額に影響を与えます。特定空家等の定義や新たに設けられた管理不全空き家、税額の変化について解説します。
特定空家等・管理不全空き家とは?
特定空家等の定義は、「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家等対策特別措置法)」に明記されており、次の状態である空き家が該当します。
- そのまま放置すれば「倒壊等著しく保安上危険となる」おそれのある状態
- そのまま放置すれば「著しく衛生上有害となる」おそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより「著しく景観を損なっている」状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
また管理不全空き家は特定空家等の前段階の状態である空き家を指し、管理不全空き家に指定された場合も、固定資産税・都市計画税の特例を受けられなくなります。管理不全空き家に関しては、2023年12月13日から運用される予定です。
特定空家等に認定されると固定資産税が高くなる
上記の特定空家等に該当し、自治体からの勧告に必要な措置を講じない場合は、固定資産税・都市計画税の特例を適用できなくなり、標準税率での課税となります。
標準 | 特例適用 | |
固定資産税額 | 33.6万円(2400万円×14%) | 5.6万円(2400万円×1/6×14%) |
都市計画税額 | 7.2万円(2400万円×0.3%) | 2.4万円(2400万円×1/3×0.3%) |
税額合計 | 40.8万円 | 8万円 |
※課税標準の特例のみを適用した場合
標準課税と特例を適用した場合を比較すると、固定資産税額で6倍、都市計画税で3倍の税額となり、税負担が高くなることがわかります。
特定空家等に認定後の流れ
特定空家等に認定され、住宅用地の特例が適用除外となるまでの流れは次のとおりです。
- 市区町村から特定空家等の措置に関する「指導又は助言」が行われる
- 市区町村から特定空家等の措置に関する「勧告」が行われる
- 勧告を受け、賦課期日である1月1日までに必要な措置を確認できない場合に「特例の適用除外」となる
- 勧告を受け、正当な理由なしに必要な措置を取らなかった場合に「命令」を実施する
- 「命令」にも従わなかった場合には、代執行(強制撤去)に移行し、撤去費用は空き家所有者が負担する。また50万円以下の過料が科せられる。
このように段階的に対応が行われますが、最終的には「3」や「5」となりますので、特定空家等に認定されたら早めの対策が必要となります。
特定空家等や管理不全空き家で損をしないために
相続などで取得した不動産が空き家の場合、どのような対策があるのでしょうか。空き家が遠いからといって、放っておくと大きな問題に発展する可能性もあります。自分では住む予定のない空き家の扱い方についてまとめます。
なお、自治体によっては修繕や解体などに対して補助金制度や助成金制度を設けています。費用面で二の足を踏んでいる場合は調べてみましょう。
修繕または建て替えを実施する
空き家について管理会社に管理を依頼するなどで管理が可能であれば、修繕や建て替えで対応できます。管理が行き届き、人が住める状態になれば、賃貸住宅として活用できます。賃貸住宅であれば、家賃収入が見込めますので、修繕計画や修繕費の見積もりとともに、事業計画を立てるとよいでしょう。
解体し更地にして活用する
空き家を解体すれば、倒壊や衛生上の問題は解消されます。解体費用はかかりますが、倒壊などによる損害賠償請求や代執行による費用負担を考えると、自分で解体業者を選定し、解体したほうが計画的に進められます。
更地であれば借地として企業に貸したり、駐車場にして収入を得たりすることができます。管理ができるかどうか、費用負担はどのくらいかなどで判断します。
解体し更地にして売却する
空き家を解体して、更地にしてから第三者に売却する方法もあります。土地活用を検討しても、十分な管理ができない場合に有効な方法です。土地の代金を得られ、売却すれば管理の心配は不要となります。
空き家の解体には、解体費用がかかります。空き家付きの土地を売却する方法もありますが、買い手を見つけるのが難しくなり、売却できるまでの間も空き家の管理をしなければなりません。空き家とその土地を売却する場合は、不動産会社などに相談するとよいでしょう。
相続後の空き家の対応は速やかに
2024年4月1日から相続により不動産を取得した場合に、所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならなくなります。正当な理由なしに申請しなければ、10万円以下の過料が科せられることがあります。
相続で不動産を取得した場合は、相続登記と空き家の対策を早めに実施したほうが安心です。相続時に空き家の状況を確認し、管理不行き届きになることが想定されるのであれば、早めに結論を出したほうが費用負担を軽減できるでしょう。