
この記事のポイント
- 不動産売却で得た利益は「譲渡所得」として扱われ、年末調整の対象にはならない
- 利益が出た場合は自分で確定申告を行い、申告を通じて3,000万円特別控除などの特例を利用できる
- 譲渡所得が出なかった場合など一部では申告不要となるが、判断が難しいときは専門家に相談するのが安全
「不動産を売ったら、年末調整で何か申告しなくてはいけないの?」
「会社に伝えておかないと税金が後から追加でかかるのでは?」
不動産を売却すると、確定申告して税金を納める必要があります。とはいえ、給与所得者にとっては「年末調整と確定申告の関係」が分からないという方も多いでしょう。
結論からいえば、年末調整では不動産の売却益は扱われません。不動産を売却して利益が出たときには、売却した年の翌年に確定申告する必要があるのです。
この記事では、不動産売却益にかかる税金の基本、年末調整との違い、確定申告が必要になる具体的なケースについて整理します。読み進めることで、「自分が年末調整だけで済むのか、それとも確定申告が必要なのか」を判断でき、無駄なく適正な手続きを取れるようになります。
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地方銀行、住宅会社勤務を経て住宅や不動産を中心としたライターとして活動。現場で多くのお客様の対応で経験させていただいたことをもとに、専門知識に基づいた分かりやすい記事執筆に取り組んでいます。
記事の構成
不動産売却益にかかる税金
年末調整は、勤め先の会社により行われる税額調整の仕組みです。基本的に、不動産を売却しても年末調整に影響は及びません。ここでは不動産売却で生じる所得に関する税金について整理しましょう。
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、次の税金がかかります。
| 所得税・住民税 | 譲渡所得に対して課税されます。給与所得とは別に「分離課税」として扱われるのが特徴です。 |
|---|---|
| 復興特別所得税 | 所得税に対して2.1%が上乗せされます。 |
譲渡所得の計算は、売却額から購入時の費用や売却時の諸経費を差し引いて算出します。その上で、所有期間が 5年以下なら短期譲渡所得(税率39.63%)、5年超なら長期譲渡所得(税率20.315%) として課税されます。
不動産売却で利益がでても年末調整は不要
不動産売却で得た利益は「土地や建物に関する譲渡所得」として課税されます。「土地や建物に関する譲渡所得」は給与所得などの総合所得とは別に計算する分離課税です。会社が行う年末調整の対象には含まれません。ここでは、なぜ年末調整では扱われないのか、その理由を整理してみましょう。
年末調整は給与所得に関する精算のみ行う
年末調整は、1年間に源泉徴収された所得税と実際に支払うべき所得税額との差を調整する制度です。対象はあくまで給与所得だけであり、不動産売却益のような土地や建物に関する譲渡所得は対象外です。
なお、実際に確認すべき控除については後述しているので、年末調整を控えている方は参考にしてください。
不動産売却益は給与所得とは別扱い
不動産の売却による利益は、給与とは異なる「譲渡所得」として課税されます。給与明細や源泉徴収票には一切反映されないため、年末調整では処理されません。
会社は不動産売却益の情報を把握できない
会社が年末調整で扱うのは、勤務先から支払われる給与や賞与の情報のみです。個人の不動産売却までは把握できないため、売却益があったかどうかは会社に通知されず、当然ながら年末調整の対象外になります。
年末調整とは別に確定申告は必要
不動産売却で利益(譲渡所得)が出た場合、年末調整では処理されないため、自分で確定申告を行う必要があります。確定申告を通じて譲渡所得を申告し、納税や特例の適用を行うことができるのです。
ここでは、年末調整との違いや、確定申告が必要となる理由を整理します。
年末調整と確定申告の違いについて
まずは参考までに、年末調整と確定申告の違いを表で確認しましょう。
| 項目 | 年末調整 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 主体 | 勤務先の会社 | 自分(納税者本人) |
| 対象 | 給与所得のみ | すべての所得(給与・事業・譲渡など) |
| 実施時期 | 1月~12月頃(勤め先の会社による) | 所得のあった年の翌年2月16日〜3月15日頃 |
| 目的 | 源泉徴収された所得税の過不足精算 | 1年間の所得・控除を合算し、正しい税額を確定 |
| 不動産売却益の扱い | 対象外 | 申告が必須 |
つまり、会社が対応する年末調整では不動産売却益は含まれず、自分で確定申告する必要があるのです。
確定申告で譲渡所得の申告が必要
不動産を売却して利益が出た場合、その利益は譲渡所得として課税されます。確定申告では以下の流れで計算・申告します。
- 譲渡価格(売却額) から、取得費(購入時の価格と諸費用)と譲渡費用(仲介手数料など)を差し引く
- 所有期間に応じて「短期」か「長期」の区分を決定
- 確定申告書の「分離課税用」欄に記入し、翌年の3月15日までに申告・納税する(3月15日が土日の場合は翌平日)
確定申告は特例適用のためにも必要
不動産を売却して確定申告する必要があるのは、不動産売却益が出たときだけです。つまり、不動産を売却して損が出た場合には申告しなくても問題はありません。
しかし、3,000万円特別控除などの特例の適用を受けて課税額が0円となるようなケースでは、確定申告しなくては特例の適用を受けることができません。不動産売却時の特例には以下のようなものがあります。
- 3,000万円特別控除(居住用財産を売却した場合)
- 所有期間10年超の軽減税率
- 譲渡損失の損益通算・繰越控除
【チェック】年末調整と確定申告に関するケーススタディ
不動産を売却した人でも、すべてが確定申告をしなければいけないわけではありません。
ここでは、典型的なケースを例に「自分はどっち?」を確認してみましょう。
1)年末調整だけで済むケース
不動産売却があっても、以下のような場合は確定申告は不要です。
| 譲渡所得が発生しなかった場合 | 売却価格 ≦ 取得費+譲渡費用 のときは利益が出ていないため課税対象外。 |
|---|---|
| 譲渡損失が出ていて、損益通算・繰越控除を利用しない場合 | 損失をほかの所得と相殺しないなら、申告義務は発生しない。(確定申告で特例を適用できれば、ほかの所得と相殺でき、控除しきれなかった分は申告した年と、申告した年の翌年から最長3年間繰り越せる。) |
つまり「課税される利益がない」ケースでは、年末調整だけで完結します。
2)年末調整とは別に確定申告が必要なケース
一方で、以下のようなケースは確定申告が必須です。
| 売却で利益(譲渡所得)が出た場合 | 不動産売却益が20万円を超えると、給与所得とは分離して課税されるため、申告が必要。 |
|---|---|
| 特例を使って税金を減らしたい場合 | 3,000万円特別控除・所有期間10年超の軽減税率・買い替え特例などは、申告して初めて適用される。 |
| 譲渡損失を損益通算や繰越控除に使いたい場合 | ほかの所得と相殺するには、確定申告が必須。 |

年末調整で確認すべき控除
ここまで解説してきたように、不動産売却による譲渡所得は年末調整の対象ではありません。では、年末調整で実際に確認すべき控除にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、不動産売却とは直接関係しないものの、給与所得者が年末調整で見落としやすい控除について整理しておきます。
基礎控除
すべての納税者に適用される控除で、所得から48万円を差し引けます。特別な手続きは不要で、自動で適用されます。
配偶者控除・扶養控除
配偶者や扶養家族の所得が一定以下であれば控除が受けられます。年収や勤務形態によって適用の有無が変わるため、配偶者の所得を正しく申告することが大切です。
参照:
No.1191 配偶者控除|国税庁
No.1180 扶養控除|国税庁
生命保険料控除
生命保険料控除や地震保険料控除など、支払った保険料を申告することで税負担を軽減できます。証明書を会社に提出する必要があるので、保険会社などから秋ごろに届く控除証明書をなくさないように保管しておきましょう。
住宅ローン控除(税額控除)
住宅ローンを利用して住宅を購入した場合に、一定額が所得税から直接控除される制度です。初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で手続きが可能になります。
その他の控除
社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除なども対象になります。会社経由で処理できる範囲が多いため、必要な証明書をもれなく提出することが重要です。
【FAQ】不動産売却と年末調整に関するよくある質問
ここでは、よくある質問を整理し、誤解しやすいポイントを解説します。
配偶者に譲渡所得がある場合、年末調整に影響する?
配偶者控除・配偶者特別控除を受けようとする場合、所得額によっては年末調整に影響が及びます。
配偶者の合計所得金額が基準(48万円以下または133万円以下など)を超えると控除が使えなくなるため、配偶者の不動産売却益が大きいと、配偶者控除が外れるケースがあるのです。
不動産売却益に譲渡所得の基礎控除は使える?
不動産の売却益は申告分離課税のため基礎控除の対象外となります。なお、不動産の売却益は基礎控除の対象外ではありますが、基礎控除の額を決める際の合計所得金額には含める必要があります。基礎控除の額は、合計所得金額に応じて以下のように定められています。

画像引用:国税庁 No.1199 基礎控除
このため、例えば、不動産を売却して得た所得と給与所得など他の所得の合計所得額が2,500万円を超える場合、給与所得など総合所得から差し引ける基礎控除の額が0円となってしまうことになります。不動産を売却して大きな利益があったような場合、その年は基礎控除額が小さくなり、給与所得など総合課税に対する税金が高くなってしまう可能性がある点に注意が必要です。
参照:
土地建物の譲渡所得にかかる税金①~譲渡所得にかかる税金のしくみ~
合計所得金額、総所得金額、総所得金額等の違いについて
相続した不動産の売却でも年末調整は無関係?
相続により取得した不動産を売却した場合も、売却益が出れば譲渡所得として課税対象になりますが、これは確定申告で行う処理です。また、相続による不動産の取得自体は相続税の対象となり、年末調整とは関係ありません。
したがって、給与所得者の年末調整では一切影響はなく、あくまで所得税や相続税の確定申告での手続きが必要です。
まとめ
不動産売却で利益が出たとしても、それは給与所得とは別に課税される譲渡所得であり、年末調整の対象には含まれません。
一方で、年末調整では不動産売却とは関係のない各種控除の確認が重要です。「会社の年末調整」と「自分で行う確定申告」の役割を切り分けて理解することが、余計なトラブルや損失を防ぐことにつながります。
不動産売却は金額が大きく、税務処理の影響も無視できません。税金や手続きの不安を感じるときは、専門家や不動産会社に早めに相談しておくと安心です。









































逆瀬川勇造さん からのコメント
宅建士・2級FP技能士(AFP)・相続管理士
不動産を売却したときに利益がある場合、土地や建物に関する譲渡所得として所得税や住民税の課税対象となります。この土地や建物に関する譲渡所得は給与所得など総合課税とは別に計算する申告分離課税となっています。このため、サラリーマンの方が勤め先で実施してもらう年末調整とは直接的な関係はありません。とはいえ、土地や建物を売却して利益が出たときには利益額を自分で確定申告する必要があります。確定申告時には、勤め先に年末調整してもらったうえで発行される源泉徴収票を参考にしながら確定申告書を作成することになります。こうしたこともあり、不動産の売却益と年末調整が全くの無関係とはいえません。総合課税と申告分離課税の違いなど、少し複雑な話題になるため、よく分からないと感じる方は不動産会社の担当者までお気軽にご相談ください。